第8話 迫る落雷


 大雨はどのくらい続いたのだろうか?


 幼い私の感覚では、2、3時間は経っていたような気がするが、実際には1時間もない出来事だったようだ。


 雷雲は、運悪く私たちの頭上まで迫っていた。

 閃光と同時に『ドーンッ!』という落雷の音が響き渡り、私と妹は泣き叫んだ。


 さすがのミコト姉ちゃんも耳を塞ぐ。

 雷が人間にあたると死ぬと言うことは、小学4年生の私は知っていた。


(ああ、もしかしたら死んでしまうかもしれない)


 そう思い私は怖くて怖くてしかたがなかったが、妹を守るため抱きしめた。

 妹のリンちゃんは『おかあさぁん、おかあさ~ん!』と、火がついたように泣いている。



 土管の開口部から外を見ると、鎖を編んだ高いジャングルジムが目に映った。


(カミナリって、鉄の高いものに落ちるんじゃなかった……?)


 私の嫌な予感は的中する。


 あたりがパッと明るくなった瞬間、ギザギザの稲妻がジャングルジムに伸びた。



――― ズダドーーーーンッ!!


 

 同時に、耳をつんざく雷鳴に、私は目を見開き固まる。


 さすがにミコト姉ちゃんも叫び声を上げた。


(い、いまそこに落ちた……!?)



 呆然とする私たちは、雷がおさまるのをただ祈ることしかできなかった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る