第5話 いよいよ決戦です!
いよいよ決戦です!
と言っても何度もループはしているのですが、しかし今回は魔法があります!
無限ではありませんが、二人の魔力が続く限りは大きく力になってくれる事でしょう。
一連の魔法取得作業や作戦会議は盗賊にバレない様に馬車から野営用に張ったタープの中で行いました。焚き火は絶やさず交代で見張を行います。
灯りの魔道具を消して、薬剤師から
敢えて、盗賊の思惑通りにレインが見張り番。
不確定要素を増やすよりも、知っている行動へと導きます。それはまるで詰将棋をする様に、一手ずつ確実に予測して手順を進めていく。敵の数は・・・十枚!
最初の襲撃、盗賊は四人。奇襲によりレインを確実に殺しにくる。
襲撃される方向は事前に知らせています。アーチャー、リノンの弓による狙撃。奇襲だと油断しきっていた所に馬車からの一閃!
一枚、落とした。あと三枚。明らかに無法者の無骨なそれとは違う。冷静な判断で盗賊は警戒を始める。先制攻撃で数枚落とす方法もあった。しかし、それだと長期戦になる。一時撤退からの援軍込みの襲撃をされると詰むのです。あくまで自然を装う。
一枚が馬車を警戒、残りの二枚でレインを落としにくる。
それと同時に、四枚が森から馬車に向けて駆け出す。残り二枚は森に控えている。
これが厄介なのだ。一枚は私達を油断させて死角からの狙撃による強襲を狙っている。
もう一枚はまず戦闘に参加してこない。こいつを逃すと、近くで野営をしている追加の十枚が援軍に来る。十枚で十分だと舐めてくれているおかげで今の状況がある。
「8番、木の上。3、2、2、ゴー!」
私は合図を送る。事前に何パターンかの状況に置ける敵位置をリノンに伝達しておいた。それにより伝令役の非戦闘員を先に落とす。リノンの弓の腕は素晴らしい。更に私は乱数調整を行った。成功するタイミングで合図を送ったのだ。失敗する可能性も勿論あった。だからこそ、成功する時に撃たせたのだ。
第一ステージ突破!私は夜空を見上げる。セーブ完了♪
レインに襲いかかった四枚の残り三枚。このままではレインが危ない。ローブを被り震えるレイン・・・ではない。実はあれはローブを交換してレインの帽子を被ったノイスだ!
馬のたてがみを拝借してカツラまで作った。盗賊の死角で作るのは大変だった。
見事に騙されてくれた様です♪相手を薬剤師一人だと油断した三枚のうち一枚をノイスが貫いた。武器は椅子代わりの寝かせた丸太の死角側、ノイスの足元にずっと隠していた。迫り来る森から増援で現れた四枚。それが近づく前に・・・
「右手の剣はダミー。左手の仕込みナイフ!」
残り二枚がどれか、私は慎重に見分けて叫ぶ。それはまるで未来を見てきたかの様に敵の動きを読み的確に送られる。だって見てきたし。
仕込みナイフが脇腹に刺さる。
そこで馬車からリノンが飛び出す。そのリノンに向かって敵の狙撃手からの、矢が放たれた。それを事前に知っていた重騎士ダインが馬車から飛び出して盾で防ぐ。
実は飛び出す事も打ち合わせ済みだった。ノイスへの狙撃を防ぎたかった。
リノンが出なければノイスが狙撃される。しかもこれで狙撃手の位置が割れた。
しかし、このままでは伝令役の代わりとして逃走される。しかも、あの位置。
敵援軍の拠点から反対側の位置なのだ。一度距離をとるか、それとも回り込むか?このまま狙撃を続けるか、狙撃手に迷いが生じる。
一方のノイス、ナイフには毒が塗られていてかすり傷でも致命傷でした。だから・・・脇に分厚い革の鎧を付けさせた。ローブは仕込みを隠すのに最適ですね♪意表を突かれたカウンターによりノイスは手際よく一枚落として、残り一枚。
不利と見るや即座に後退。どう考えても、ゴロつきの盗賊の動きではない。毒による暗殺も訓練されているとしか思えなかった。逃亡をはかる丸腰の一枚。それをリノンが見逃す訳がない。一閃。先行隊四枚と伝令役を落とし狙撃手は回り込みながらも援護や強襲を狙う。
集団で接近してくる四枚。ダインは狙撃手の攻撃を防いだ後、迷わず集団へと走り出していた。ノイスも邪魔な鎧とローブを脱ぎ捨てて向かう。リノンも援護姿勢をとる。狙撃手は無視していいのかって?
