025 サーシャの強化
魔法刻印の成長のためには、熟練度稼ぎの機会というものは重要だ。
しかし起床してすぐに自分の魔法刻印を確認すれば熟練度が見るからにもりもりと増えている。
魔法刻印専用SNSアプリ『サーフェイス』の利用をサーシャに許可してから半日ぐらいしか経過していないのに、だ。
(あー。てかこれ、魔法刻印知識も同時使用してるから図書館スキルの熟練度も稼げてるのか……3スキルの熟練度が勝手に貯まるとかすごい便利じゃん。最高かよ)
しかし、サーシャは一体誰と会話を? まさかシリウスとか?
なんだろうな。あれはふわふわ浮いてるけど、ふわふわの毛玉じゃないんだけどな。仲良しか?
ちなみになぜサーフェイスで図書館スキルが成長するのかと言えば、魔法刻印の普段使っていない領域を参照したり、利用したりするのに魔法刻印知識が利用されていることで熟練度が稼げているのだと思われた。
これは自分で試しに使ってみたときは制作で熟練度に経験値が入っていたから、利用でも熟練度が入ると気づけなかった点だな。
それと、だ。
俺と同じような魔法刻印知識持ちに魔法刻印を攻撃された際などを考慮して、低リソースで機能する自己診断・防護アプリ『六波羅探題』を眷属たち――シリウスとサーシャ――の刻印に組み込んでみたので、定期的な自動診断でも図書館スキルに熟練度が入ってきていた。
(これ、近日中に図書館の第三特性まで取得できるかも……いや、年内に第五特性までいけるか?)
自動化すると熟練度が稼げるなら、こういった知識系スキルをなるべく勝手に使われるように改良していかねばな。
そんなことを考えていれば、テントの外からクーが食事ができたと呼ぶ声が聞こえるのだった。
◇◆◇◆◇
ルーム『眷属お話ルーム・セイメイくんは覗いちゃダメだよ』
シリウス >視覚・聴覚共有『セイメイの朝』
サーシャ >ありがとう シリウス お願い 覚えててくれて
サーシャ >安心して、クリスタルさんからは私が助けてあげるね 私はモンスターのテイムに嫉妬するほど狭量じゃないからね
サーシャ >それで昨日した話だけど、セイメイくんはクリスタルさんとのテイム契約を解除? 破棄する? あの子って便利なんだよね? なんでなんだろう?
シリウス >あるじからは法律の問題と聞いている 吸血姫が言うには人間のテイムは違法
サーシャ >ふーん 違法だからテイムを解除するの?
シリウス >そうだ ただし好かれすぎてテイムを解除したら吸血姫に殺されるとあるじは思っている だから解除は逃げる算段を立ててからとあるじは言っていた
サーシャ >ふーん ふーん ふーん 違法なんだ ふーん
サーシャ >じゃあセイメイくん 私とのテイムも解除するのかな? なにか言ってた?
シリウス >あるじは、クリスタルとの契約を解除する実験のために解除しない前提で解除のやり方を試してみたけれどダメだったと言っていた そのときは誰のことだかわからなかったがそれはサーシャのことだと思われる
サーシャ >へぇ、試したんだ 私との契約なのに それで? ダメだったの? どうして?
シリウス >あるじは契約の解除にはエンゲージリングを破壊もしくは破棄させる必要があると言っていた
サーシャ >ああ、ふふ、ふふふふふふふふふ
シリウス >???
サーシャ >エンゲージリングは魂を接続する高等魔道具だったね。契約の保護の効果があるんだ。エンゲージリングを都市でカオスオーダーたちが血眼に探してるって聞いたけど、つまりこれってそういう魔道具なのか。
サーシャ >それにセイメイくんの魂胆もわかってきちゃったな。セイメイくんってそういうところも正直というか
シリウス >聖女 説明を要求
サーシャ >あの人、テイムした人間のこと、テイムした対象と思ってないんだよ 友達のつもりなんだ
シリウス >聖女?
サーシャ >契約を解除しても、もとの関係でいられると思ってるんだよ 謝ればいいとか考えてるんだろうね
サーシャ >私との契約は……連絡がとれる手段……例えばスマホなんかを入手したら解除、かな? セイメイくんの魂胆は。わかってたけどさ。最低だよね
サーシャ >逃がすわけないじゃん 逃げれると思ってるのかな? 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
シリウス>聖女?
サーシャ>逃げたら許さない
シリウス>聖女?
サーシャ>絶対に逃さない
シリウス>聖女?
