017 無色精霊


 まえがき

 知ステータスが知能だったり知識だったり知力だったりしてますが一番正しいのは知力なんですけど

 あちこちでバラバラ表記でちょい修正が難しいのでステータス部分では知力、地の文は知能でお願いします。二部を更新することがあったらそちらでは修正します。


                ◇◆◇◆◇


 TIPS:セイメイの目的

 サーシャは誘拐されてしまったが、大事にされると思うし、家族が殺されたわけでもないため、教会への復讐なんてものは考えていない。

 一度人生を全うした彼は、途方もなく大きなものに人間一人で挑むことの無謀さと空虚さを知っているのだ。

 ゆえに虫歯ができたときに歯医者にいける程度の人権と、ふわふわでかわいいペットでも飼えればそれでいいと思っている。


 レベルを上げるのは目的地が危険地帯のため。

 取得難易度の高いスキルを得るのはそれがあれば便利そうなため。


                ◇◆◇◆◇


 精霊種。

 魔力で肉体を形成した、非実体の属性を持つモンスターである。

 なおテイムした場合、魔物知識によれば餌は契約主の魔力を吸わせるだけでいいし、また幽体化や非実体のスキルを持つ個体が多いため、巨大に成長しても目立つことは少ない、らしい。

 テイム魔法で隷属させた、何の属性も持っていない無色精霊を指先でつんつんと突ついてみれば、ふわふわとした綿毛みたいなそれがふらふらと揺れる。

 綿毛みたいで面白い。指にまとわりついてくるそれにふふふと笑みが溢れる。

「セイメイ、それ一体でいいの?」

「いいでしょ。魔石食わせれば育てられる……前に好感度上げだな」

 流石にレベルを上げる以上、反乱防止のために好感度は50は欲しい。いや、この好感度がどれだけ意味のあるものかはわからないけどな。念のためだ。

 あとは育てるなら、この無色精霊を――次元鎌鼬に対抗させるために――次元精霊に進化させるための、次元系モンスターの魔石を入手する必要がある。

 とりあえず次元鎌鼬対策はこいつを育ててなんとかしてみようと思うのだ。

 もちろんわらしべ作戦の方が成功率が高いかもだが、わらしべ作戦のデメリット――捕獲したモンスターの世話や後始末――などを考えて、まだ世話しやすい精霊種の育成をしてみることにした。

(ま、失敗前提だけどな)

