第10話 外野

何もしたくないけれど、何かしないと昨日のことばかりが頭の中を漂ってしまう。

本を読んでも、動画を見ても、頭の中をすべっていく。


もっと強制的に、頭の中に流れ込んでくる何かが必要だ。

そう思って、昨晩、劇団四季の今日のチケットを取った。


演目も座席の位置も碌に見ずに、ただ数時間の現実からの逃亡に縋った。

今日も朝からずっと昨日のことが延々と頭に浮かんでいた。

昨日はお風呂も入れなかったけれど、昨日はそんなに汗はかいていなかったので匂ってはいなかった……はず。

メイクもせず、(下着は替えたけれど)昨日脱いだままだった服を着て、劇場に行った。


演目はアラジンだった。

劇団四季を観る時の、いつもの没入感は味わえなかった。高揚もできなかった。

舞台を眺めながら、時折、会社のことを考えてしまった。

それでも、観客として暗がりから舞台を眺めている間、少しほっと出来た。

劇の上演中、舞台の上で物語が繰り広げられる。

暗い座席は舞台の外だ。何かの役割を求められることも、ストーリーを進める必要もない。

明るい舞台を眺めながら、そのことが心地よかった。

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