第5話誰かの夢
カワセミと2人で冒険者生活を再開させた。
まずは安定性の高い信用のあるパーティに混ぜてもらい、徐々に調子を戻していった。
俺たちは何歳か下の新人冒険者と一緒にゴブリンやオーク、コボルトも退治した。
この世界のゴブリンたちは女を苗床にしたりはしない。
普通(?)に害獣だ。
作物を荒らしたり、1人でいる子供や村人に危害を加えたりする。
ただし、これがジェネラルやシャーマン、キングやロードという変異種になると、人を生贄にしたり食糧にしようとするので、そうなる前に調査して間引かなければいけない。
なので、それらの討伐して証拠部位を持って帰ると冒険者組合、大元は領主や国が報酬をくれるので、大事な冒険者の資金源だ。
なお、さらに特殊な魔物になると魔石や素材が様々なものに活用されるので、ごく当然のように狩りの対象だ。
それらの冒険者活動の中で、ダンジョンは特殊で様々な遺跡として特殊な魔法の品があったり、歴史遺物があったり、お宝の宝庫でもあるが当然危険がいっぱいだ。
中にはドラゴンが出たなどという事実を元にした伝説の物語もある。
危険は多いが、街の中で安全にお金を稼ぐ仕事に限りがあるため、冒険者の仕事は社会インフラの重要な一部なのだ。
「ありがとうございました!」
「ありがとー!」
「またねー!」
手を振る3人の新人冒険者と報酬を分け合い別れた。
稼いだ金で酒盛りをするのも刹那を生きる冒険者の生き方だが、今回は小物のゴブリンだけの討伐だったので、そんなことをすればあっという間に稼ぎはなくなる。
今回は3人の村出の冒険者の男1人、女2人のパーティだった。
出来るだけのことは教えた。
場合によっては男女問わず、身体を売っても生きる道を選ぶのも冒険者だ。
詐欺に遭うこともあるだろう。
3人が3人のままで1年後も活動出来ているのも、1つの奇跡なのだ。
よほどの才能に恵まれない限り、日々の宿代も計算しながら、考えて考えてようやく生きていける。
そんな世界だ。
俺たちも4人で暮らした家から出ずに、いまもここにいる。
「んっつ……」
甘えるようにカワセミは俺の首の後ろに腕を回し唇を重ねる。
沸かした湯で互いの汚れを落として、2人でベッドで絡み温もりを分かち合う。
恋人としてではない。
失った何かをそれで補填しているに過ぎない。
俺とカワセミが今後どうしていくか、まだ何も決められずにいた。
そうやって1ヶ月が過ぎた頃。
教えた新人冒険者の少年が遭遇した熊の魔物に殺され、残った女2人は身体を売って旅の資金を工面し、どうにか生まれた村へ帰って行ったと人づてに聞いた。
誰もが夢を描き、夢を散らせて現実に帰って行く。
それでも生き残った2人が不幸だとは思わない。
夢が散って、それで終わりではないのだ。
それが冒険者の世界だ。
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