028 ステータス回/準備終了


 TIPS:内部好感度

 数値化されたステータス内部の好感度――となっているがその本質はその人間の属性アライメント値である。

 この数値が個人に対して増減することは非常に稀で、基本的には善や悪、正義や秩序、無秩序や混沌。あるいは政治体制、国家、民族などの数値が増減している。

 なおその人物が好悪を抱くためのベースとなる好感度であるので、この数値が低いと表層の好感度が高くても相手からゴキブリ扱いされることもある。

 複雑な精神性を持つ生物特有のステータスなので単純な精神性を所持するモンスターには設定されていない。


 問:人類好感度内部値-500 個人好感度+100

 答:ゴキブリの中にほんの少しだけ興味深い個体がいる程度の認識。

   他は苦しめて殺すが君だけは楽に殺してやってもいい。


 問:個人好感度内部値+1000 個人好感度+100

 答:すべての行動決定に対象の意思や嗜好、好悪を関わらせようとする状態。

   信仰や崇拝に近いため、あらゆる善悪を超越してその個人を優先するようになる狂信者状態。

   1000は常人が抱ける好感度の上限に近い。深い信仰を抱くためには魂に相応の許容値が必要になる。


                ◇◆◇◆◇


 からくり車輪のトロイを仲間に入れてからはすべての準備を終えるのにそう時間はかからなかった。

 サーフェイスアプリをサーシャたちが常に使ってくれているおかげで、作戦の根幹となる次元魔法の特性の三番目も、なんとか手に入れた。

(この特性、たぶん使わないのが、一番なんだろうな。説得で穏便に別れられるのがきっといいんだよ)

 だが、使うか。使うしかないもんな。そのために準備したんだもんな。

 秋の終わり、冬の到来を感じながら俺は葉の落ちた木々が並ぶ山からじぃっと『荒野』を見る。

(今日、あそこに俺は行く)

 かつて誰かが住んでいた住宅の廃墟が立ち並ぶ場所。人類が失陥し、モンスターの住処となった地域。

 クーやシリウスによる再三の探索ですでに突破のための道順はわかっている。

 また最悪に備えて、モンスターに漁られないよう工夫し、物資――衣類や食料――の貯蓄も各所に済ませてあった。

 空は夕暮れ。周囲は薄暗く、闇の到来は近い。

 そして偵察に放っているスズメバチは目標を見つけていた。

 すべては万全だ。漏れはない。

(一応、ステータスは確認しておくか)


 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ステータス

 名前:セイメイ・ゴトウ

 年齢:9

 レベル:60

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆ステータス(ポイント残:0 使用済み:423 初期:10 獲得:413)

 力:10 体:20 器:12 速:20 命:1(+1) 神:5(+5) =77

 知:42(+10) 魔:40(+69) 精:40 感:20 運:20 魅:60 =346

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆魔法刻印【テイム】 深度【Ⅲ】

  ▽第一セットスキル:『隷属テイム』 テイム可能数【5】

   参照ステータス:【魔力】【魅力】 消費コスト:【魔力】

   ・『隷属魔法』――対象を魔力で隷属させる。

      テイム1:太陽の聖女アレクサンドラ『好感度【誓約】』『状態:親愛Ⅴ』

      テイム2:血影の幼姫クリスタル・ブラッドプール『好感度【100】』『状態:親愛Ⅳ』

      テイム3:次元精霊シリウス『好感度【100】』『状態:親愛Ⅳ』

      テイム4:からくり車輪トロイ『好感度【100】』『状態:親愛Ⅳ』

      テイム5:スズメバチ21号『好感度【1】』『状態:親愛Ⅰ』


  ▽第二セットスキル:『図書館ライブラリー

   ・『知力強化【Ⅲ】』――知力ステータスを中上昇させる。

   ・『知識リンク』――『図書館』の知識を自身の他スキルとリンクする。

   参照ステータス:【知力】 消費コスト:【なし】


  ▽第三セットスキル:『次元魔法』

   ・『魔力強化【Ⅲ】』――魔力ステータスを中上昇させる。

   ・『次元感知』――次元の流れや歪みを感知可能。

   ・『次元操作』――次元を操作可能。

   参照ステータス:【知力】【魔力】【感覚】 消費コスト:【魔力】

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 ◆スキル構造:

