沖野君の家族の秘密
緒桜花ノ(おざくらはなの)
第1話
ー私は、人の後ろを歩く。
私は、人を見るのが好きだ。
その人の身振り手振りを観て、どう思っているのか観察する。
あと、目。
目が動く時は心も動く。
一番目が動いている人は…
沖野くん…
目が全然動いてない…
一点を見つめてる。
何かあったのかな?
凛子「沖野くん?」
沖野「…ああ。…須田藁か。」
凛子「沖野君、何かあった?」
沖野「…べつに、何も…」
凛子「お墓、行ってた?亡くなった、お母さんの事?」
沖野「なんでお墓の事を知って!」
凛子「ボケ桜、咲いてるのお墓が近いから。ほら、肩に花びらが。」
沖野「…ほんとだ。…なんかさ。答えが出ないんだ。…いや、なんでもない。」
沖野が走っていった。
凛子「答えか…」
奈菜「なんだなんだ?変人、凛子に彼氏かい?」
凛子「違うよー!もうっ!」
凛子がぷくーとほっぺを膨らます。
奈菜「ごめん凛子!今日、スイーツガーデンで、奢ってあげるから!」
凛子「本当?!ありがとう!」
笑みがこぼれる。
しかし、
「沖野はどこだ?」
沖野くんが何処かに消えた事が分かった。
凛子「沖野君…!」
気づけば凛子は走りだしていた。
何か嫌な感じがしていたからだ。
奈菜「凛子!」
凛子「沖野君、どこ…?」
すると、沖野君が車道に出ようとしている所だった。
凛子「沖野君!」
沖野「凛子!」
プップッブップー!
目の前が真っ白になった。
気づくと私と沖野君の周りで白い世界が渦巻いていた。
凛子「どうやら、私達死んだみたいね。」
沖野「巻き込んで、すまない」
凛子「今更しょうがないわ。それに、私が気になったからよ。」
すると、目の前が神々しく光を放った。
世にも美しい天使が現れた。
天使「須田藁凛子、沖野辰巳、霊体で、今の状態を保つには、あと、一時間だけしかありません。その後は、天に召されます。限りある時間を有効に使いなさい。」
そして、天使は消えた。
沖野「俺、出ていった親父に会いたかったよ…」
凛子「良いお父さんだったの?」
沖野「いや、ぶん殴りたかった!」
凛子「じゃあ!探そうよ!」
沖野「無理だよ。あと一時間で、どこにいるかも分からない親父を探すんだろ?」
凛子「沖野君、お父さんの癖は?」
沖野「あたまのてっぺんを斜めになってボリボリかく事だ!…それが?」
凛子「結構がたいはある?」
沖野「筋肉質で、180センチある。」
凛子「好きな食べ物は?」
沖野「魚!一回マグロを釣ってみたいって言ってた!魚が送られて来た事が何回かある!」
凛子、沖野「あ!」
二人は急いで住所を確認すると、マグロ漁師を渡り歩いた。
海に出ているとの情報を掴んだので、海に出る事になった。
凛子「あ、あの人よ!ボリボリ頭をかいてるわ!」
沖野「親父…こんな所に!」
沖野壮琉「今日は釣れるといいな。あいつらに、魚を食わせてやらないとな。ここのところ、なかなか釣れないから、分前渡せてないな。」
沖野「親父…」
壮琉「元気かな、アイツら…」
沖野「何が、何が出ていってアイツら元気かな、だよ?こんのっ…」
壮琉「!」
パシッ…
ザン…と波が立つ。
沖野「なんで霊体の俺の手を!」
壮琉「待っていたぞ、辰巳!お前の事だ。追いかけて来るだろう、地獄まで。」
沖野「なっ…!」
壮琉「俺は育児放棄で地獄だと。妥当だな。そこで、一つだけ申し出たんだ。お前が来るまでは、ここに居させてくれとな。」
沖野「なんだよ、それ。」
壮琉「母さんの事、自分が悪かったって思ってるだろ。自分さえ居なければ、母さんは焦ってくることは無かった。交通事故も起きなかったってな。」
沖野「…。」
壮琉「男だと余計にな…。惨めったらしくなるもんだ。妹の香織は元気か?」
沖野が壮琉を殴る。
沖野「ああ、元気だよ。これで成仏出来るか?」
壮琉「…まあな。」
沖野「じゃあな。行こう、凛子!」
凛子「待って!一つ、お聞きしても良いですか?」
壮琉「誰だ?…まあ、良いなんだ。」
凛子「なんで死んでも地上にいたんですか?」
壮琉の体が消えていく
壮琉「アイツらに、腹一杯食わせてやりたくてな。」
壮琉の体が消えた。
沖野はなかなか凛子の方を向かなかった。
凛子が諭すと、二人で天に昇っていった。
天使が凛子の話を聞いた。
天使「なるほど。育児放棄したとは言え、その様な理由があったとは。。それに、お互いを知る良いきっかけにもなるでしょう。壮琉を一時、格上げとし、家族と心から和解すれば、天国に行く事を許しましょう。」
凛子「ありがとうございます!」
沖野「…。」
そこへ光が現れた。
光の階段から、世にも美しい天使が現れた。
「私は、そのまま天国行きに賛成します。」
天使「美智香様。」
沖野「母さん?!」
凛子「この人、沖野君のお母さん?」
天使「異論はありますか?」
天使「いいえ!」
凛子「良かった…」
沖野「母さんは許すのか…」
天使「私は許します。皆で共に暮らしましょう。」
凛子はうろたえる沖野を見ていた。
凛子「素直に、はい、で良いんじゃないかな?」
沖野「…そうだな、母さんと共に」
凛子「私も、共に」
そうして二人は天に召されていった。
二人の葬儀は、おごそかに始まった。
「凛子、あの世ではどうか、元気でいてね…!」
奈菜は泣きながら、そう言った。
終
沖野君の家族の秘密 緒桜花ノ(おざくらはなの) @aoba618
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