第38話 決着と和解、新たな展開

1年後、地球

東京 

鯖山ヒルズ 70階 

博士屋太郎の自宅


「功夫、もう父さんはお前たちの関係を認めてやっていいと思ってるんだぞ」


太郎は功夫の前に、今週発売の週刊誌「フライやで」、「週刊原理」「週刊春秋」の特集記事をひろげた。


「火星特使リンジーとバーガー屋若社長の熱愛」

「都内ホテルで密会、火星人二世も計画か」

「恋多き火星女にメロメロのバーガー社長」


 煽情的な文字が踊り、功夫もある程度覚悟はできていた。


 先週、都内の隠れ家的イタリアンレストランに極秘裏に連れて行った際、スクープされたらしい。その後、酔ったリンジーをタクシーでホテルに連れ込んだところを更に盗撮されていたのだ。


 「オレ、結婚したいんだ。あの子、ああ見えてもすごくいい子なんだよ。話そうと思っていたけど、実はもうプロポーズもして指輪も・・・」


「父さんもいい子だって分かる、ダテに長いこと生きてねえ。それから男親って、こういう関係はある程度カンで分かるんだよ。そろそろかな、ってさ」


「じゃあ・・・」

「お前、子供ができたらどうすんだ。まさか火星で育てる気か?」


「それは彼女とよく話すさ。オレは会社があるから地球にいる気だよ。父さんが持ち株会社を作って会長就任し、実質的にオレがこの事業を展開する社長になったってことは、地球にいるべきでしょ」


「そうだよな、だから・・・」

「うん、だからなんだよ、式のこととか子供のこととか全部コミで。あと、数日後、挨拶に連れてくるよ。彼女のご両親のことは話したよな」


「ああ、父親は戦死、母親は行方不明。オレは構わないよ、そんなこと。郁代、お前はいいのかい」

「あたしゃ功夫を信じてるさ。お前もいい歳なんだし、いい頃合いさ。あんなチャキチャキした子は社長夫人としてしっかりやってくれる筈さ。


 但し、お前がしっかりリードしてやらないとあの子は浮気しちゃうかもしれないよ。お色気ムンムン、他のオトコが放っておくもんか」


「ああ、それは分かってる。父さんと母さんが賛成してくれて嬉しいよ。火星で式挙げても来てくれるかい?」

「応よ。火星でも土星でも任せとけって。思いっきりのいいのが江戸っ子ってもんさ」


絹代も大きく頷いた。


次の日、午前

MARS BURGER社 定例戦略会議


新社長、博士屋功夫は立ち上がり、役員の前に出た。


「先般より、火星特使であるリンジー・ミルフォードさんと私の関係がマスコミ各社によって大きく報道されていますのでご心配のことと拝察致します。

 

 私共の関係につきましては正式に役員会で報告し、マスコミに対しても記者会見をしたいと思いますのでもう少しお待ちください。


 既にご存知の様に、東ベンの皇帝と西ベンの大統領が先月、国境に近い再建された処女寺において会見し、和解しました。それによると、再び熊鹿の捕獲を限定的に開始するとのことです。


 また、東ベンは国家予算を使って巨大な熊鹿の放牧地を造成し、当分は軍隊の警備と管理によって熊鹿肉を生産するとの情報を得ています。


 この和解によって熊鹿バーガーや熊鹿カレーのみならず、新たに東ベンの調理法による新メニュー開発に漕ぎ着けました。これはほぼ中国の火鍋ひなべと同じ料理です。


 この専門店、「熊鹿火鍋、火星中華」を新たに都内全域に展開する予定です。


 更に政府は一年後を目処に火星から円盤型宇宙船を購入し、火星との通商を拡大する方針です。これによって益々火星からの新しい食品がもたらされることが見込まれ、商機は更に高まったと見るべきでしょう。


 昨日、坂本金太郎というベンチャービジネス代表が、この火星商品を取り扱う商社を起業するとの企画書を提出して来ました。政府筋ともやりとりがある様で、信用してやってもいいと思い、銀行も交えて話を進めようとしています。


 我々、MARS BURGER社は彼らと当面独占契約をして火星ビジネスをリードできそうです」


役員から感嘆の溜息が上がった。


つづく





























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