サーシャ>つまり私とクリスタルさんはよく考える必要があるってことだよ
◇◆◇◆◇
朝食をクーと食べたあと、サーシャから連絡が来たので彼女が取得するだろうスキルや特性、それとステータス振りに関しての相談に乗ってやる。
というのもあいつ、俺からの接触や通信なんかが来るまでステータスに何も手を加える気がなかったらしいのだ。
『セイメイくんの役に立ちたくて』なんて言っているが、その変わらなさに安心するとともに、サーシャの自立のためにも隷属スキルの解除がやはり必要だなと考えてしまう。
あまりにも変化がなかったから、どこまで隷属スキルがサーシャの心に影響を与えているのかはわからなかったが、一度解除して、そうしてから再びきちんと友人として付き合いたいと思う。
というか人間のテイムが違法なら法律は守りたかった。
俺だって街で暮らしたいし、病気になったら医者に気軽にいけるような人生を歩みたいのだ。
歯医者に気軽にいける人生よ早く来てくれ。体ステータスが上がれば病気知らずになるとはいえ、健康に老後を過ごすためにも若いうちから歯医者でケアしてほしいのだ。
さて、というわけで相談に乗った結果がこれだった。
――――――――――◇◆◇――――――――――
ステータス
テイム名:サーシャ
名前:アレクサンドラ・ケテル・ヴァーチャー
年齢:9
レベル:11
――――――――――◇◆◇――――――――――
◆ステータス(ポイント残:0 使用済み:60 初期:10 獲得:50)
力:0(+20)*1.2 体:0(+20)*1.2 器:0(+20)*1.2 =0
速:20(+20)*1.2 命:0(+2)*1.2 神:20(+20)*1.2 =40
知:0(+20)*1.2 魔:0(+20)*1.2 精:0(+20)*1.2 =0
感:20(+20)*1.2 運:0(+20)*1.2 魅:0(+20)*1.2 =20
――――――――――◇◆◇――――――――――
◆魔法刻印【聖女】 深度【Ⅱ】
▽第一セットスキル:『太陽の聖女』
・『身体強化【Ⅴ】』――全ステータスを特大上昇させる。
・『全属性耐性【Ⅲ】』――全ての属性攻撃にⅢの耐性を持つ。
・『全状態異常耐性【Ⅲ】』――全ての状態異常にⅢの耐性を持つ。
・『虚偽感知』――嘘を匂いとして判別可能。どのような嘘かも過去を遡って判別可能。
・『聖なる瞳』――視線をあわせることで発動する魔眼や邪眼などのスキル効果を無効化する。
参照ステータス:【魔力】【神聖】 消費コスト:【魔力】
▽第二セットスキル:『砂塵結界』
・『砂の結界』――自身を中心として中規模の結界を展開する。
結界内のすべての敵味方に移動力にⅠの阻害と、神ステータス×0.5の炎属性ダメージを3秒に1回与える。
・『太陽の守り』――『日輪』状態である場合、砂塵結界の影響を受けない。
参照ステータス:【神聖】 消費コスト:【魔力】
――――――――――◇◆◇――――――――――
◆スキル構造:
▽『太陽の聖女』
――スキル特性1『日輪の加護』
・魔力を消費してパーティー全体にステータス強化『日輪』を付与する。
ステータス強化『日輪』――【邪神特攻Ⅲ】【邪神耐性Ⅲ】【HP継続回復Ⅲ】
――スキル特性2『
・『日輪』に『魔に属する者へのダメージを2倍する』効果を追加する。
・『日輪』に『魔に属する者からのダメージを半減する』効果を追加する。
▽『砂塵結界』
――スキル特性1『聖なる砂』
・炎属性ダメージを聖炎属性ダメージに変換し、神ステータス×1.0の光輝属性ダメージを追加する。
――――――――――◇◆◇――――――――――
◆称号
『孤児』:効果なし
『空き缶拾いマスター』:レアドロップ率3%上昇
『太陽の聖女』:太陽の属性を持つ聖女。種族【モンスター】【邪神】への与ダメージを上昇。
『自主的な隷属』:自らの意思でテイムされている。
『誓約』:エンゲージリングを渡された証明。
――――――――――◇◆◇――――――――――
◆
・この情報を閲覧するには権限が必要です。貴方は権限を保持していません。
好感度付与とは別に設定された内部好感度です。
セイメイ 2500
セイメイを除く全人類 -5000
・『虚偽感知』の効果でセイメイを除く全人類から汚臭を感じています。
・可能ならばセイメイ以外の人類を滅ぼして汚臭の元を絶ちたいと思っています。
・人類と敵対可能です。
・教会の潜在的な敵です。
――――――――――◇◆◇――――――――――
サーシャの名前とか名字が変わっているが、これは教会での位階だな。
ケテルが第一階位の刻印を持つ聖女に与えられる称号で、ヴァーチャーは見習い聖女であるがゆえの中位階級だとなんだとか。
サーシャの名前から孤児院にいたころのゴトウの名字は消えているが――とりあえずこれはいいか。
名前が変わったことより相談の結果の方が重要だった。
とりあえずステータスは関わるスキルの多い神聖、先手をとれる速度、あとは周囲がレア魔法刻印持ちの聖女だらけだというので感知に振ることにした。
学園がそこまで危険とは思わないが、まずはサーシャの安全性を高めることを優先だ。
(次は魔力だなぁ。こっちから魔石を送れればレベル40まで上げたんだが)
なお本来ならばもうちょっと数値は低くともいろんなステータスにポイントをぶちこむところを特定ステータスに全投入するといった感じになったのは、サーシャが持つ聖女スキルのステータス補正が莫大だからである。
全ステータスに20も補正があるなら、必須ステータスに突っ込んでいいと判断したからだ。
次に第一スキルの特性に関してだが、とりあえずこれ取っとけば強いだろうという特性を取っておいた。
スキル特性『
モンスター相手ならば無双できるような性能だな。魔に属する、というのがどの範囲までを指すのかはわからないけれど……これはサーシャの持つ邪神特攻に関わる、邪神とやらにも効果があるのだろうか?
