016 第三スキル獲得その2


 クーの眷属越しに確認できた次元鎌鼬のレベルは35。

 『魔物知識』の情報によれば次元属性の魔法攻撃を得意とするモンスターのようである。

「あとはそうだな。こいつら、動物型特有の高いステータス値に加えて、防御力無視の次元攻撃を得意とするって感じだな。あと高い確率で群れで狩りをする」

 なお魔物知識によれば次元魔法は使えるが、転移ワープは使えないようだ。

 ただしワープしないと言っても走る速度は速い。時速100キロぐらいは普通に出してくるし、反応速度も速すぎるぐらいに速い。

 今の俺たちじゃあ、見つかった瞬間に先手を取られて次元魔法でバラバラにされて殺されるだけだろうな。

「で、どうするの? 戦うの?」

 クーの問い。

「戦わない。とりあえず観察だな」

 観察? と、クーが膝の上で問うてくるので「そうだ、観察する」と返す。

 当然だが、あの廃墟型の『荒野』にいるのは次元鎌鼬だけじゃない。

 無数のモンスターどもが殺し合いながら生態系を築いているのだ。

 そんな修羅の巷たる荒野にて次元鎌鼬がいる地域は、地域まるごと次元鎌鼬たちが棲み着いていて、一つの勢力を作っているように見えた。

 他のモンスターの乱入の危険はないが、代わりにあいつらのヤバさが際立っているように俺には思えたのだ。

「ま、とにかく知ることから始めるのさ。あいつらが何食ってるのかとか、クソするのかとかセックスするのかとか、いつ起きて、いつ寝るのかとか、そういうの全部調べるんだよ」

「セックス……って何?」

 魔物知識に載ってるのは一般的というか、地域差や個体差などの情報は載っていないのだ。だから実地で調べる必要があった。

 きょとんとした顔のクーの質問を無視しながら続ける。

「あいつらが普段どんなモンスターと戦うのか。よく襲う種類のモンスターはいるのかとか、天敵はいるのかとか、どうやって増えるのかとか。全部調べるんだよ」

「へぇ……で、セックスって何?」

 クーのレベルを上げて対処するっていうのは簡単な解決法にも思えるが、まだ考えてない。

 というのもあの荒野は寄生樹アビステラーを始めとしてレベル50オーバーのモンスターもゴロゴロしているため、いくらクーが強くても一人で探索させるのは危険が大きいからだ。

 もちろん命ステータスがあるから死んでも大丈夫とはいえ、死ぬと痛いのがわかってる以上、クーを突撃させてゾンビアタックさせるわけにもいかない。

 疑問符を頭に浮かべているクーの質問を無視して、俺は続ける。

「あと俺はテイマーだからな。わらしべ作戦ができるか確認もしたい」

 サーシャとクーに二つ枠を使っているが、深度が上がったこととセミくんが死んだことで俺のテイム枠は現在三つ余っている。

 育成とか世話が面倒かもしれないが、何がしかのモンスターを隷属させても良い――というか、テイム魔法を活用するならすべきであった。

「わらしべって? あとセックスって何?」

「わらしべってのは雑魚いモンスターをテイムして、そいつを利用して強いモンスターをテイムするのを繰り返す作戦」

 三枠あるテイム枠を利用し、雑魚を三体テイムすればそいつらを利用して一段階強いモンスターをボコってテイムすることは可能なはずだ。

 ただし現在の俺の魔力ステータスは格上のモンスターを隷属させられるほど高くないから、次元鎌鼬をテイムすることはできない。

 もちろん第三スキルに隷属能力を強化するスキルを取得すればイケるかもしれないが、それだと次元魔法が習得できず、次元鎌鼬を倒す意味がなくなる。

 本末転倒というやつだな。

(うーむ、覚悟してレベルアップしてステータスを上げるべきか?)

