第4話 完全スルーされた(亜美編)
亜美は声をかけるも、完全にスルーされてしまった。あそこまで露骨な態度を取られたことに、大きなショックを受ける。
文雄は小学生時代から、すべてのことがずば抜けていた。勉強、運動、人間性、社交性のいずれも完璧だった。
当時の私は、そのことが気に食わなかった。クラスの全員に無視を持ちかけ、実行にうつさせた。どんなに優れている人間だとしても、多数の前では無力であることを見せつけてやりたかった。
ぼっちになっている男を見て、心の中でほくそえんだ。お前は生意気だったから罰を受けた。
ぼっちになった男性は、学校に毎日のように来ていた。私はそのことが気に食わず、無視を続行するように指示を出した。どんなことがあっても、あいつを登校拒否に追い込みたかった。
文雄は一カ月くらいで、誰とも話さなくなった。いろいろな小説を図書館から借りては、クラスで読む日々を続ける。クラスメイトと誰も話せないのであれば、本と友達になるという覚悟すら感じた。私はどんなにあがいても、あんな生き方をするのは無理だ。ぼっちにされた時点で、メンタルは崩壊する。
無視はなおも続き、5年に達していた。そろそろやめたほうがいいと思い、クラスメイトに話を持ちかける。反対者は一人もおらず、すぐに話はまとまった。
クラスメイトはちょくちょく声をかけるも、相手にすることはなかった。おまえたちとはどんなことがあっても、二度と話さないという強固な意志を感じる。
私たちはひどいことをしたかもしれないけど、あんなやり方はないのではないか。あの態度を続けられたら、すぐにメンタルは壊れかねない。
小学校の卒業式、中学校の入学式、中学校の卒業式の写真を見る。私たちの無視した男は、顔が映っていなかった。
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