第20話 アオナの初戦闘
「アオナ、大丈夫かなぁ・・・?」
結局、杖とスキルだけ持たせて放り投げちゃったからなぁ。スキルを持たせるのに使った【煌めきのクリスタルオーブ】の残りは空間収納に入れておいた。
比較的、魔物が弱く戦争から遠い場所を選び小さな村の近くにある平原におろした。
***
彼女はクィールの世界に降り立った。そこは太陽が三つあり赤、水色、紫の光の球がフワフワと浮かぶ気持ちの良い草原。
「異世界だなぁ・・・」
アオナは周囲を見回しボソリと溢した。
『無事転移を果たした様で何よりだね』
「誰っ!?」
とても近くから声が聞こえた。
『僕は杖にインストールされている従者だよ』
「そう言えばそんな事を言ってたわね。名前は?」
『ないよ。なにか良いのを頂戴♪』
性別も見た目も不明な初見ですらない相手に名前をつけるのは
でもないと不便なので、とりあえず仮という事で『ラッド』と名付けた。
黒竜の血の杖、血=ブラッドから取った様だ。
「で、私は何をすればいいのかしら?」
そう。なんの目的も知らされていなかったのだ。まぁ、ないのだから伝えようがない。
『やりたい様にすればいいんじゃないかな』
ラッドは答えた。
「ん〜、言葉は通じるの?」
『・・・通じないみたい。モニターに言語情報を表示するね』
文字はカタカナだったが発音が違った。
「覚えるのが大変そうね・・・。でも日本語ベースだからまだマシか」
どうやら前向きに捉えてくれた様だ。
モニターは誰もが使える機能。従者はリンクされているので伝達にも使えた。
するとそこに一匹の魔物が現れた。
『エルダーラット、小型の魔物だけど生命魔法を使うこの辺では一番強い魔物だね』
ウサギより少し小さいくらいのサイズだけど熊も殺せる魔物だ。
見た目は白いハムスターとウサギの中間の様な姿をしている。
「私、小型犬にも負ける自信があるんだけど?」
『なにその無駄な自信・・・。丁度いいから
丁度いいチュートリアルになったのかもしれない。
調整は適当にやったけど大丈夫かなぁ・・・。
『効果範囲は杖の直線上から角度十度以内、射程は十メートル。外さないでね』
「ガイドの光の線は私だけに見えるのね、便利だわ。これなら私でも当てられそう」
魔法用の杖を持っている場合、魔法の効果範囲は杖の直線上になる。
エルダーラットは格下相手だと舐めているのか、それとも警戒しているのか五メートル程の距離をとって様子を見ていた。
「テイム!」
アオナが叫ぶと同時にエルダーラットの体が光に包まれた。
そして、次の瞬間・・・
「あれ?上手くいった?」
よく見るとエルダーラットはアオナに向かって手を振っていた。
『上手くいったみたい♪発声器官がないから念話で話すけど意識はちゃんとラットに入ってるよ』
ラットが小走りでアオナの所までかけてきて器用に肩まで登っていった。
「ラッドがラットになっちゃったね」
『それってジョーク?笑う所・・・?』
・・・
***神界***
「無事に
「ちょ、なんですか?あのチート魔法!?」
「うわぁ・・・ある意味、魔物特効の即死魔法じゃないですか・・・」
「し・・・仕方なかったのよ!
「え?あれってそんなやばい代物だったんですね」
「私の
「それは仕方ないですね・・・」
「日本は複雑で特殊なスキルが発現しやすいからなぁ・・・」
「日本まじカオスですぅ・・・」
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