第2話 高校も同じクラス

 文雄の住んでいる地域では、小学校から高校までメンバーはまったく同じ。クラスメイトは小学校、中学校時代に無視をしていた人間だけで占められる。


 本を読んでいると、クラスメイトが近づいてくる。あれだけのことをしたくせに、よく声をかけようと思えるよな。他人の痛みを全く理解できないのは、カス、クズにふさわしい。あんなバカにだけはなりたくないと思えるレベル。


「一緒に遊びに行こうぜ」


 無視のいじめを受けていた人間と楽しく遊べる奴なんているか。幼稚園児だって、そんなことくらいは理解できるぞ。こいつらの脳みその容量は、サルよりも小さいかもしれない。


 俺は高性能のイヤホンをつけて、読書を続けることにした。無視をした人間をシカトしても、心はちっとも痛まなかった。やり返したことによる、優越感で満たされていた。


「一緒に遊びに行こうぜ・・・・・・」


 高性能イヤホンをしていたからか、音の90パーセント以上はシャットアウトされていた。これくらいの声なら、悠々と読書できる。

 

 男は我慢ならなかったのか、胸ぐらをつかんできた。


「おい・・・・・・」


 俺はスマホを取り出し、胸ぐらをつかんだところを写真に収める。you tubeに映像を流せば、こいつを社会から完全に抹殺できる。

 

「おまえ、ふざけるな」


 胸ぐらをつかんでいた男は、頬を思いっきりぶんなぐってくる。簡単に暴力に出る男に、まともな人間はいない。


 暴力をさらに振るおうとする男を、クラスメイトは必死に止めようとしていた。


「暴力はさすがにまずい。一発退学になるかもしれないぞ」


 退学という言葉が効いたのか、男は手を出すことはしなかった。 


 物事が落ち着いたのち、イヤホンをゆっくりと外した。そのあとは、授業開始時刻になるまで本を読み進めていた。暴力シーンとたまたまぶつかっていたため、内容はより重く感じられた。

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