  ▽『隷属テイム

  ――スキル特性1『好感度設定』

  ・隷属対象に好感度数値を付与する。【好感度上限100】

  ・一日に一度、対象の好感度を上昇させる。

  ――スキル特性2『感覚共有』

  ・隷属対象の五感を共有する。

  ・隷属対象が別種族の場合、人間向けに五感を調整する。

  ・好感度が低すぎる場合は(マイナス値など)対象から共有を拒否されることがある。

  ――スキル特性3『生命強化』

  ・隷属対象の最大HPを+100%する。

  ・隷属対象の命ステータスに+1する。


  ▽『図書館ライブラリー

  ――スキル特性1『魔物知識』

  ・魔物モンスターに関する詳しい知識を得る。

  ――スキル特性2『魔法刻印知識』

  ・魔法刻印に関する詳しい知識を得る。

  ――スキル特性3『空白の本』

  ・魔法刻印内に絶対記録領域を作成し、記憶や経験の喪失を防ぐ。

  ・記憶から本を生成し、いつでも読み返すことができる。


  ▽『次元魔法』

  ――スキル特性1『時空錨アンカー

  ・空間の座標を認識・固定・登録を可能とする。

  ・『次元魔法』を魔法刻印の機能や他スキルとリンクする。

  ――スキル特性2『共有インベントリ』

  ・隷属対象がアクセス可能な30枠の枠数を持つ共有インベントリを次元魔法にて魔法刻印内部に生成する。

  ――スキル特性3『転移ワープ

  ・座標から座標への転移を可能にする。

  ・転移の対象は問わない/精神抵抗判定で敗北すると転移は失敗する/魔力を大幅に消費することで判定を有利にできる。

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 ◆称号(最大セット数5)

 『精霊の親愛』:精霊種から好かれるようになる。魔法耐性Ⅰを獲得。

 『空き缶拾いマスター』:レアドロップ率3%上昇

 『太陽の聖女の寵愛』:ステータス【神】に+5 ステータスポイントに(現在レベル-1)×2のボーナスを得る。

 『血影の幼姫の寵愛』:ステータス【命】に+1 ステータス【魔】に(現在レベル-1)のボーナスを得る。

 『サバイバー』:環境耐性Ⅰ ストレス耐性Ⅰ

 

 ――控え称号

 『孤児』:効果なし

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 ◆備考

 ・この情報を閲覧するには権限が必要です。貴方は権限を保持していません。


 『転生者Ⅰ』 Ⅰの特典は一つのみです。

 ・特典『前世記憶の継承』

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レベルを60にして、ステータスをいろいろと上昇させた。次のスキルのために知力ステータスを上げてはいるが、あともうちょっとが足りない。

 ステータスポイント目当てに刻印深度の上昇が待たれる感じだな。

 そのあとは、まぁおいおい考えればいいだろう。

 それよりも特性の三番目に転移を獲得したことが重要だった。

 なお、転移魔法にはいろいろと種類があるが、時空錨を持っている人間が一番便利に使えるタイプを俺は選んでいた。これと図書館スキルを組み合わせると転移しても失敗する確率が0になる。

 魔法刻印知識で知ったんだが、空白の本の特性がない転移魔法持ちなんかは、転移途中に忘却魔法なんかをかけることで座標情報を喪失させて、故意に失敗を誘発。空間の狭間に転移させて殺害することも可能だとかなんとか。

 はー、怖いね。俺も気をつけよう。対策してるけどさ。

「さて、あとは……サーシャか」


 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ステータス

 テイム名:サーシャ

   名前:アレクサンドラ・ケテル・ヴァーチャー

 年齢:9

 レベル:40

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆ステータス(ポイント残:0 使用済み:205 初期:10 獲得:195)

 力:0(+20)*1.2  体:20(+20)*1.2  器:0(+20)*1.2 =20

 速:40(+20)*1.2 命:0(+2)*1.2  神:40(+20)*1.2 =120

 知:0(+20)*1.2  魔:20(+20)*1.2  精:20(+20)*1.2 =40

 感:20(+20)*1.2  運:5(+20)*1.2  魅:0(+20)*1.2 =25

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆魔法刻印【聖女】 深度【Ⅱ】

  ▽第一セットスキル:『太陽の聖女』

   ・『身体強化【Ⅴ】』――全ステータスを特大上昇させる。

   ・『全属性耐性【Ⅲ】』――全ての属性攻撃にⅢの耐性を持つ。

   ・『全状態異常耐性【Ⅲ】』――全ての状態異常にⅢの耐性を持つ。

   ・『虚偽感知』――嘘を匂いとして判別可能。どのような嘘かも過去を遡って判別可能。

   ・『聖なる瞳』――視線をあわせることで発動する魔眼や邪眼などのスキル効果を無効化する。

   参照ステータス:【魔力】【神聖】 消費コスト:【魔力】


  ▽第二セットスキル:『砂塵結界』

   ・『砂の結界』――自身を中心として中規模の結界を展開する。

    結界内のすべての敵味方に移動力にⅠの阻害と、神ステータス×0.5の炎属性ダメージを3秒に1回与える。

   ・『太陽の守り』――『日輪』状態である場合、砂塵結界の影響を受けない。

   参照ステータス:【神聖】 消費コスト:【魔力】

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆スキル構造:

