第6話 ギリギリ登校

 俺は授業開始の一分前に登校した。友達もいないのだから、早く学校にやってくる意味は皆無。


 席に座ったあと、数学の教科書をカバンから取り出す。いじめを受けていたからか、所持品は肌身離さず持つようになった。学校に置いたままだと、何をされるかわかったものじゃない。


 50くらいの禿眼鏡が、教室内に入ってきた。調子があまりよくないのか、おなかを抑えていた。


「ちょっと、トイレに行ってくる」


 禿眼鏡はトイレに直行。生徒たちは開放感からか、いろいろとおしゃべりをしていた。


 文雄は教科書ではなく、小説に目を通そうと思った。あと10ページほどなので、教師が戻ってくる前に読み終えてしまいたい。


 小説を開く前に、30くらいの女性教師が教室に入ってきた。高校において、古文を担当している。


「みなさんにお知らせがあります。丸山先生は体調不良ですので、数学の代わりに古文の授業をすることになりました」


 古文の授業に変更されたと知り、クラスメイトはおおいに慌てだす。次回の授業時に小テストをすると伝えられていたためだ。


「これから小テストをします。参考書、ノートは見えないところに片づけてください」

 

 生徒たちの様子を確認したのか、小テストを配り始める。俺は一枚だけ受け取ると、顔を見ることなく後ろに回した。


「小テストを始めてください」


 小テストは極めて簡単で、何の苦労もしなかった。あまりにも早く解けてしまったため、残りの時間は休息に充てる。ゆっくりと過ごし、気力、体力はおおいに回復した。

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