 ただステータスの割り振りは取り返しがつかない要素だ。

 ポイントを消費するのは後回しにしたい。全部整えてから何かしらの理由で次元鎌鼬が狩れず、スキル取得は無理でした的な展開が来たら怖い。

 だからこそレベルアップは控えているわけなんだが……荒野で生き残るのに低レベルは不便なんだよな。現状、上げなくてもなんとかなってるけど。

 それに……俺は膝上のクーを見る。

「何? セイメイ? 私に聞きたいことでもあるの? というかセックスって何?」

 クーの質問を無視して「なんでもない」とだけ返す。

 クー。クリスタル・ブラッドプール。

 好感度が100に到達した真祖吸血鬼の少女。

 特別な魔法刻印を持つ、特別な人物。

 俺は自分のステータスの称号欄を見る。


 『血影の幼姫の寵愛』:ステータス【命】に+1 ステータス【魔】に(現在レベル-1)のボーナスを得る。


 寵愛称号。クーの好感度を上げていたら手に入ったこれ。魔ステータスが隷属成功率に影響する以上、俺にとってはかなり重要になる称号だ。これがあるから、まだレベルアップしなくていいかなと思ってしまう。

(つかレベルアップ、めんどくせぇんだよな)

 レベルアップの恩恵は、ステータスポイントの獲得の他にも最大HPと最大MPの上昇、低レベル格下相手からのダメージ減少などがあるが、それはそれとしてポイント割り振りが取り返しのつかない要素なので上げてポイントを獲得すること自体に精神的なストレスがある。

 加えて俺はレベル18だが、このぐらいレベルが高いともうレベルこのぐらいでいいんじゃね? みたいな満足感があって、レベル上げが億劫になるのだ。

 いや、もちろんレベルは上げるよ? 都市内で安全に生きるためにレベルは40ぐらいまでは上げなきゃいけないから準備はしてる。

 けど、現状で不満が特になく、精神的な満足感が強くて実際にレベルを上げるのはダルいみたいなところがあった。

(全部の準備が終わったら絶対にやらなきゃなんだが)

 夏休みの宿題みたいだな。

 やれるヤツはすぐに終わらせられるけど、やれないヤツは夏休み終盤になってから取り掛かるという意味で。

(しかし……称号なぁ)

 これって誰からでも手に入るのか? セミくんの好感度を100にすればセミくんの寵愛称号が手に入ったとかあったのか? そんなことを考えるが……まぁ手に入ったとしてもセミじゃあ弱いか?

 それとも寵愛称号は通常のテイムモンスターからは手に入らない? とかありそうではある。

(そうだよな。手に入ってたら皆称号のことについては言っていたはずだ)

 そして称号がこんな強力な効果を持っているとみんなが知っていたら隷属の魔法刻印自体が人気刻印になって、そもそも俺では手に入れられなかった……と思う。

(ということは、強力な寵愛称号は、人間を隷属させた場合の限定称号か?)

 それも強力な魔法刻印を持っている人間をテイムした場合限定の称号か? 流石にこんなものポンポン手に入ってるなら、隷属の魔法刻印が投げ売りされるわけない。俺以外に人間をテイムしたヤツだってきっといたはずなのだから。

(つか、こういう細かいこととか魔法刻印知識に載ってないのか?)

 俺が持つ隷属の魔法刻印を調べるときに、『魔法刻印知識』の特性で称号についても調べてみたことがある。

 そのときは調べても何も見つからなかったが、やはり気になってしまう。

(条件を変えてみればわかるとか……ねーか?)

 図書館スキルを発動し、自分の魔法刻印について調べて見るも、前に調べた結果とそう変わりはない。

 称号については何もわからない。

 称号を調べるなら称号知識の特性が必要なんだろうか。

 考えながら称号知識について考えてみる。有用かもしれないが……うーん、図書館の特性を使ってまで取得するほどのものでもないんだよなこれって。

(称号はたしかにすげぇけど、クーの称号を取得したときに、称号欄にセットできる称号数は最大五個までと表示が出たからな)

 五個しかか、五個もかはわからない。

 ただ、これからも俺がこのレベルの称号をポンポン手に入れられるとして、特性枠を一つ潰してでも称号の情報を得る必要があるのか? と自問してしまう。

(いや、うーん、でもなぁ)

