第7話 クズは謝らない

 授業が終わると、すぐに学校をあとにする。誰とも会話しないのだから、長居する意味はなかった。


 一直線に帰宅するのではなく、独自に考えたルートを歩くことにした。この道を進めば、クラスメイトと会う回数を格段に減らせる。5年間も無視した人間とは、一秒たりとも顔を合わせたくなかった。


 極秘ルートを歩いていると、女の人に声をかけられた。


「橘君・・・・・・」


 顔を見るや否や、すぐに視線をそらす。直視してしまったら、理性崩壊につながるリスクもある。近年は暴力、暴言に厳しく、一発で社会から抹殺される。

 

 雑音をシャットアウトするために、耳栓をつけたいところ。聞きたくもない声は、極力カットするに限る。


 鍋村優香は勝手に話を続ける。


「亜美さんにいわれて、しぶしぶ従っていただけなの。私は本当は無視なんてしたくなかった」


 きれいごとをいったとしても、無視したのはれっきとした事実。どんなに時間をかけたとしても、完全に消えることはない。


「これまでのことは忘れて、いろいろなことを話そうよ」


 これまでのことを忘れる、よくもそんなことをいえたものだと思った。


「・・・・・・・」


「私はもう裏切らないから」


 いつもはいらいらしない信号も、今日は早く変われと思った。青になれば、うざい女から解放される。


 信号が青になったのを確認すると、全力ダッシュする。運動能力、持久力ともにたけているため、うっとうしい女を簡単に振り切れた。

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