 流石に一発目で成功するとは思っていない。というよりこの育成を通じて魔物使役のノウハウを俺は得るつもりだった。

「ま、ついでに次元属性の魔石も集める必要があるけどな」

「え、じゃあ次元鎌鼬倒す必要がある、とか?」

 クーに違う違うと言う。

「この精霊を成長させるだけなら、中型魔石じゃなくて小型でいいみたいだぜ。小型なら、狩りやすい奴がいただろ」

 図書館スキルの特性である魔物知識が精霊種の育成方法を教えてくれるため、進化用の素材も把握できている。

 なのでクーに指示を出して、廃墟の町中でダンジョン苔を回収していた眷属個体を一体、操作してもらう。

「ええと、そっちじゃなくて、あっち行ってくれ」

 感覚共有で視界を共有した眷属を操作してもらう。行く先は廃墟にごろごろしている廃屋の一つだ。

 扉を明けて、中に入っていった影の眷属は早速それを見つけた。

 モンスター『ポルターガイスト』。

 そいつはレベル10にも達していないような、亡霊みたいな薄モヤのようなモンスターだ。

 ポルターガイストは廃屋への侵入者たる影の眷属を見つけると、壊れた食器や棚などを影の眷属にぶつけてくる。

 だが力と耐久にステータスを多めに割り振っている影の眷属は、気にした様子も見せずに少女のような小さな拳を亡霊に叩きつけた。

 ポルターガイストは物理属性が効かない幽体モンスターだが、影の眷属は影魔法の属性を持つ魔力の塊である。

 拳によってダメージを受けたポルターガイストの身体が揺らいだところに追撃の拳が叩き込まれ、ポルターガイストは消滅する。幽体だから身体が残らないんだな。

 廃屋の床に転がった魔石を影の眷属が拾い、戦闘は終了した。

「こっちに連れてきてくれ」

 うん、とクーが頷き、しばらく待っていればクーの傍に魔石を持った眷属が現れた。

「はい、セイメイ。これでいいの?」

「ああ、ありがとう」

 小さな魔石を手渡してくれるクーの頭を撫でながら俺は自分のインベントリにそれを突っ込み、インベントリ内のアイテム表示を見て次元属性の魔石を入手できたことを確認する。

 あとは同じようにして魔石を集めてくれるようにクーに依頼をしておく。

 というわけで、あとは好感度上げだな。

 ふらふらと浮いている無色精霊を指でツンツンしていれば好感度が【1】上がったというアナウンスが魔法刻印から聞こえてくるのだった。


                ◇◆◇◆◇


 そして育成を始めるならと、観念してレベルを上げることにした。

 というのも刻印知識を漁っていたら、隷属対象の好感度上げには魅力ステータスが高ければ高い方がいいと判明したからである。

「いや、でも上げたくねぇんだよなぁ。うぇぇ~~」

 といいつつ6レベル上げて24レベルにする。

 これで獲得できるステータスポイントは42だ。

(ええと、間違えないようにしないとな)

 ポイントを40、魅力に振る。ステータスは21からの成長は1上昇させるのに2ポイントかかるから、40ポイントの消費で20上がって、魅力値は40になる。

 残ったポイント2は知能に振る。図書館スキルの欲しい特性のゲットに知能ステータスがいくらか必要なためだ。

(こんなもんか?)

 そうしてからステータスを確認する。


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 ステータス

 名前:セイメイ・ゴトウ

 年齢:9

 レベル:24

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 ◆ステータス(ポイント残:0 使用済み:171 初期10 獲得161)

 力:10 体:10 器:10 速:14 命:1(+1) 神:5(+5) =59

 知:2(+10) 魔:20(+22) 精:10 感:10 運:10 魅:40 =112

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 ◆魔法刻印【テイム】 深度【Ⅲ】

  ▽第一セットスキル:『隷属テイム』 テイム可能数【5】

   参照ステータス:【魔力】【魅力】 消費コスト:【魔力】

   ・『隷属魔法』――対象を魔力で隷属させる。

      テイム1:太陽の聖女アレクサンドラ『好感度【誓約】』『状態:親愛Ⅴ』

      テイム2:血影の幼姫クリスタル・ブラッドプール『好感度【100】』『状態:親愛Ⅳ』

      テイム3:無色精霊Ⅰ『好感度【1】』『状態:親愛Ⅰ』

      テイム4:【なし】

      テイム5:【なし】


  ▽第二セットスキル:『図書館ライブラリー

   ・『知力強化【Ⅲ】』――知力ステータスを中上昇させる。

   ・『知識リンク』――『図書館』の知識を自身の他スキルとリンクする。

   参照ステータス:【知力】 消費コスト:【なし】


  ▽第三セットスキル:【設定してください】

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 ◆スキル構造:

  ▽『隷属テイム

  ――スキル特性1『好感度設定』

  ・隷属対象に好感度数値を付与する。【好感度上限100】

  ・一日に一度、対象の好感度を上昇させる。

  ――スキル特性2『感覚共有』

  ・隷属対象の五感を共有する。

  ・隷属対象が別種族の場合、人間向けに五感を調整する。

  ・好感度が低すぎる場合は(マイナス値など)対象から共有を拒否されることがある。

  ――スキル特性3『セット可能』

  ・設定されていません。


  ▽『図書館ライブラリー

  ――スキル特性1『魔物知識』

  ・魔物モンスターに関する詳しい知識を得る。

  ――スキル特性2『魔法刻印知識』

  ・魔法刻印に関する詳しい知識を得る。


  ▽『設定してください』

  ――スキル特性1『未設定』

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 ◆称号(最大セット数5)

