第3話 無視を主導した女がやってきた

 文雄のところに、邑橋亜美が近づいてきた。


「橘くん、一緒にお話ししましょう」


 亜美はいじめの主犯格の一人で、いろいろな男女に指示を出していた。率先していじめを行っていたクズ女である。


 文雄は見せつけるかのように、イヤホンを耳にはめる。お前の話など聞くつもりはないという態度を、はっきりと示してやった。


「橘くん・・・・・・」


 俺は完全スルーし、H.Kの本を読み進めていく。プロの中でも群を抜いたレベルに達しており、ベストセラーをたくさん出している。


 亜美のところに、北村有菜がやってきた。こいつは主犯格ではないけど、周囲に歩調を合わせていた。無視をしたという点で、同罪にあたる。


「橘くん・・・・・・」


 集中力が増すにつれて、本を読むスピードは上がってきた。さらにペースアップできれば、本日中には読み終えることができそうだ。


「・・・・・・」


 誰かに声をかけられたようだけど、全く聞こえなかった。文雄は無視をされているときに、集中力で他人の声を消すという能力を身につけた。まともな学校生活を送っていたら、この能力をつけることはできなかった。


 亜美、有菜はすぐにいなくなった。不愉快な奴が視界から消え、読書はさらに快適なものとなった。 


 


 

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