第22話 始まりの村『ツサーツァ』
魔法習得を終えたアオナは近くの村『ツサーツァ』に向かった。
肩にラットなラッドを乗せて・・・。
「このまま村に向かっていいの?」
『僕の姿は
「あと会話どうしよう?」
『慣れるまでは僕が通訳するか筆談だね』
「怪しまれない?」
『独自言語を使う少数民族という設定にしておこう。慣れるまでは僕が相手とユーナの頭上に翻訳した文字を出してあげる。特殊な魔法って言っとけば多分、大丈夫だよ」
「超絶怪しいね・・・」
二十分ほど歩くとと木製の杭で造られた柵に囲われた村があった。
入り口には小さな古屋があり守衛と思しき人が仕事をしていた。
「動物園の入り口みたい」
『入場者把握の為だし似た様な目的だからね』
「問題なく入れるかな?」
『あ、戸籍登録を忘れてた。でも紙がないや』
この世界では戸籍登録が魔法でなされる。五歳になると皆が行う儀式。
ないと怪しまれるだろうなぁ。ただでさえ怪しいのに・・・。
『最悪の場合、守衛さんと一緒に紙を買いに行ってギルド登録に付き添って貰う事になるかもだけど・・・』
結局、そうなった。村の道具屋で紙とナイフを購入。あと針。
血で紙に名前を書いて
「自分で指を切って血を出すとか無理!」
『えぇ〜・・・。針でもいいよ?』
「・・・、・・・・・・、無理」
頑張ったけど無理で馬鹿みたいに高い注射器機能付きの魔道具ペンを購入した。
・・・
ようやく村に入れたアオナはギルドへ向かい証明書としてギルドカードを発行して貰う事に。ガラの悪い冒険者に絡まれるテンプレ展開をこなしつつも、
そして、ギルド登録。ここでも魔道具ペンが活躍した。
「買って良かった」
『百万マナもしたけどね・・・』
ギルド登録では犯罪歴を調べる魔道具が使われた。問題なく登録出来たアオナは守衛さんに無事、無罪放免されてお別れを告げる。
「短い間だったけど一緒に旅ができて楽しかった。達者でね」
「いや、親しい仲間との別れみたいに言われても・・・。監視で道具屋とギルドに付き合わされただけなんだが・・・」
守衛さんは去っていった。
・・・
「いい人だったね」
『普通じゃない?ちゃんと仕事をする真面目な人だった気がするけど』
次に二人は買い物をする事に。なにせ何も持っていない状態。
服、食器、保存食、調理器具、救急キット、椅子、机、テント、寝袋、ランタン。
お金はあるのだから買いまくり、空間収納に放り込んだ。
宿はギルドのニ階が宿泊用部屋になっているのでそこを借りた。
人口二百人程の小さな村。利用者はアオナだけだった。
さっきのガラの悪い冒険者は村の奴なんかい!
実は村に悪さする連中かどうかを体を張って確かめる不器用で優しいおっちゃんだった。
買い物を済ませてギルドに戻ると、
「さっきは悪かったな」
「誰だっけ?」
「さっきお前に一蹴された冒険者のオッサだよ!」
「大した事なかったから気にしなくていいよ。えっと名前はおっさん、だっけ?」
「オッサだ!数秒前に紹介したのに、間違えんなよ。あと大した事ないとか傷つくわ!!」
そのまま仲良くなって一緒に晩御飯を食べる事に。
村の事を色々と教えて貰った。
・・・
楽しい食事を終えて別れを告げる。
「短い間だったけど一緒に旅ができて楽しかった。達者でね」
「え?いや、死亡フラグみたいなの立てんなよ!村には暫くいるのか?」
「多分、割とすぐ移動すると思う」
『そうなんだ。まぁその方がいいかもね』
ラッドは意外そうにしていた。
「まぁ、なんかあったら相談してくれてもいいぞ」
オッサは去っていった。
・・・
「いい人だったね」
『僕もそう思う』
こうしてギルドの二階の部屋で眠りにつき、異世界旅の初日は終わりを告げた。
***神界***
「無事に村に着いたみたいね♪」
「すっかりストーカーですね」
「いや、ほら!心配だし!!暇だからとかじゃないんだからね!」
「ツンデレっぽく言っても可愛くないですよ?」
「まぁ基本は私達、暇ですし丁度いい娯楽をくれて助かりますね」
「お?メイもなかなか言いますなぁ♪でもそうね。楽しみではあるかな・・・」
「あまり期待しすぎちゃダメな気もしますけどねぇ〜」
「別に期待している訳じゃないんだからね!」
「畳み掛けるツンデレアピール!あざとい、さすがマスター、あざとい!」
「楽しそうですね・・・」
「割と真面目な話、期待とかはしてないんだよ?ただ楽しく過ごして欲しいだけ・・・」
永遠に続く時間と意識。
一体、人はどれだけ人の意識を保っていられるのだろうか?
人は常に変化し続ける。肉体の変化がなくても、思考する以上は精神が変異する。
感情があるから、普遍ではいられない。
刺激がその人を正常に留まらせる。立ち止まる事は出来ない。
だから・・・彼女は他人を作ったのだ。
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