第14話 人生は悲劇か喜劇か

読んでいた小説の中で

「人生はクローズアップで見れば悲劇だが,ロングショットで見れば喜劇」というチャップリンの言葉を主人公が思い浮かべていた。

そして、今人生を終えたら、この悲劇も喜劇に変わるのだろうかと。


ああ、そうかと思った。

今、人生を終えたら、私の人生も喜劇になるのだろうか。

退職勧奨をされて鬱という終幕も、喜劇の締めくくりになるのだろうか。

社会に馴染めず、会社で反抗的だった自己中心的で愚かな女性の自滅の喜劇。


あらすじを考えて、自嘲してしまった。

あまりにも陳腐で、ロングヒットはしないだろう。


そして、家族や友人は、最後のオチに笑ってはくれないだろうと思った。

途中までは、アルバムを見るように、笑って観てくれるだろう。けれど、最後、愚かに破滅していく姿を大勢の他人が嗤っても、家族や友人は笑って観てはくれないだろう。


会社はどうだろうか。私に退職勧奨をした人たちは。ビールでも片手に、自分達の成功談として誇らしく観るだろうか。

何となくだけれど、笑いはしないだろうと思う。仕方がなかったんだと自分や周囲に言い訳はするかもしれないけれど。

彼らは他人を不幸に陥れるのに喜びを見出していたから、あのようなことをした訳ではないのだから。


今幕を引いたら、喜劇にも、悲劇にもなれないなんて。

名作を目指したい訳ではないが、あまりに中途半端だ。

せめてマクベスの「a poor player」にはなっていられているのだろうか。

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