「うわああああ!?」
森の中から悲鳴が聞こえた。盗賊の襲撃方向から90度の方角。
見張り番をノイスと入れ替わったレインはどこにいったのか?悲鳴の聞こえた場所だ。事前にこっそりと配置して貰っていた。上手く狙撃手を落としてくれた様です。
後は四対三の戦闘。
相手は長期戦を望んでいない。森の悲鳴は四枚にも聞こえているだろう。
敵からすれば増えていく不確定要素。盗賊達は焦る。
なんとしても任務だけは・・・
『彼らの狙いはオクサとオットだ。』
私は、データを集積して確実に盗賊を追い詰めていく。
ダインに牽制で一枚が対峙する。リノンは敵にとって厄介な要素。
なんせ現在、百発百中ですし。
最も足の速い一枚がダインの脇を抜けてリノンを落としにくる。
もう一枚はその逆側から馬車へ向けて駆け抜ける。三枚同時の突進。防御特化の重装甲なダインでは当然、対処しきれない。一枚が限界だ。二枚には突破される。
完全に警戒されている状態。リノンの攻撃は通用しない。
ノイスは残り一枚に足止めされる。
馬車まで突破されたらアウトだ。
「3、2、1、ゴー!」
リノンは・・・馬車へ向かう盗賊へ向けて矢を放った。
油断していた盗賊は矢を受けてその場に倒れた。しかし、リノンに向かっていた盗賊がもう目の前まで迫っていた。明後日の方向に弓を放った直後。とても応戦できる状態ではない。
「
やっと魔法の登場ですよ!ここで詰んでいたのです。
ノイスが驚異的なスピードでリノンに向かった一枚を落とします。
残り二枚。元々ノイスと対峙していた一枚がノイスに斬りかかる。ノイスは魔法使用後の硬直のせいで利き腕の逆を犠牲にしたが、その一枚も魔法で落とした。
ダインは最後の一枚と接戦を繰り広げていた。
かなりの傷を負いながらも、それでもなんとか勝利した。
レインが捕獲した狙撃手を縛り引きずりながら馬車の方に走ってくる。そして、
「
ノイスはザックリと左腕をもっていかれていたが、無事完治しました。
ダインも治癒を受けて問題なく回復。
私はホッと一息つく。そして夜空を見上げる。
『ナイスセーブ!』
・・・
遂に山場を超えた・・・。
アドレナリンが出まくりの状態で興奮していた私はようやく少し冷静になった。
『私は私の意志で十人もの人の命を奪った。』
命の軽い世界。殺されない為に、私は殺した。
将棋のコマの様に、一枚、二枚と・・・。いや、将棋のコマなら再び盤上に登れる。きっと世界ではチェスの方が近い。盤上から駒が消えていく。
死んだ人は生き返らないのだ。私だけが今、その理の外にいる。
これを容易に容認していいのだろうか?いいはずがないと思った。
しかし・・・それでも、私は続きが見たかった。
『生命は重くなければいけない・・・。』
この言葉は、これからもずっと私に付きまとうのかもしれない。
別地点で待機している十人の盗賊も・・・退場させた。
作戦は襲ってきた盗賊の衣類を纏い、麻袋を暗殺成功証明として偽装し、不意をついた。
盗賊のリーダーと思われる男は魔法を覚えていた。これが厄介だった。
だからこそ不意打ちで確実に最初に落とした。残り九人は魔法を持たず戦闘能力も先程の襲撃者よりは劣っていたのでノイスとダインとリノンで勝利した。
ノイスがチート主人公の如く魔法で無双したのです。これで盗賊は全滅しました。
この世界の魔法は・・・強すぎる。
私達は盗賊を埋葬し、かなり遅い時間になったが泥の様に眠った。
ノレリダの四人は辛い体に鞭を打ちながらの見張り番を交代で行ってくれた。
おかげで、その後は大きな問題はなく私達は朝を迎えたのだった。
『私は、あの悪夢の夜を超えたのだ。』
二十人もの盗賊の命を奪い・・・。
それでも続きは続いていく。
私は盛大な寝坊により揺られる馬車の中で目覚めて、格好のつかない寝ぼけた頭で無理矢理に恐怖を押し込めた。体は五歳、精神年齢は100歳に迫る謎幼女である私。
私世界でも眠気は訪れる。時差ボケの様な感覚はない。随時、記憶が体にインストールされると言う感覚が近いのかも知れない。模倣神域での姿は鏡はないが体を見ればわかった。
私は5歳に戻っている。黒竜の血の杖の先端にある球体に映る丸く歪んだ顔は、私の記憶にある、私が5歳だった頃の顔のままだった。
私は私のままに、異世界を旅している。
今日中には、公国の街に着くらしい。そこまで行ければ一安心だ。
暇つぶしにノレリダ達の話を聞きながら言語習得に躍起になった。黒板は私のマストアイテムだ。談笑も交えての時間。私は現実と錯覚する。
『この世界は・・・
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