人が沢山いるので並んで待つ

 その目的のカフェは人気の場所なので、人が沢山いる。それに丁度混み合う時間みたいで、驚くぐらいに人が居た。



 僕たちが行くと、一斉に前を譲ろうとされた。

 でも流石に僕たちはそんな風に特別扱いされずに並びたいと思ったのでそう言っておいた。






 それにしてもやっぱり女帝や聖女という立場だと皆、そうやって色々譲ろうとしてくれるものなんだなと思った。








 ちらちら僕らのことを周りは見ている。

 サシャのことをかっこいいと言っている声や僕のことを可愛いと言っている声が聞こえてくる。








「お姉さんたちはよくこのカフェに来るの?」





 待っている時間に暇だったので、前に並んでいるお姉さんに話しかけてみる。三人組でちらちらこちらを見ている女性陣。

 僕が話しかけると驚いた顔をして、満面の笑みを浮かべる。








「せ、聖女様。私たちはよくここに来ています」

「まさか、聖女様に話しかけていただけるなんて!」






 僕の言葉に答えながら、サシャのことも気にしているみたい。少し顔が赤い気がするのは、興奮しているのかもしれない。






「そうなんだ。おすすめのものとかって何がある? あるなら教えて欲しいな」






 僕がそう言ったら、おすすめの食べ物や飲み物を教えてくれる。本当によくこのカフェにやってきているみたい。

 だから季節によっての限定品なども食べたことがあるみたい。こういう帝都で流行りの飲食店だと期間限定の食べ物や飲み物があったりするんだって。








 季節によって採れる果物や野菜などが違うからなんだろうけれど、そういう限定品ってなんだか特別なものに聞こえるよね。なんだか不思議と食べに行きたくなるというか。

 そういう名前がついていると気になって皆訪れるのかもね。






「お姉さんたちはサシャとも喋りたいの? ちらちら見ているけど」






 女帝であるサシャのことを気にして、ちらちら見ているからそう言ったらその女性陣は固まった。

 僕がにっこりと笑って話しかければ答えてくれたけれど、サシャにはそういう反応ってことは怖がっている? そういえばサシャは怖がられているんだっけ。サシャは凄く可愛いのになぁ。










「サシャも美味しい食べ物の話とか聞きたいよね? 一緒にお喋りしようよ」

「うむ」






 サシャは僕の言葉に頷いてくれる。




 僕がサシャと周りに話を振りながら間に入る。サシャは普通に喋っているのだけど喋り方とか雰囲気で、それでいて女帝なんていう立場だからおそれられたりやっぱりしちゃうのかな。

 でも僕が間に入って話しかけたら少し雰囲気が和やかになった気がして嬉しくなった。

 それにしてもこうやって会話を交わしてみると知らなかったことを知ることが出来て嬉しいな。








 こうやって帝都で暮らしている人たちと話すからこそわかることも多いだろうし。

 ついでに後ろに並んでいる人とかとも喋ってみたよ。そっちは男女の二人組で、僕とサシャと同じくデート中みたい。サシャに憧れているみたいでキラキラした目で女の子の方は見ていて、僕は誇らしい気持ちになった。






 僕の大好きなサシャは凄いんだよって沢山自慢したくなった。




 サシャのことを笑顔で自慢していたら、なんかさっききゃーきゃー騒いでいた人たちと同じような状態になっていて不思議に思って「どうしたの?」と聞いてみた。






 そうしたら「陛下と聖女様はお付き合いなされているんですか?」と聞かれた。

 お付き合いって恋人同士かってことだよね? 僕はサシャのことは大好きだけど、恋愛とかはよく分からないなぁ。今までそんな風に気にすることが出来ないような無関係な生活をしていたから。








「違うよ。恋人とかではないよ。でも僕こうやって女の子と出かけるの初めてだから初デートかなとは思っているんだ」






 僕がそう言って笑えば、なんだかまた興奮した様子だった。






 僕とサシャが仲良しだと興奮するってこと? 僕は不思議な気持ちに思いながら、サシャにくっついてみることにする。

 どういう風に反応が変わるのかなと面白がった結果である。








 僕がサシャの手に無造作に自分の手を重ねてみる。

 僕がその手を握ってにこにこしていると、周りがまた興奮していた。うーむ、僕とサシャが仲良くしているのを見れば見るほどそうなるってことかなぁ。面白い。

 こうやって僕とサシャが仲良しなのをこうやって喜んでもらえると嬉しい限りだよね。

 それだけ僕らに好意的でいてくれているってことだろうし。








 もっと面白い反応をさせるにはどうしたらいいかななどと思っていたら、






「ウルリカよ、帝都民たちをからかうでない」






 なんてサシャに言われた。





「でもなんか僕とサシャが仲良しだと嬉しいって人たちが結構いるみたいだよ。そういう人たちがもっと喜ぶことしてあげると面白いかなって」

「確かに……なぜか興奮しておるようだが」

「ね、なんでこんなに興奮しているんだろ?」






 サシャと仲良く会話を交わしていたら、また周りがきゃーきゃー言っている気がする。なんか女の子が多い? 男の人はこっちを見てはいるけれど女性ほど騒いではいない。

 そういう誰と誰が仲良しとかの情報を集めるのが好きな人が多いのかも。






「サシャはそうやって誰かが付き合っているとかで興奮する?」

「いや、全く」






 うん、サシャはそういうタイプだよなと自分で聞いておいて思った。






 そんな風に沢山の話をサシャと僕と、そして周りに並んでいる客たちと一緒にする。このカフェ以外の情報も沢山教えてもらうことが出来て僕は大変満足している。

 楽しかったから待っている時間も全然気にならなかった。それなりの時間を待っていたみたいなのだけど、そんなに時間が経ったようには思えなかったんだよね。








「サシャ、楽しいと時間たつの速いね」

「うむ」






 順番が来たので、僕たちはようやくカフェの中へと足を踏み入れた。

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