 『孤児』:効果なし

 『空き缶拾いマスター』:レアドロップ率3%上昇

 『太陽の聖女の寵愛』:ステータス【神】に+5 ステータスポイントに(現在レベル-1)×2のボーナスを得る。

 『血影の幼姫の寵愛』:ステータス【命】に+1 ステータス【魔】に(現在レベル-1)のボーナスを得る。

 『サバイバー』:環境耐性Ⅰ ストレス耐性Ⅰ

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 ◆備考

 ・この情報を閲覧するには権限が必要です。貴方は権限を保持していません。


 『転生者Ⅰ』 Ⅰの特典は一つのみです。

 ・特典『前世記憶の継承』

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 深度Ⅲで最大レベルが60だから、まだステータスは上げられるが……うーん。やっぱりアレだな。全部のスキルと特性取るまでは全ステータスを20上げるのはダメっぽいな。

 20まではどのステータスも1ポイントで上がるから振り得かと思ったけど、使わないステータスは10もあれば十分だからだ。

(いや、どのステータスも上げたいんだけど、雑に平均上げしてポイント足りなくなったら困るんだよな)

 やっぱレベル上げなくて正解だったな。魔法刻印の知識特性を得ずにレベル上げ楽しい~~とか言いながらレベル上げて平均上げしてたら詰んでたかもしれないし。

(スキルごとに必要なステータスが違うからな。生存に必要な力とか体とかはテイムと全然関係ないし)

 テイム以外のスキルを使う場合、魅力は上げても意味は薄い。

 だが、テイムは魅力を上げると隷属成功率上がるし、好感度上げに良いから腐らない。

 第四とか第五で取得する予定のスキルの要求ステータスに魅力が含まれているから問題なく上げられるし。

 なお今から最終的に取得するスキルを全部決めて、ステータスなどもそれらが効率的に発揮できるよう計画して取得する予定はない。

 俺が急に次元魔法を取得したくなったように、状況次第で取得しなければならないスキルは変わっていくからだ。

 そんなことを考えていれば俺の膝上にいるクーがぶつぶつとなにか呟いている。

「か、かっこいい……え? 嘘、セイメイがめちゃめちゃかっこよくなったんだけど? 前もかっこよかったのに」

 クーが膝上でそんなことを言ってくる。マジで? ほんとに? 俺かっこいい?

 気になったので、ふよふよ浮いている無色精霊をつついてみれば、ちょんとつつくだけで嬉しそうに空中でダンスを踊る。

 お、おぉぉ、魅力ステータス、40もあるとかなり違うな。予定変更して第四スキルは魅力増加系の何かとるべきか? なんて考えてしまうくらいだ。

(魅力上げたらクーからの好意も増したし、クーのレベルも上げるかぁ……っていうかもうなんかいろいろ考えないで、クーのレベル上げて次元鎌鼬狩ってきてもらった方がいいのかなぁ)

 クーは人類なのでモンスターと違って使い捨てするつもりがない。

 なのでステータスの振り間違えとかスキルの取得失敗とかそういうことを起こさないように、低レベル帯で現在取得してるスキルとかを存分に使い尽くして、スキルの習熟とかさせて、魔法刻印の行使に慣れてからレベル上げした方がいいと思ってたんだが……。

(でもゲームとかでも結局、レベル上げたら低レベルの頃に使ってたスキルとか使わなくなるしなぁ)

 低レベル帯で苦労して小手先テクニックを鍛えるよりは、さっさとレベルは上げてしまった方がいいのかもしれない、か? いや、でもさっきレベル上げなくて正解みたいなこと考えちゃったしな。

 そんなことを考えつつも、とりあえずは、と俺は無色精霊をいじって遊ぶのだった。

 先送りである。

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