 称号知識はなんというか、浅いというか、強力な称号五つ手に入れたら終わりなわけだし。寵愛称号がこのあとも手に入るなら、別になぁ、という気分になる。

(そもそも寵愛称号自体がなぁ。これって嫌われたら消えるのかなぁ)

 このあたりの仕様も謎すぎる。セックスについて俺から知ることを諦めてダラダラと料理本を読んでいるクーの頭を撫でながら考える。

 さらさらの髪が気持ち良い。頭に顎を乗せて匂いを嗅げば、なんだかいい匂いするし。

「ちょ、ちょっとぉ……」

 照れながら喜ぶクーをよそに俺はぼーっと考える。知識スキルの特性枠は貴重だ。称号は強力だし、寵愛称号を超える称号があるなら取得すべきだったが……やはり称号知識で特性枠を潰すのは惜しい・・・

(割と、知識であるならなんでも手に入るわけだし)

 取得に厳しい条件はあるが、サーシャのスキルにあった謎の【邪神】とかいう存在に関する特性である『邪神知識』みたいな特性もある。

 今後、何が命取りになるかわからない以上、図書館枠を優先度の低い知識で潰すのはやめておきたい。

(そもそも俺はスローライフ派なんだよ)

 究極的にもふもふの毛玉と一緒にのんびり暮らせればいいわけで、そりゃ強けりゃ生きやすいだろうが、最強の称号とかなんだよそれって感じでもあった。

 そんなことを考える俺の視界の中で、観察していた次元鎌鼬の様子が変化していた。

「お、バトってんな」

 次元鎌鼬のテリトリーにモンスターが侵入していた。二足歩行する巨大な猪――ダブルブルという名前の、レベル40のモンスターが次元鎌鼬の縄張りである住宅街に侵入し、通りを歩いていた次元鎌鼬に襲いかかっていた。

 ぶるるるるるぁあああああ!!! 獲物を見つけた二足歩行猪ダブルブルが雄叫びを上げた。蹄状の拳を振り上げ、鼬のモンスターを強襲する。

 両者のレベル差は5。特にパワータイプのダブルブルは一撃で大岩を砕くほどの威力がある。当たれば次元鎌鼬の小さな体ぐらい一撃でミンチにするだろう。

 しかし、きゅう、と次元鎌鼬が鳴いた瞬間、空間に刃が走り、ダブルブルの上半身と下半身に切れ目が走る。びちゃびちゃという音とともに、次の瞬間にはダブルブルの死体が路上に転がった。瞬殺だ。ダブルブルのほうがレベルが高いというのに、圧倒的な相性差だった。

 そんな戦いを感覚共有で見ていた俺は「うわ、グロ……」としか言えないし、そもそもヤバすぎて、俺の膝上でガクガク震えるクーと一緒にビビってしまう。やべーわ。次元属性、強いな。防御力無視の特性があるから物理系モンスターなら完封できるのか。

 加えて本体も速度型だから滅多なことがないと殺されないし、殺せない。

 俺たちが共有する視界の先では、次元鎌鼬がきゅうきゅうと鳴いて群れの仲間を集め、ダブルブルの肉に食いついているところだった。


                ◇◆◇◆◇


 とりあえず俺は隷属の感覚を試すべく、クーがダンジョン苔を捨てていた場所へと赴くことにした。

 連日俺が魔石を取り出していたために、こんもりと小さな山になっているダンジョン苔には、ゴブリンやスライムなどが群れている。いくら食っても魔石なんか一粒も入っていないのだが、栄養食として食べているのだろうか?

