第3話:ゼヌスのバカのせいです。

「ところで、あなた、お名前は?」


「あ、俺、田口 悠生たぐち ゆうせい・・・ゆうせい」


悠生くんは自分の名前をそのへんにあったメモに書いてワインに

見せた。

「そういう文字を書いて悠生・・・ゆうせいって読むの、分かった?」


「そ、よろしくね、ユウセイ」


「あ、はい・・・」

(会ってすぐに呼び捨てかよ・・・)


「それはそうと、君、分かんないことがあるんだけど・・・」


「なんでしょう?」


「なんで指輪から出てきたの?」


「あなたが、ユウセイが出したからでしょ」


「まあ、そうなんだけど・・・」


「私は泉の精霊でもあり水の精霊でもありますから」

「なにかの加減で指輪に水がかかったからでしょうね」


「あ〜それは俺が指輪をはめたまま顔洗ったからだ・・・」


「たぶんですけど、それが呼び水になったんだと思いますけどぉ」


「なるほどね、それは分かったけどなんで指輪の中に入ってたの?」

「指輪の中に君の家があるとか?」


「な訳ないでしょ・・・閉じ込められたからですよ」


「閉じ込められた?・・・って誰に?」


「ゼヌス・・・ゼヌスのバカにですよ・・・」


「ゼウスって?・・・あの偉いギリシャ神様のゼウスのこと?」


「違います・・・ゼヌス・・・ゼウスじゃなくって」


「ゼヌスって偉くなんかないですよ、スケベなだけで・・・」

「・・・でも、あなたが言ってるそのゼウスって人と同じくらい

どスケベだと思いますけど・・・」


「君って、そうとう昔から指輪の中にいたの?」


「みたいですね・・・紀元前とか?」


「そんなに?、へ〜〜〜長すぎると以外と驚かないもんだな」

「それで、どんないきさつで指輪に閉じ込められたの?」


「すごく指輪に食いついてきますねユウセイ・・・」

「そのくらい私にも食いついてきてくれません?」


「いいから、先続けて・・・」


「あのね、私とゼヌスのバカは、子供の頃クレサって山中で一緒に山羊の

ベンジャミンって名前のサティロスに育てられたんです。

で、互い愛を育んでいたんですけど、私に飽きたゼヌスのバカが他に

女を作って 私をほったらかしにしたんです・・・だから腹いせにね・・・

ほら私セックスしないと干からびて死んじゃうでしょ」


「そうなんだ・・・知らないけど・・・」


「そうなの・・・だから他の男を誘惑しちゃって・・・最初は遊びの

つもりだったんですけど・・・相手も私もが本気になっちゃって・・・」

そしたら ゼヌスのバカに見つかって浮気した罰だって指輪に閉じ込められた

って訳なんです」

「自分はいっぱい浮気しといてですよ・・・」

「男っていつでも自分がやったことを正当化したがるです・・・自己中ですからね」


「へ〜そうなんだ・・・なんだかドロドロだね」

「昔の異世界の人ってエロい人ばかりだったんだ・・・」


「そうですよ、朝から晩までやりまくりですよ」


「やりまくりって・・・女の子がそんなこと言っちゃだめだよ」


「いいんです、そんなこと上品に言ったって下品に言ったってやってることは

同じでしょ」


「で、ユウセイ・・そろそろ私とセックスする気になりました?」


「あのね、さっきも言ったけど僕はしないからねセックスなんて」

「それに今さっき、会ったばかりだろ?」

「こういうのは順序ってものがあるだろ・・・」

「誰でもいいのかよ・・・」


「私を見てエッチい気持ちにならないですか?」


「エッチい気持ちになっても俺、触れないからね女の子には・・・」


「傷つきます・・・私、指輪に閉じ込められてる間に魅力なくなっちゃった

んでしょうか?・・・」


「そんなことはないと思うよ、君はワインは充分魅力的だと思うけど」


「ほんと、だったら・・・」


「悪いけどさ、無理だよ・・・指輪から出てくるところを間違えたね」

「君の希望に応えてあげたいけど俺って、ほんと女性ダメなんだ・・・」


「え?、もしかしてEDとか?」


「違うよ、肉体的には正常だよ・・・精神的に問題があるの」


「なるほど、複雑なんですね」


つづく。

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