第46話 韋駄天の瑠璃、参上!

「うヒヒ、こいつあご馳走だ、食べちゃうぜえ」


 ここは東京郊外の空き地、草叢にただずむ廃工場である。


 正確にいうと、この工場に残るひとつのラインでは違法な食品が試験的に製造されつつある。


 もう一つの止まった大きめのラインには口をガムテープで封じられ、両脚を二人の男によって掴まれた白Tに黒レザーミニスカート姿の女性が仰向けになっている。両手は手錠で拘束されている。


「うううう」


女性は苦しそうにもがく。


「脚をもっと広げろ」


 女性の前に立ちはだかる背の低い中年太りの醜男が舌なめずりをする。


「おお、白パンツがちょっと濡れちゃってさあ、怖いんだろ、チビったな、お姉ちゃん。萌えちゃうよなあ。最後にその綺麗なお顔、もう一度拝みたいゼ」


そういうと、ガムテープに手をかける。


「あのさ、テメエがオレたち轟一家とどろきいっかを嗅ぎ回ってるって気づき出したのよ。だって綺麗なオメエがこの轟一魔とどろきかずまと寝るわけねえじゃん。


 えへへ、立ちんぼのフリしてあのホテルに連れ込んだはいいが、クロロホルムで酔っちゃって可哀想になあ。だからさ、ここで最後にゆううっくり、楽しませてもらうぜ、オレだけじゃなくここのみんなで回してよ、うへへ」


 一魔は一気にガムテープを外す。そしてズボンのベルトを外しかけたその時だった。女性は手錠を振り上げ、近づけて叫んだ。


「カーペ・ディエム」


 すると手錠が魔法のように外れ、女性は両脚を右上に跳ね上げて両方の男を後ろに薙ぎ倒し、男の首を右手で掴み、ラインにねじ伏せ、両手で首を締め上げた。


 「く、ううう、このあまあ、舐めやがって」


 うめく一魔を前に突き飛ばし、工場の支柱に頭を派手に打ち当てると痛みと出血で地面に転がる。


「痛えええっ」


「ユリア、速く!」


 叫ぶとともに工場の後ろ入り口から大型バイクに乗り、黒レザーの繋ぎを纏ったもうひとりの女性が現れて、ミニの女性にピストルを放り投げる。


 ピストルを受け取ると彼女は転がっていた中年男の頭に突きつける。


 「動くんじゃねえ、親分が死んじまうぜ、手を挙げろ」


 子分たちの見ている前で一魔の腹に一撃を加えてふらついたのを引きずりながら、バイクのところで蹴りを入れてタンデムに乗り込む。


「ユリア、あれを」


 するとバイクの女性は鋼鉄の支柱に磁石の付いた箱型の秒針時計を貼り付ける。


「あばよ、舐めんじゃねえ。あの世へ行く前に教えといてやらあ、アタシの名は韋駄天いだてん瑠璃るり、地獄の閻魔によろしくな」


 バイクの排気音と共に工場から走り去る二人。額から血を流しよろよろと工場から出てくる一魔。そして後ろを振り返ったその時。


爆発音と爆風、煙と閃光が空高く上がり、工場が一気に吹き飛ぶ。


「ああああああ、こ、工場があああああ」



「あーあ、ユリア、もう囮ってヤダ、やっぱ怖いって。パンツにチビったのあいつらに見られたってさ、ハズうう」


「だってあいつら、オネエのシミパン、この世の最後に見られてよかったじゃん、アハハハハハ。

 でも手錠に通信機と暗号錠を組み込むって考えたよね、さっすが瑠璃のオネエ」


「一魔のアホ野郎、ホテルでこれ使いましょうか、って言って手錠見せたら涎垂らしやがって、バカヘンタイが、アハハハハハ」



「あ、あの、百々末のダンナ、ご、合成肉の工場、知らねえ女にやられた。全部爆破されて、粉々に。子分も20人、全部オダブツになっちまって」


「え、一魔、な、なんやて。ほんならマニュアルも全部ぱあになったゆうのか」

「は、はい」

「アホかーーーあああっ。や、やった女は、どこのどいつや」


「い、韋駄天の瑠璃って」


「韋駄天の瑠璃、誰やソイツはあああ・・・」


つづく


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著者より: 今回は平成のvシネマみたいにカッコいいシーンを展開

    しました。







 











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