ぴょんぴょんぺいん
なりた供物
-
子供の頃は何をしても楽しかったのに、大人になった今では、何をしても苦痛に感じてしまうようになってしまった。
成長痛は止まったはずなんだ。社会に出て、もう1人前と言われてもおかしくない年齢だ。しかしまだ心のどこかが痛かった。身体の成長は止まっても、心が日々成長していく。僕の周りの人間だけが成長していく。同期の友達も、同期じゃない友達も、同期だけど友達じゃないやつも。中学の頃にオタクだと心の底で見下していた女子は、その後も自分を貫いて今では一流のイラストレーターになっていた。彼女は僕に会っても笑顔で、君のことはずっと憧れの存在だったんだよ、と言われて嬉しかったけれど、僕は素直に笑えなかった。
ふと、幼稚園の前を通ると、子供がケンケンパをしていた。懐かしいなと見守っていると、不審に思った先生に睨まれてしまった。
もう、そんな年か。僕が中学の頃はよくこの幼稚園に来て一緒に遊んでたっけ。子供が好きだった。純粋無垢な子供が。
自分が主役になる未来を信じて疑わない、あの目が。僕がはるか昔に失ってしまった、あの目が、好きだった。
そんな事を考えている時も、子供はケンケンパを続ける。間違ってずっとケンケンしてしまったり、転んで泣いてしまったり。懐かしいな。僕にもあんな時代があったんだな。
僕自身は転び続けているのに、泣きもしないし立ち直る事もできていない。心苦しい事だらけだ。だけれど、立ち直る事はできなくとも、立ち上がるしかないのだ。生きるしかないのだ。
彼らの真似をして、久しぶりにケンケンパをしながら帰宅をした。ぴょんぴょんと跳ねた時にうっかり膝を痛めてしまった。土ではなくアスファルトである事を忘れてたのでだいぶ痛かったが、それが成長痛で無いことはすぐに理解できた。
ぴょんぴょんぺいん なりた供物 @naritakumotsu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます