第4話 最強の魔法使いになりました
それからの私の生活は一変しました。私のお部屋はもう薄暗いメイド部屋ではありません。服もニコルと同じような貴族の令嬢が纏う優雅なドレスになりました。ニコルは貴族としては平均的な魔力量がありましたが、私はその五倍以上の魔力量があったからです。
魔法庁からは後日、正式に私の進路に対する指導がありました。それは膨大な魔法量をコントロールする術や、魔法の理論や実践を学ぶために、魔法学園に通うようにという内容で、以下のような説明文も添えられていたのです。
『魔法は国の安全保障に寄与する重要な力です。魔道士たちは戦争や魔族・妖精たちとの争い、急な災害に対処するために不可欠な存在であり、彼らの技能は国を守る上で極めて有益です。国は自らの安全を確保するために、優秀な魔道士の養成を積極的に支援しています。ですから、魔法学園は無料で通え、魔道士たちの卵にも国からの奨学金が支給されます。お金を国から受け取りながら、無料で魔法の勉強ができるのです』
なんて嬉しいのでしょう! これでこのモクレール侯爵家から出て行けます。
「15才になりましたので、私はモクレール侯爵家から出て行こうと思います」
私は伯父様に自分の気持ちを伝えました。部屋や着る物を改善してくださったのはありがたいですが、ここには嫌な思い出しかありません。
「いやいや、カトリーヌや。お前は大切な私の娘だよ。正式に養女として迎えるから、モクレール侯爵令嬢として生きなさい。モクレール侯爵家から魔法庁の魔道士様を輩出することは、大層名誉なことだ」
「そうですとも。カトリーヌちゃんはとても優秀なのですから、私たちの娘として迎えてあげます。魔道士様になれば地位も名誉も富も手に入りますよ。そうしたら、お父様とお母様にきちんと恩を返すのですよ」
「お父様とお母様とは、どなたのことでしょうか?」
私はモクレール侯爵夫人のお話についていけませんでした。理解が追いつかないし、私の両親は既にこの世にはいません。
「あらあら。もちろん私たちのことですわ。これからはカトリーヌちゃんを可愛がってあげますからね。さぁ、お母様と一緒にサロンでお茶を飲みましょう。魔法学園にはモクレール侯爵家から通いなさい。あなたはもう家族なのよ」
モクレール侯爵家に引き取られた当初にそう言われたのなら、どんなに嬉しかったことでしょう。でも、今更このように言われても戸惑うばかりでした。ですが、勝手に家を出て行くわけにもいかず、そのままモクレール侯爵家に留まることになりました。
モクレール侯爵家から魔法学園に通ううちに、私の魔法はみるみる進化していきました。そしてついには火魔法の上位魔法である、地獄のような業火を召喚し、広範囲にわたって炎を蔓延させる魔法まで身につけたのです。この魔法は大規模な戦闘や領域の制圧、敵の包囲に利用されるものでした。もう私以上に強い魔法使いはこの国にはいません。
そのため、魔法庁で働く魔道士になれるものと確信していましたし、王家から招待状が届いたのも、そのことだろうと思っていました。伯父様たちはすっかり舞い上がってしまい、ますます私にちやほやするようになります。
「カトリーヌを引き取って本当に良かった。お前はモクレール侯爵家の誇りだぞ。サーシャもずいぶんと優秀な娘を生んでくれたものだ。きっと魔道士様に任命するというお話に違いない。一等魔道士様の称号を頂けるのだろう。なんと名誉なことだ」
伯父様は嬉しそうに頬を緩ませました。
ですが、王家に招待されたその日、国王陛下は思いがけないことをおっしゃったのです。
「カトリーヌ・モクレール侯爵令嬢に王太子の婚約者になってもらいたい。そなたのような最強の魔法使いこそ、儂の息子に相応しい」
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