第四章 ラッド『世界を繋ぐ物語』
第39話 ラッドの想い、集まるピース、繋がる物語
僕はアオナの
神様はなかなかに残酷な事をする・・・。
僕はアオナが『異能干渉』を取り戻そうとしない為の
彼女がもし異能を取り戻せば『
そうすれば僕は・・・おそらく消える。
ヒスイはたぶん大丈夫。あの子はこの世界に来てからシステムに
この世界を変える事の出来る能力。
きっと彼女には・・・それを必要とする時が訪れる。
僕は協力者だ。黒幕は他にいる。
消えたい訳ではない。消えたい訳がない。
それ程に、彼女との日々は楽しいものだった。
しかし、神様の従者の記憶と知識を持つ僕には分かってしまう。
それでも一縷の望みを賭けて、僕は最後まで抵抗させて貰うよ。
決められた未来、運命をも変える力がある事を僕は知っているから・・・。
***
アオナがクィールの世界に来て二ヶ月半の時が流れていた。
彼女は真竜フェンリルドラゴンのヒスイとブラックドラゴンである僕を
絶対的な力を得たアオナは国を創った。
アオナ聖教国は元は二百人程度だったツサーツァの村と領主の息子だった現領主のルイスが治めるフウェンの街の千人ほどの人口、から一気に膨れ上がった。
アオナが拐ってきた、アオナに救われた三十人を中心にしてアオナ聖教国は爆発的に発展していく。この三十人は僕が『神の従者の記憶と知恵』から魔法を授けた事により、一般の人から一線を画していた。
王国と帝国の戦争を止める事を決意するアオナ。
三日後には、王国はその存続を賭けた一斉進行を始めようとしていた。
そんな折に出会った一人の男、レイル。
彼は帝国との国境近い小さな村の生き残り。
森の魔法使いに救われ、亜人奴隷の集団に妻を殺され、命からがら二歳の娘レインと共に王国へ生き延びた。しかし、彼は王国の徴兵により一斉進行への参加を命じられていた。
アオナに娘レインを託そうとする男。
しかしアオナは言う。
『戦争は私が終わらせるよ』
アオナの元には、既に『アーミラリ天球儀』『煌めきのクリスタルオーブ』『魔法のスプーン』『黒竜の血の杖』が集まっていた。
後一つ・・・『クロノグラス』は・・・帝国にある。
『パズルのピースは順調に集まっている。』
アオナはレイルの話を聞き、森の魔法使いのエルフの事を知る。
千年の時を生きる『
アオナは王国のギルドへ再度訪れる。
受付嬢の眼前に置かれたフェンリルドラゴンであるヒスイ。
「どうもワン〜♪」
受付カウンターにちょこんと乗せられ笑顔で手を振るヒスイに固まる受付嬢だったが、
なんとか正気を取り戻した様で必死で事態を理解しようとしていた。
ここからがお話の続きである。
・・・
「つまり、アオナ様は本当に黒竜を無力化、使役なさっていて、更に黒竜を超えるフェンリルドラゴンをも従えていて、国を先日、公爵様より建国する事を許された女神様であり、ギルド総帥であるタマモ様とも面識がありギルドの本質もご理解頂いている、と言う事ですね?」
「タマモってギルド総帥だったんだね」
アオナはいつも通りの薄い反応で答えた。
「ハァ〜〜・・・。それで偶然、この王国首都で出会ったレイルさんの話を聞き森の魔法使いの居場所を聞きにきたと・・・」
深い深いため息の後、ちゃんと聞いていたかも怪しかったこちらの要件を、どうやらちゃんと聞こえていたらしく復唱してくれていた。
「先ほどは本っ当にすいませんでしたっ!!」
そして、それはそれは丁寧に深々と頭を下げてくれていた。
受付のお嬢さんは悪くないと思うけどね。
ちゃんと説明しないアオナが悪いし、正直いって相手にされない事が分かっていて言った節がある。なんだったらそれを見て楽しんでいるまであるのでタチが悪い。
「受付嬢さんは悪くないよ。ほぼアオナが悪い♪」
僕は
「あら、私が悪いと言うの?嘘は言ってないよ?」
アオナも気にしていないのは分かっている。
少し笑いながらふざけた感じでこんな事を続けて言っていたし。
「王様に会うのが面倒だからってワザと冷やかしの様な言い方で可能性だけチラつかせて、
黒竜消滅の案件が後から出た時には混乱が少なくなる様にした癖に」
「バレてたか・・・」
