第6話:小玉ちゃんの悲しい過去。

「ねえ、ヒロト君・・・ヒロト君って私のこと好き?」

「ん〜まあね、毎日一緒にいたら、そりゃ情が湧くからね」


「好きだよ・・・」


「どのくらい?」


「どのくらいって・・・」


「たとえば、私にのためなら死ねる?」


「死ねるかって言われても・・・まだそんなこと考えたことないよ」


「そう、もしヒロト君がそう思えるようになったら私を抱いて」


「抱いてって?・・・」


「こんなこと言うと変に思われるかもしれないけど・・・」

「私・・・愛してもらった人のマナ「愛」をもらえないと、いつか私が

生まれた神様の国に引き戻されるかもしれないの」


「え?それってどういうこと?」


「私、昔、母親の形見を持って旅に出たの、でもその旅の途中で一人の

人「男」を好きになっちゃって・・・片想いだったんだけどね」


「あ、そのくだりはパソコンで見たな・・・」

「なんかさ、小玉ちゃんは治癒力とかってのを使いすぎて神様の世界に

帰ったって・・・」


「そう、私はその人が好きだったけど、その人はそうじゃなかったみたいで、

お互いの愛を育むことことはなかったの」

「好き同士になる前にその人が病気になっちゃっってね」


「放っていけないでしょ?」

「私はその人の命を救うために自分の持ってる治癒力を使って好きな人を

救ったんだけど、そのため精力も体力も失うことになったの・・・」


「私は自分の力を使い果たしたため、自分を回復する力すらなくなって

肉体を維持できず神様の世界に引き戻されたの」


「でももしその時、その人のマナ「愛」があったら私はそこに留まって

いられることができたんだけどね」


「つまりその人が病気になる前に愛によってふたりが結ばれていて、そのあと

で私が治癒力を使ったのなら、その人のマナ「愛」があるから私の精力と体力

は回復できてたの」


「でもそれだけで済んでたのならまだよかったんだけど、その人は命を

取り止めたにもかかわらず他の女の人のもとに行ってしまったの」


「私は性も痕もつき果てて悲しみを抱えたまま自分の世界に引き戻されて、

蚕の繭に閉じこもったまま五百年眠ったの」


「五百年って・・・回復するのにそんなに長い期間が必要なの?」


「自分の治癒力を使うってことはそのくらい大変なことなの」

「まあ、たしかに五百年は長いけど・・・」


「ああ、だから小玉ちゃんは俺のマナ「愛」が必要なんだ」


「だからね、そんなことになるまえにヒロト君に愛されて、エッチが

できないと困るの。

「ヒロト君とはずっと一緒に暮らしたいと思ってるからね・・・」


「もうずいぶん愛する人のマナをもらってないから今のままなら、また

いつか自分の世界に引き戻れる日が来るんじゃないかって心配」」


「そうなんだ・・・じゃ俺のマナ「愛」が小玉ちゃんの体に

常に流れこんでさえいれば小玉ちゃんは自分の力を失うこともないんだね」


「それだけが目的でヒロト君に近づいたわけじゃないんだよ」

「私、ほんとにヒロト君のことが好きなの」


(そうなんだ、小玉ちゃんの望みを叶えてやるのが俺の役目なのかもしれない)

(それが本当なら、俺、責任重大だな・・・小玉ちゃんの運命は俺が握ってるんだ)


(今となっては、俺も小玉ちゃんに神様の世界に引き戻されたら困るし)

(もしそんなことになって・・小玉ちゃんまたが繭に入っちゃったらもう二度と

この子には会えないんだ)


そう思うと大翔は矢も楯もたまらなくなった。

小玉ちゃんを失いたくない・・・心底そう思った。


つづく。

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