第11話 すべきことからの逃走
昨晩、いつもの睡眠薬を飲んで、今朝、いつものように目を覚ました。
けれど、午前中ずっとベッドに横たわったままで、時折夢を見て、時折ぼんやりと目を覚ましていた。
午前中散歩に行かなくちゃ。と思った。
鬱の治療のためには朝の散歩が一番。遅くとも午前中に外に出る。そしてセラトニンの分泌を……
分かってはいるのに、起き上がれなかった。
昼過ぎ、昨日の残りのおかずを食べた。
すぐに横になりたくなって、またベッドに戻った。
散歩に行かないとと思いながら、私は仕事を休んではいるが「するべきこと」からは解放されていないのだと気が付いた。
休職の期間中は治療に専念「しなければならない」。毎日、鬱の改善に必要な行動を「しなければならない」。
療養のために休職しているのだし、治す気もないのなら会社に籍を置き続けているのはずるい。
だから、鬱の改善のために必要なことをする。会社側からすれば当然の義務であり、今の私にとって、仕事代わりに「しなければならない」ことだ。
でも、一瞬思ってしまった。
「しなければならない」ことから逃げたいと。もう何もしたくないと。
午後になって少し動けるようになったので、
シャワーを浴びて、一度横になって、服を着て、また横になって、ようやく近くのカフェに来て、この日記を書いている。
洗濯をさぼっていたので、新しいシャツがなかった。
すっぴんだ。髪の毛もぼさぼさだ。
それでもきっと、このカフェにいる誰の記憶にも残らないだろう。
普段は人混みが好きではないけれど、今は、都会の無関心が楽だ。
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