第8話 私は悪くない(優香編)
5年近くにわたって、集団無視は続けられていた。最初は心が痛むこともあったけど、一カ月くらいすると罪の意識は完全に消えていた。集団で狙い撃ちすることによる、優越感、満足感で満たされるようになった。いじめは楽しいといわれるけど、まさにそのとおりだった。
誰からも相手にされなくなった男は、小説を読む学校生活を続ける。優香はそれを見て、哀れとしか思えなかった。社会で必要なのは知恵であって、膨大な知識など何も役に立たない。
優香は机の上に「死ね」と書き込むも、すぐに消しゴムで真っ白にする。露骨すぎるいじめは、学校問題になりかねない。自分の将来を守るために、必死になって文字を消していた。
学校にいない時間帯を狙って、他のクラスメイトも悪口を書き込んでいた。見えないところなら、何をしても許されるという思いがあった。
中学生になると、机の書き込みはストップ。誰かが言い出したからではなく、自然とそのようになっていた。
亜美の提案によって、かかわりを持とうという話になった。都合のいい女と思ったけど、反対する者は誰もいなかった。
クラスメイトはちょくちょく声をかけるも、文雄はまったく反応しなかった。こちらからわざわざ接近してやろうとしているのに、無視をするなんてけしからんと思った。あんな性格をしているから、5年間も無視をされたのだ。私たちのしたことは、正しかったことが証明された。
文雄に声をかけるも、言葉を発することはなかった。自分を否定された気持ちになり、心はとっても傷ついた。
宿題に手を付けようとするも、まったく進むことはなかった。無視をされたことによる、精神的ダメージはかなりのレベルに達しているのかなと思った。
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