第27話 「処女寺の合意」ー火星史に残る快挙。1

ポンポコポン、ポコポンポン、 


ポンポコポン、ポコポンポン


処女寺の門前に、何百匹と並んだタヌキたちの腹鼓が鳴り響く。その前で松明を掲げてスキップを踏むように踊り、行き来する十匹の踊り手。


「あれは狸族タヌゾクにとって戦いの踊りと腹打ち、ポンポコ踊り、なのです」


趙斉天チャオジティエン大尉は、楊将軍に説明する。


「よし、私が話をつけに行く」


楊将軍はレーザー銃を大尉に預け、丸腰で行く意志を示す。


「将軍、おやめください。奴らは我々から取得した超音速巡航ミサイルもあのように」

「アッハハ、あの七兄弟はリンジーの入れ知恵で知っておろうが、後の奴らはせいぜい使えて弓矢じゃ。


 こちらを向けているのは威嚇にしか過ぎん。ほら、誰も発射台の前にすら立っておらん。しかも元締めのポンポコ御前は胆力のあるおタヌキと聞く。私は百戦錬磨、皇帝の大勲章まで頂いた身じゃ。任せておけ」


将軍は両手を上げ、恭順を示して寺の山門に歩いて行く。


 一斉に門前に立ったタヌキ達の火矢が将軍を狙う。それでも屈せず、将軍は山門あと10メートル付近まで進み、大声で呼ばわった。


「この寺におわすポンポコ御前とサシで話がしたい、たのもおおおう。よく見られよ、私は楊秀和ヤンシュウハ、東ベンジャミン陸軍 正二品、征夷大将軍である。この通り、武器は捨ててきた、何なら我が近くへ寄り身体検査されよ。裸になれというのならそれも厭わぬ。お通し頂きたし」


「お待ちください」


そう大声で応えたのは山門を守っていた狸大将タヌタイショウ一斎イッサイポンノ介である。

「モノども、手出しは無用じゃ。将軍、失礼ながらそのままの姿勢で門前までお近づきください。私はこれより御前に伺ってきます故」


「あいわかった」


そういうと将軍は門前にまで進み、そのままの姿勢で控えた。


一斎ポンノ介はタヌキ達に火矢を降ろすように合図して、将軍には両手を下ろすように言い、本堂に早足で消えて行った。


暫くすると、綿入れを着た大柄のポンポコ御前が自ら門前にゆっくり歩いて来て、将軍に向かい合った。


「よく参られた、さあ、ここでは寒さも一際故、方丈へ参られよ。暖かい茶でもどうじゃ。栗も焼けておる。相伴されよ」

「かたじけない、では参るとしよう」


将軍は後ろの軍隊に手を挙げ、待機の合図をすると山門のなかへ消えて行った。


つづく



















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