第23話 状況は変わっていないのだけれど

世界の見え方が変わった……気がする。


何かのきっかけがあった訳でもなく、

この休職に出口が見えた訳でもない。


ただ、目線が、見えない出口から足元に移った。

未来は分からないけれど、少なくとも今、住むところはある。

図書館に行けば沢山の本があるし、読む時間もある。

仕事に関連する本を読む必要はない。読みたいテーマの本を好きに読むことができる。


最近、上野に行くようになった。

東京国立博物館、国立西洋美術館、上野の森美術館でやっていたモネの特別展示も観に行った。美術館も博物館も、いつの間にか足が遠のいていた。

理由は簡単で、「仕事に直接関係がない」かつ「限られた余暇時間を割くには(私の中で)順位が低い趣味」だったから。

今は、とても楽しい。


上野公園の帰りに、御徒町の吉池さんで食材を買うようになった。

わさび菜、芽キャベツ、行者にんにく、うるい、青こごみ、茎みょうが。

これまで私が買う野菜は年中共通で、ニラ(ニラ玉用)、カット野菜(焼きそば用)、冷凍の里芋(煮っ転がし用)。季節感と言えば、冬にカット野菜(鍋用に一式纏まっているもの)を買うぐらいだった。三食毎回これだったわけではないけれど、外食がメインの仕事生活だったので、たまにしか自炊をしなかったし、たまに食べるだけなのでこれでも飽きることもなかった。


今、私の冷蔵庫には、行者にんにくと茎みょうがが漬けてあり、今夜は芽キャベツのバター炒めを作る予定だ。

明日か明後日また買いに行きたいと思う。次は葉たまねぎも買ってみたい。


引き続き薬は服用しているけれど、倦怠感も感じなくなった。

そして、家があり、時間があり、図書館がある。

今しか出来ない時間の使い方をしたい。


この章は一度これで終わりにしたいと思う。

いつまでもこのままではいられないし

何かの拍子に、また絶望感の中に戻るかもしれないけれど

その時はその時で、「逃避行その2」でも書こうと思う。


ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

逃避行 @tsubaki_kaede

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