第5話 心の支え?
ポテチをかじっていると、スマホの着信音が鳴った。
「文雄、元気にしてる?」
「南、まずまずといったところだよ」
真心南は小学三年生まで、同じ学校に通っていた。無視をされるまでの間、一緒に過ごしていたクラスメイトである。
親の都合で転校してからも、ちょくちょく連絡を取り合っている。無視をされ続けている男の、交友を持つか数少ない人間。
南には無視されていたことを話した。最初は絶句していた女性は、心をサポートすることに徹してくれた。
「文雄、無視のいじめはどうなっているの?」
「終わったみたいだけど、こちらには一切関係ないことだ。学校では本を読むことだけに、意識を集中させているから」
人間は裏切るけど、培った知識は味方であり続ける。読書をしていると、そのようなことを感じた。
「文雄、本当に心が強いね。私だったら、絶対に壊れていると思う」
「強いというよりは、歪んでいるだけかもしれないぞ」
「文雄のメンタルが壊れなくてよかった」
一度壊れて、もう一度壊れた。負を二乗して、プラスになったように見えるだけかもしれない。
「来月にそちらを訪ねることになったの。ついでに家に寄ってもいい?」
「ああ、待ってる」
南と会うのは6年ぶり。彼女はどのような変化を遂げているのだろうか。
「小学生のときのようにハグしたり、キスしたりしようね」
「南は変わらないな・・・・・・」
南はスキンシップ好きなのか、ハグ、キスなどを繰り返す。あまりに頻度が多いので。性依存症にかかっているのを心配したこともある。
「小学生のときに、お嫁さんになるといったでしょう。まったく信じてもらえなかったけど、心からそう思っているから」
最初に宣言したときは、クラスはおおいにざわついていた。
「お世辞だとしても、ありがたく受け取っておく」
南は気に入らなかったのか、ラインの言葉がやや乱雑になった。
「そんなことないもん。私はどんなことがあっても、ついていくと決めているもん。冷たい態度を取ったら泣いてやるもん」
子供っぽさについても、完全に残っている。体は成長しても、中身は変わることはないようだ。
「わかった。わかった。次に会えるときを楽しみにしている」
「文雄はいっぱい、いっぱい苦しんだ。私でよければ、どんなことだってする」
「じゃあ死んでみろ」という言葉が真っ先に浮かぶ。自分では変わっていないように思っても、大きくすたれてしまったのを実感した瞬間だった。
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