第5話 大泣きのリンちゃん


 私たちは、名残惜しい気持ちを持ちながらも公園を後にした。


 また、大きな橋を渡らなければならない。

 しかも、先ほど勢いよく下ってきた坂は、戻りは、急な上り坂に変貌へんぼうする。


 私は憂鬱な足取りで、坂を上り始める。


 すると、思いのほか早く雨がポツリと降り出した。


「あ、雨だ……」


 私はそう言って、鈍色の空を見上げる。

 薄曇りだった空が、いつの間にか重く立ち込め黒く見える。


 その声がきっかけになったかのように、雨粒は大きくなり、一気に降り始めた。

 水玉模様だった足下のコンクリートは、雨で真っ黒に染まる。


 傘を持っていない私たちは、すぐにずぶぬれになった。

 橋の上には雨宿りできるのきも家もない。


 この先、30分近くも歩いて戻れるのだろうか?


 私は、急に不安になり泣き出しそうになる。

 けれど、私が泣き出したら妹はもっと泣くだろう。

 私は、ぐっとこらえた。


 そして考える、どこか雨宿りができる場所はないかと……。

 その時、ミコト姉ちゃんが妹と私の手を取り言った。


「公園の土管へもどろう!」


 私は、うんうんとうなずいて駆け出す。

 妹もべそをかきながらも、懸命に走った。


 ヒロヤ兄ちゃんもケンジ兄ちゃんも、それがいいとすぐさま賛成し、あっという間に消えてしまった。

 二人は足が速い。私もクラスでは走るのが早い方だったが二人には到底かなわない。

 それが悔しいときもあったが、今はただただうらやましい。

 私も妹も完全に足手まといになってしまったからだ。



 ひとつの土管に5人でぎゅうと入る。


 とりあえず、大雨はしのげた。


 けれど、この雨はいつまで降るのだろう?

 滝のように降る雨は、遠くに見えていた建物すら白く塗りつぶす。

 時間がとても、長く感じられてどんどん嫌なことばかり考えてしまう。


(このまま、雨が降り続けてここも水浸しになったらどうしよう? このまま、家に帰れなかったら? お母さん、心配してるよね……)


 母親のことを思い出したら、途端に涙腺が緩んだ。

 既に、小二の妹リンちゃんはわんわん泣いている。


 私は、私まで泣いてみんなを困らせてはいけない。

 お姉さんなのだから、私が妹を守らなければいけないと、泣いているリンちゃんの手を握った。


 大雨と共に、ゴロゴロと不気味な雷鳴が近づいていた。

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