「少し、お待ち頂いていいですか?黒竜が討伐された件とタマモ様への確認。場合によってはタマモ様と通信装置を通してお話して貰う事になると思います。森の魔法使い様との繋がりがあるのもタマモ様ですし連絡が取り合えるのも彼の方のみとなっていますので・・・」
少し受付で待っていると奥の部屋に通された。
ソファーが置かれていて、どうやら応接室の様だ。
お茶菓子が置かれて、お茶が出された。
「クッキー食べていい?」
「三つあるから一人一個だね。せっかくだから頂きましょう」
「僕から毒味するワン♪僕は毒とか効かないし」
いい心がけだね。これからアオナを守っていく上では必要な事かもしれない。
結局、クッキーはとても美味しかった。
暫くすると、受付嬢の人が戻ってきて机の上に綺麗な魔道具を置いた。
鏡の様なものを中心に魔石が散りばめられていて複雑な装飾がされている。
あれはきっと魔導機関だろう。かなり高度な技術である事が一目見ても分かった。
これを創り出したのも森の魔法使い・・・その技術力は現代の文明とは比べようもなさそうだ。
「そう言えば、お姉さんの名前を聞いてなかった。私はもう知ってると思うけどアオナ。あなたは?」
「タマミと申します。タマモとは姉妹になります」
「え!?じゃぁお姉さんも・・・」
「はい。猫獣人ですよ♪」
そう言うと帽子を取って見せてくれた。そこには可愛らしい猫耳があった。
「ギルドの運用はタマモに任せているので立場も役職も妹のタマモの方が上なのですが・・・様付けで呼ぶのはいまだに違和感がありますね。確認が取れましたが妹がお世話になった様ですね」
「むしろ色々と教えて貰っただけだったけどね」
「獣人奴隷の解放、そして今のアオナ聖教国の動きはギルドとしては是非とも後押ししたいと思っているのですよ。亜人と人族の共生国家の誕生はギルドの悲願なのです」
「そっか。私は亜人とか言われても、ただ可愛い特徴としか思ってなかったけど拐ってきたみんなが仲良く力を合わせて建国を頑張っているから自然とそうなったんだね」
「この世界の人々は『そんな事』が出来なかったんです。ギルドはアオナ様を全力で支持していく所存ですよ♪」
亜人と人族との溝。それは戦争の根っこ。そこにこの世界のシステムの問題が加わる。
魔物と亜人の繋がりは実はそれほど強くない。
かつて人族と子を成した魔物は、妖精と竜と人魚であるセイレーン、そして原初の獣人だけだ。エルフと竜人と人魚と獣人。ドワーフは地竜との子なので厳密には竜人である。
他の魔物は動物と同類の扱いと言っていい。
実はアオナはドラゴン、竜の意識を刈り取っている。
ちなみに真竜は元々、世界のシステムなので意識は持っていない。
ヒスイはテイムの際に新しく生まれた存在であり魂を持つ生命。
あのドラゴンは人族への憎しみに呑まれ、長い年月の中で狂ってしまっていた。
それはもう知性を持つと呼べる存在ではなくなっていた。
しかし、それを知ればアオナは傷付くだろう。だから秘密にしていた。
「それではタマモと通信を繋ぎますね」
タマミさんによって魔道具の通信が始められる。
中央の鏡にタマモの姿が映し出された。
テレビ電話かぁ、完全にオーバーテクノロジーだ。
「久しぶりね、アオナ♪」
こうして僕達はタマモとの再会を果たした。
***神界***
「アオナはどうやって戦争を止めるつもりなんだろう?」
「まぁ、真竜二人を従えている時点で力技でも止めれそうですけどねぇ」
「でもアオナはそうはしないでしょうね。それだと後で尾を引くでしょうし」
「共生国家の誕生はそれだけでも戦争の根底を覆していますから最適解だったと言えるかも知れませんね」
「たしかに。アオナやるわねぇ♪」
「セイレーンの方にも噂は広がっていて動き出してるみたいですぅ」
「これは本当に上手く世界をまとめてくれちゃうかもね♪」
実はそんなに簡単に事は運ばない。
この世界には・・・致命的な欠陥がある。
しかし、確実にピースは集まってきている。
あの子は本当によくやってくれている。
その残酷な運命をも受け止めて・・・。
それでも、私はこの世界の完成を願う。
だから私は、黒幕として神をも騙して導く。
メイとして、神の従者としての立場から舞台を整える。
この世界の本当の『目的』の為に・・・
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