第4話:大翔、結局小玉ちゃんを連れて帰る。

「やっぱり付いてくるのか?・・・」

「あのさ俺、まだ独身だよ」

「一緒に連れてけってことは、俺のマンションまでついて来るってことだろ?」

「独身男のところに君みたいな・・そのお茶目な子がいちゃなにかとマズいでしょ」


「彼女なんだからいいじゃん・・・なにがマズいの?」

「エッチしたっいって言っても拒否したりしないよ」


「え?なに言ってんの・・・そんなこと言うわけないだろ」

「俺がいきなりそんなことする男だと思ってるのか?」


「そんなにムキにならない・・・たとえばだよ」

「って言うかさ、話はあとにして早く切符買わないと電車来ちゃうよ」


「あ、そうか・・・」


「忘れずに私のぶんも買ってね」


「しょうがないな・・・」

「あのさ、この後、俺駅弁買うつもりなんだけど・・・君も・・・食べる

よね駅弁」


「うん、お腹空いてる」


で、自販機の駅弁ふたりぶん買ってホームで電車が来るのを待った。


(連れて帰るのか?・・・女神様を)

(もう知らねえ・・・)


その時の大翔の気持ちは半々だった。

こんな可愛い子が彼女っていいなって気持ちと女神なんてダメだろうって気持ち。


(女神なんて思わなかったら俺の横に普通の女子高生がいるだけなんだけどな)


で、ふたりは電車に乗った・・・もう後戻りはできない。


(まあそんな大げさなことでもないけど・・・俺のことが嫌になったら、

小玉ちゃんはすぐにこっちに帰って来るだろ・・・女は気まぐれだからな・・・

特にお姫様なんてわがままなんじゃないか?)・・・なんて大翔は思ってた。


でも、それはとっても甘い考えだった。


一度男に目をつけた女神は、おいそれとは諦めてはくれないのだ。


「さっきから黙って何考えてるの?」


「あ・・・いや・・・なんでも」

「あ、そうだよく考えたら、俺のことなにも教えてなかったよね」

「俺の名前は「出雲 大翔いずも ひろと」って言うんだ」


「知ってる・・・旅館の宿泊名簿見たから・・・」


「え?、そうなんだ・・・いつの間に・・・」


「ずっとヒロト君って呼んでたでしょ?私」

「さっき、切符買ってる時そもう呼んでたじゃん・・・」


「あ〜そういやそうか・・・」

「んじゃま〜俺も君のこと小玉ちゃんって呼ぼうかな」


「ヒロト君、私のこと伝説になんかなってるような面倒くさい女だと

思ってない?」

「思ってないけど・・・」


「けどなに?」

「私を捨てたら、呪い殺すから・・・」


「ええっ?・・・」


「藁人形作ってヒロト君って名前書いて、木にブラ下げて五寸釘打って

呪い殺してやるから・・・」


「まじで?・・・そんなことできるの?」


「できない・・・けど、私そのくらいの気持ちだからねって言いたかったの」


「なんだ、脅かすなよ」

「ふ〜ん・・・女神の思いは重くて深いってわけか・・・」

「っていうかなんでそんな呪い殺すなんて人を脅すようなバカなウソつくんだよ」


「想い余って憎さ百倍って言うでしょ・・・」


「そんなに俺のことが好きなの?」


「うん、死ぬほど・・・」


「え〜〜〜〜〜?・・・そ、そんなに?」

「会ってまだ時間だって経ってないのに、そこまで人を好きになるかな?」


「あのさ、これまで旅館にたくさん客来たでしょ・・・」

「その中に、この人はって思う人ひとりもいなかったの?」


「あのね、客って言うけど、だいたいは家族ずれかカップルでしょ」

「独身の男性がひとりであんなど田舎の旅館に来るなんてあまりないからね」

「来たとしても、私が気に入らなかったら意味ないでしょ」


「あ〜まあ、たしかに・・・なるほどね」


「じゃ〜俺は飛んで火に入る夏の虫だったってわけか・・・」

「で、女神様にパクって食べられちゃったってことなんだ・・・」


「人をうわばみみたいに言わない」

「だからね・・・嫌いにならないでね・・・おとなしくしてるから」

「なんでも言うこと聞くし、わがままも言わないしウザくもしないから・・・」


(これが伝説の女神様なのか・・・まるっきりそこらの女子高生まんまじゃん)


「分かったよ・・・今更だもんな」

「しかたない、いがみ合ってたっていいことないからな・・・」

「俺のマンションに小玉ちゃんを連れて帰る・・・それでいいだろ?」


小玉ちゃんは両手を頭の上にあげて丸を作った。


つづく。


※うわばみとは大きなヘビのこと、または伝説上の大蛇(おろちを指す

こともある。




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