  ▽『太陽の聖女』

  ――スキル特性1『日輪の加護』

  ・魔力を消費してパーティー全体にステータス強化『日輪』を付与する。

   ステータス強化『日輪』――【邪神特攻Ⅲ】【邪神耐性Ⅲ】【HP継続回復Ⅲ】

  ――スキル特性2『殺魔武死さつまぶし

  ・『日輪』に『魔に属する者へのダメージを2倍する』効果を追加する。

  ・『日輪』に『魔に属する者からのダメージを半減する』効果を追加する。


   ▽『砂塵結界』

  ――スキル特性1『聖なる砂』

  ・炎属性ダメージを聖炎属性ダメージに変換し、神ステータス×1.0の光輝属性ダメージを追加する。

  ――スキル特性2『かつえ殺し』

  ・結界内にいる対象のHPとMPの回復を無効化する。

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆称号

 『孤児』:効果なし

 『空き缶拾いマスター』:レアドロップ率3%上昇

 『太陽の聖女』:太陽の属性を持つ聖女。種族【モンスター】【邪神】への与ダメージを上昇。

 『自主的な隷属』:自らの意思でテイムされている。

 『誓約』:エンゲージリングを渡された証明。

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆備考マスクデータ

 ・この情報を閲覧するには権限が必要です。貴方は権限を保持していません。


 好感度付与とは別に設定された内部好感度です。

 セイメイ 3000

 セイメイを除く全人類 -5100

 ・『虚偽感知』の効果でセイメイを除く全人類から汚臭を感じています。

 ・可能ならばセイメイ以外の人類を滅ぼして汚臭の元を絶ちたいと思っています。

 ・人類と敵対可能です。

 ・教会の潜在的な敵です。

 ――――――――――◇◆◇――――――――――


 共有インベントリで魔石を送り付けてレベル40にまでレベルを上げてもらったサーシャだ。

 彼女には戦闘時に必要なステータスを主に上げてもらった。

 本当は、女の子なら魅力とかも上げてもいいと言ったんだが『セイメイくん以外にモテても意味ないし』ということで断られている。

 申し訳ないからサーシャの刻印深度が上がったらレベル上げ用の魔石を提供する予定だ。迅速に必要なステータスを上げてほしい所存。

 それと砂塵結界の第二特性で『かつえ殺し』を取得してもらった。

 砂塵結界くんは第二特性の時点で、再生殺しの皆殺し結界が見えてくる強力なスキルのご様子。サーシャにはおすすめした手前、大事に育ててほしいところであった。

 これでサーシャは終わり、次だ。


 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ステータス

 テイム名:シリウス

 種族:次元精霊

 年齢:0

 レベル:40

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆ステータス(ポイント残:0 使用済み:303 初期:30 獲得7/1レベル:273)

 力:0 体:10 器:10 速:20 命:-(+1) 神:0 =40

 知:40 魔:40(+20) 精:40 感:40 運:20 魅:3 =263

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆魔物刻印【精霊】 深度【Ⅱ】

  ▽第一セットスキル:『精霊種【Ⅱ】』

   ・『精霊【Ⅱ】』――物理攻撃耐性Ⅱ。物理状態異常無効。

   ・『魔力体【Ⅱ】』――魔力ステータスを中上昇させる。HP-40% MP+60% MP枯渇時死亡

   参照ステータス:【魔力】 消費コスト:【魔力】


  ▽第二セットスキル:『次元魔法』

   ・『魔力強化【Ⅲ】』――魔力ステータスを中上昇させる。

   ・『次元感知』――次元の流れや歪みを感知可能。

   ・『次元操作』――次元を操作可能。

   参照ステータス:【知力】【魔力】【感覚】 消費コスト:【魔力】

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆スキル構造:

  ▽『精霊種【Ⅱ】』

  ――スキル特性1『浮遊』

  ・貴方は浮遊する。大地の影響を受けない。

  ――スキル特性2『潜航』

  ・次元属性を持った精霊の特性。次元の狭間、世界の裏側への潜航を可能とする。


  ▽『次元魔法』

  ――スキル特性1『次元の矢』

  ・『魔ステータス×2』の威力を持つ次元属性の魔法の矢を『1本』生成し、射出する。

  ――スキル特性2『三本の矢』

  ・一度に生成できる次元の矢の生成数を『3本』にする。

  ・矢が直撃した相手との知能対抗ロールを発生させ、勝利時、相手を『混乱』させる。

 ――――――――――◇◆◇――――――――――


 シリウスもレベル40だ。特性を二つ入手。その一つである三本の矢は知能ステータスが高くないと取得できないのと、このレベル帯でも貴重だと思われるモンスター素材をいくつか使用することで入手できる強特性である。

