第2話:フェラリスのワイン。

「私?・・・私はフェラリスのワイン」


「フェラリスのワイン?・・・・って?」

「なんか、よく見たら君・・・耳、尖ってない?・・・」

「ファンタジーに出てくるエルフみたいだな・・・」


「はい、その辺のキャラはみんな一蓮托生ですから」


「一蓮托生って・・・まあいいや」

「それよりなにか着させないと・・・君も裸はマズいでしょ」


(俺はそのままでもいいんだけど、誰か人が来たら困るし・・・)


「服なんか着ませんよ、これが普通ですから」

「って言うか、こんなところにずっと立たせとく気ですか?」


「あ、分かった・・・とりあえずこっちきて」


悠生君は裸の女を自分のベッドの部屋に連れて行った。


(馴れ馴れしい女だな・・・)

(前にどこかで会ってるとか?・・・)


「とりあえずここに座ってて・・・」


女は言われるままに絨毯の上にちょこんと座った。


(裸の女にベッドって・・・そこだけ見た人は絶対エッチいことを

想像するよな・・・)


って悠生君はまたバカなことを考えた。


悠生君の部屋は台所とその六畳一間しかなかったわけで・・・あとは

洗面所にトイレ。

風呂は完備してないから近所の銭湯に行ってるみたいだ。


「ほら、これでも着て・・・」


そう言って悠生君は、その女にチェックのシャツを放り投げた。


「こんなの着るんですか、オタクみたいでダサ?」

「やです・・・」


「それよりセックスしましょうよ・・・私と」


「いきなり、何言ってんの?、おかしいんじゃないか?」


「それにしても、オタクとかダサなんて言葉、よく知ってるんな?」


「いいんです、そんなことは・・・」

「そんなこと言ってたら私が日本語しゃべってるのだって、変でしょ」


「あ〜そうだね、君、どう見ても日本人じゃないしね」


「ね、だからね、いいんです・・・多少内容に無理があっても」

「だいたい、この物語の始まりだって完全にご都合主義でしょ」

「ここは日本なんだから、日本のキャラが出てくるのが筋ですよ」

「普通に天女とか妖怪とか出しとけば、よかったんです」

「私「ニンフ」を出したのは、エッチいモノが書きたかっただけだと

思いますけど・・・」


「は〜ここが日本ってよく分かってるね・・・」

「なるほどね・・・いちいち、ごもっとも・・・」


「じゃなくて、ちゃんと服着てよシャツ、君が良くても道徳的にダメなんだから」

「そんなので、うろうろされたら公然猥褻物陳列罪で逮捕されるよ・・・」


「俺個人的には服なんか着なくてもいいんだけどね」


女はしかたなさそうにシャツに腕を通した。


「こんなの着たってすぐ脱ぐでしょ?今からセックスするんですから」


「しないってば・・・はっきり言っといてあげるけど君もそんなことばかり

言ってたら頭のおかしい子だって思われるよ」


「それより、さっきの続きだけど・・・さっき俺、君になに聞いてたっけ?」


「なに聞かれましたっけ?」


「君は誰?って聞いたんだっけ?・・・」


「で、私はフェラリスのワインって答えたんでしたっけ?」


「フェラリス?・・・の?ワイン・・・ってのが君の名前?」


「違います・・・フェラリスは泉の名前または泉の精霊のことです」


「せ、精霊?・・・泉?」


「君、精霊なんだ・・・」

「でも精霊なんてファンタジーの世界だけでしょ」


「昔はいっぱいいたんですよ、ニンフって」


「ニンフ?・・・君って、ニンフなんだ・・・」

「そのキャラなら俺でも知ってる」

「ファンタジー小説とか神話とかで読んだことあるし・・・海外ファンタジー

もけっこう好きで読んでるから・・・」


「ね、お知り合いになれたんですから、さっそく私とセックスしましょうよ?」


「しないって・・・」

「それよりニンフってエッチ目のキャラなんだろ?・・・」

「あ〜だからか、先からセックス、セックスって言ってるのか・・・

君はそういうキャラなんだ」


「キャラ?」


「そういう性癖の女の子だって言ってるの・・・」

「じゃ〜なおさらだよ、最初に言っとくけど俺、女は受け付けないからな・・・」


「つうかさ、今は君の名前を聞いてるの・・・君の」


「だからワインですよ」


「ワイン?・・・それが名前なの?・・・お酒みたいな名前なんだ」


「ねえ、それよりそろそろセックスする気になりました?」

「あの〜セックスって知ってます?」


「知ってるよ、そのくらい」


「もしかして童貞とか?」


「悪かったな、童貞で・・・だから女はダメだって言ってるだろ」


「私が教えてあげますよ、ね?、しましょうよセックス・・・」


「しないよ・・・本当にしつこいな〜」


つづく。





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