第18話 重要影響事態、宣言。
首相官邸 某月某日 月曜日 午前9時
国家安全保障会議 緊急閣僚会合
「大変なことだ、これは」
大泉洋純首相は周囲に立つ緊張気味の閣僚を見渡して言った。
大きな画面には、米軍の軍事衛星から送られて来た鮮明な動画が映し出されている。
「横浜市緑区、ピオンモール周辺半径2キロに非常事態宣言を発出する。全ての車両、歩行者、上空の航空機は直ちに現場から退避するように指令を出せ。
東京都と周辺の三都県に停泊中の船舶に一時停泊を命じ、当該の地域に対して船舶、航空機の航行、運航を一時やめさせる。同時に重要影響事態を宣言し、米軍と連携しながら衛星による監視を続行する」
「これは火星ベンジャミン共和国による日火和親条約の重大な違反行為ですね。火星通商代表、サニー、バニーを通じてベンジャミン共和国大統領セオドア・ペリー氏と遠隔会談せねばならないと思います」
外務大臣、
首相の前に設置されている巨大なディスプレイには、ピオンモール前の巨大な駐車場に着陸した「火星3号」の大きな丸い船体が映し出されていた。その前中央に、革ジャンを羽織り、赤のミニスカを履いた若い女性が映し出されている。
周囲を取り囲むように7匹のタヌキが2本脚で立ってレーザー銃を構えている。月曜日の朝9時ということもあり、モールの駐車場は従業員や輸送車両を除きほぼ空いているが、周辺からやって来た野次馬が集まりつつある。そして館内放送が聞こえて来る。
「従業員、取引関係者の皆様、周辺においでの皆様。日本政府よりの勧告です。すぐにこの周辺半径2キロから退避してください。危険です。すぐに退避をお願いします 周辺にお住まいの方は自宅に入って待機してください」
モールから次第に人が出てきて車に乗り込み去って行く。しかし逆に侵入して来る車両もある。
「いったいどうしてタヌキたちは股間に包帯なんか巻いているんだ」
防衛大臣の
「警察庁に指示しろ。現場に警察官を急行させ、通行人を全部排除するんだ。規制線を張るんだよ」
首相が後ろの補佐官を指差して指示する。補佐官が急足で出てゆく。しばらくすると首相直通のメッセージツールにサニーからの緊急報告がやって来た。
「大泉首相、火星通商代表のサニーです。只今、東ベンジャミン共和国皇帝、太宗火星帝からの親書を携えて、リンジー・ミルフォードという者が首相との会談を要求しております。しかしこれは日火和親条約に違反する行為なので、まず私のほうが交渉しようと思いますがいかがでしょう」
サニーはダークスーツを着て、とても陰鬱な表情で首相を見ている。
「あなたとの交渉余地はありますか」
「やってみないとわかりませんが、リンジーは私の高校時代からの親友です。そこに賭けてみるしか方法はありません」
つづく
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