それと第二スキルに関してもだが、取得可能スキルの中から、かなり良さげな奴を選んでみた。
もちろん聖女の魔法刻印はかなりレアリティというか性能の高い魔法刻印なので、他にも有用なスキルを取得できる余地はあった。
神聖属性ダメージのレーザービットを展開する『ヒマワリサテライト』だとか、正統派的な響きのする『神聖格闘』だとか『神聖魔法』だとかだ。
ただ、将来的に取得できるだろう特性の中に便利なものがいろいろあったので、砂塵結界を取得といった感じである。
(完成したら性能的にクー殺しになっちゃうかもだが……サーシャみたいなのの場合、常時範囲攻撃持ってた方がいいだろうしな)
何しろ自己バフで自己再生が付与できるのである。立ってれば周囲の敵はみんな死ぬみたいなスキルがあれば無敵だろう。
サーシャ>ありがとう セイメイくん
セイメイ>おう、気にすんなよ 俺とサーシャの仲だろ?
サーシャ>うん それで、その 話は変わるんだけど
話は変わる? なんだろう。
サーシャ>クリスタルさんの契約を解除するってシリウスから聞いたんだけど。クリスタルさんを捨てるの?
セイメイ>捨てる? はぁ? なんで捨てるとかいう話になるんだよ。捨てるわけないだろ。
そもそもクーは俺のものではない。クーはクーで、一人の人間だ。
彼女には自由な意思があるのだ。
断じて俺のものではない。
契約を解除したところで捨てるという表現にはならない。
クーは今すぐこの場を去ってもいいし、ここにいてもいいのだ。
それは彼女に与えられた当たり前の権利で、俺が奪えるわけがないものだ。
サーシャ>やっぱりだけど。嘘ついてない、ね。捨てないのに、契約を解除する、の?
セイメイ>人間のテイムは犯罪なんだから解除するのは当たり前だろ まぁ今はちょっと理由があって契約しっぱなしだけど、学園都市に入る前には解除するよ
都市内にどんな感知方法があるかわからないしな。
最初は平気でも、ある日突然、家に警察が踏み込んでくるみたいなことがあるかもしれないのだ。テイム警察だ! 逮捕する! みたいな。
サーシャに関しても契約は解除するけど、今言うと絶対に口論になるので言わないでおく。
(てか解除するならエンゲージリングをどうにかして奪わなければならないけど)
渡したときの喜びようを思い出せば絶対に外すことはないだろうが……かわりの指輪を用意してやるとか、そういう方法を考えなきゃだぜ。
しかし、まさか『好感度【誓約】』状態の対象はテイムの解除ができないとは思わなかったのだ。迂闊なことをしたという気分である。
(エンゲージリングの強化幅がでかすぎると思ったぜ。テイム解除不可状態を付与するとか、とんだデメリットだな)
要するにエンゲージリングで強化したまま契約を解除するなんていうズルができないようにするための仕様なんだろう。
装備条件に好感度があるのだから想定してしかるべきだったのだ。俺のミスである。
サーシャ>うーん テイムの表記に関してはほら、ステータスを改ざんするとか、そういうのは? 鑑定スキルの仕様上、テイムじゃないって表向きに表示できるようにすれば普通の鑑定だとわからなくなると思う。
教会で学んで賢くなってるサーシャの発言に俺は少しだけ感動する。もう俺にひっつきまわってたあの幼い感じの少女はいないんだろうな。
ただ、サーシャの提案は却下だが。
セイメイ>それだとお前の虚偽感知に俺が引っかかるようになると思うから却下
俺が魔法刻印知識を得てもステータス画面を改ざんしない理由がそれだ。
だから俺はレベルを高く偽装するとか、攻撃スキル持ちに見せかけて得しようとかは考えていない。
(おそらくだが、ステータスの表記を偽装したら聖女の虚偽感知に引っかかるんだよな)
嘘は嘘だからだ。
あと変装とか、身分の偽装や種族の偽装だとか、そういうのもダメだろう。
しかし、改ざんで引っかかったらステータスから腐臭がするようになるんだろうか? そんなことも考えてしまう。
セイメイ>っていうか俺、犯罪したくないし 普通に生きたいんだよ 普通に
サーシャ>わかった うん それじゃあしょうがないね うん えへへ
サーシャ>じゃあ、違法っていうのが気になるからこっちでも調べてみるよ クリスタルさんの勘違いかもしれないし 抜け道あるかもだし
いや、人間のテイムってよく考えなくても違法でしょ。やっちまった俺が愚かだっただけなのである。
◇◆◇◆◇
TIPS:サーシャのスキル
本来の歴史におけるサーシャのスキルは『砂塵結界』ではなく『聖女の威厳』。神聖強化型カリスマスキルである。
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