 『三本の矢』――名前の元ネタは毛利元就だろうな。この世界にもいたっぽいし。

 なおステータスは上げたあとに端数のポイントが気になったので魅力を3だけ上げておいた。ないよりはマシだろう。たぶん。

(魅力低いとなぁ、損するよな。たぶん)

 地味に威圧にも関わるステータスなので低いと雑魚が寄ってくるようにもなるし。

 ちなみにサーシャとシリウスが精神を限界まで上げているのはクー対策だ。あいつ魔眼持ってるから精神が低いと抵抗もできずに見られただけで落とされる危険があるのである。

 そして最後にトロイだ。うちの新メンバー。


 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ステータス

 テイム名:トロイ

 種族:絡繰鉄馬バイク

 年齢:0

 レベル:40

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆ステータス(ポイント残:0 使用済み:303 初期:30 獲得7/1レベル:273)

 力:40 体:40(+10) 器:40(+10) 速:40 命:-(+1) 神:0 =240

 知:20 魔:20 精:0(+20) 感:10 運:10 魅:3 =63

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆魔物刻印【機械】 深度【Ⅱ】

  ▽第一セットスキル:『機械種【Ⅱ】』

   ・『鉄の装甲【Ⅱ】』――物理攻撃耐性Ⅱ。物理状態異常無効。

   ・『鉄の体、鉄の心【Ⅱ】』――体ステータスと器用ステータスを中上昇。

                  神ステータスと精ステータスの上昇に必要なポイント+1。

                  腐食耐性Ⅱ。

   参照ステータス:【器用】 消費コスト:【魔力】


  ▽第二セットスキル:『ファイアーウォール』

   ・『精神強化【Ⅴ】』――精神ステータスを特大上昇させる。

   ・『対ハッキング』――ハッキングスキルに精神抵抗で対抗する。

   ・『対クラッキング』――クラッキングスキルに精神抵抗で対抗する。

   参照ステータス:【知力】【魔力】【感覚】 消費コスト:【魔力】

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆スキル構造:

  ▽『機械種【Ⅱ】』

  ――スキル特性1『安定』

  ・貴方は倒れない。転ばない。揺らがない。


  ▽『ファイアーウォール』

  ――スキル特性1『ウイルス対策』

  ・ウイルススキルに精神抵抗で対抗する。

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆称号

 『――』:なし。

 ――――――――――◇◆◇――――――――――

 ◆備考マスクデータ

 ・この情報を閲覧するには権限が必要です。貴方は権限を保持していません。


 ・特になし


 ――――――――――◇◆◇――――――――――


 一本の鉄の車輪だった体は進化に伴って、巨大なバイクへと変化した。

 俺自身、九歳児の小さな身体の持ち主だが、ステータスが高いので乗ることも可能だ。

 ただ、今日は乗らない。レベル40程度じゃあ、寄生樹アビステラーと遭遇した場合、バラバラに壊されて殺されるだけだからな。

 あとさすがにテイムしたばっかりなので、第一スキルの第二特性取得は間に合わなかった。

 それと第二スキルにハッキング対策スキルを取得させたが……人間の魔法刻印と違い、魔物の魔物刻印の防御は脆弱だ。

 そのうち専用で対策モンスターをテイムする予定だが、この間に合わせスキルは役にたつのだろうか?

(まぁ何もないと本当に一瞬でハッカースキル持ちには負けるわけだが……)

 この機械種を育てて作ろうとしているモンスターを考えればハッキングに対して無策とか本当に考えられないので一応、紙防御になると覚悟してのスキル取得である。

 なお、今回こいつは連れて行かない。拠点においていく。

 トロイは精神ステータスが20しかないから、クーの矛先になった場合、見られただけで状態異常ハメされて、何もできずにボコボコにされる危険性が高いためである。

 それにクーの奴って、装甲を無視する吸血スキルをスキルリンクで影魔法に接続してるからどれだけ装甲があっても無意味だしな。肉壁にもならないのである。

(準備、こんなもんか)

 息を吐いた。

 冬が近づいている。俺の吐く息に、ほんの少しだけ白いものが混じっていた。寒気がする。

(来年は、何してんだろうな俺って)

 益体もないことを考えながら、俺は背後に立っていたクーを振り返る。

「キャンプの撤収準備は終わったな? そろそろ行こうぜ」

 空は薄暗く、夜は近い。

 クーが背後で「わかったわ。セイメイ」と小さく呟くのを聞きながら、寒気がするような肌寒い荒野に向かって、俺は歩いていくのだった。


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