 なお俺の隣にはクーがいて、護衛代わりに影人形の眷属が三体立っていた。

「じゃ、やってみるか。隷属テイム

 ぴくん、とダンジョン苔を貪っていたスライムが俺の魔法によって即座に隷属する。

 称号補正分をあわせると、俺の現在魔ステータスは36だ。スライムレベルなら弱らせる必要もなく、問題なく隷属できる。

「んじゃ、スライムくん。ゴー」

 隷属させたスライムを突撃させて他のスライムを襲わせれば一瞬で周囲から袋叩きにされて隷属させたスライムは即座に死亡した。南無。

「まぁ、こんなもんだよな」

 なんの強化も補助もしてないスライムなんてこんなものだ。

 他にもゴブリンで試したり、小さな猪型モンスターのミニブルや子鹿モンスターのバンビーや昆虫モンスターの肉食カナブンなども隷属させ、突撃させて殺していく。

「隷属実験終わり。刻印深度Ⅲともなると雑魚をテイムした程度じゃ熟練度稼ぎにはならないか」

「んー、セイメイ、私がもうちょっと強くなれば次元鎌鼬だっけ? 余裕だと思うけど?」

「ん、んー。それは最終手段かな」

 俺がレベルを上げず、クーがレベルを上げた場合、隷属状態がどうなるかがわからない。

 クーとの隷属が切れるなら、彼女と距離をかなり離してからじゃないと吸血で殺されるかもしれない。

 今クーが俺を殺さずに済んでいるのは、彼女が隷属しているからだと思われるからだ。

 好かれすぎて殺されるってのはちょっと想像したくもない最後である。

 素直に俺がレベルを上げればいいんだが、うがー、めんどくせー。レベル上げめんどくせーんだよな。収穫すりゃいいだけなんだけどそのあとのポイント振りの作業ストレスを思うと躊躇する。

 マジでこのポイント振り、失敗すると取り返しがつかないから次元魔法取得用の魔物素材集まるまではやりたくねーんだよ。

 わかるか? 一億年ボタンでも自爆ボタンでもサテライトレーザーのボタンでもなんでもいい。ボタンが目の前にずっとあったとして、押さないで過ごすことができるか? 俺はできない。絶対に押す自信がある。

 レベルアップでポイントを得るっていうのはそういうボタンを目の前に用意するってことなんだよ。

 それにポイント振っちまったあとに、なんらかの魔物の襲撃で次元鎌鼬が全滅したらどうするよ? とかリスクも考えてしまう。

 なのでレベルを上げるのは準備を終えてからなのだ。特に現在、レベルを早急に上げる必要がない以上な。

「レベルのゴリ押しで行く前に知恵と工夫を試さないとな」

 レベル35のモンスターぐらい人間の知恵と力でなんとかしたいところであるが……うーむ、素直にちょぴっとだけレベル上げるかぁ? 隷属させやすい――というよりクーが殺しやすい物理型モンスターなら、俺のレベルを50ぐらいに上げたあとならボコってから隷属させられるかもしれないし、流石にそれだけレベル差があれば次元鎌鼬ぐらい殺せるかもしれないし。

 いや、次元魔法には物理無効の特性があるから、相性差で俺らがテイムできるようなモンスターじゃあボコられて殺されるか?

(捕獲がダメなら、育てるか?)

 育てる、と思考に至れば、俺の視線はまた別の方向に向かう。

 俺の視線の先にはダンジョン苔の小山に突っ込んでいる少女型モンスターが見える。

 『小修道女リトルシスター』レベル5。回復魔法が使える人間タイプのモンスターだ。地面に座ってもぐもぐと美味しそうにダンジョン苔を食べているものの、傍では同じような小修道女モンスターがぴぃぴぃ鳴きながらゴブリンに連れ去られているのが見える。弱肉強食か。可哀想に。

 小修道女なぁ。回復魔法持ちはこのサバイバル生活では必須だから欲しいかなと思うものの、サーシャという本物の聖女を隷属しているためにわざわざ育てて、というのもおかしいんだよな。

 いや、人間への隷属は犯罪だから、という法律アレがあるから、テイムはそのうち切る必要があるけども。

 とりま俺とサーシャはロミジュリ中だけど次元魔法さえ取得できればサーシャを呼び出すことが可能だとわかっているので、隷属枠を消費して回復魔法持ちを育てる必要は見いだせない。まぁサーシャ。そもそも回復魔法おぼえてないけど。いつか覚えるかもだし。

 あー、んー、回復モンスターのテイム、やっぱ必要かぁ?

(わからん。うーむ、他にもモンスターっていろいろいるな)

 人間タイプは忍者みたいなモンスターや、剣士みたいなモンスターもいる。幼体なのでどれも雑魚だが。

 魔法刻印知識によれば、モンスターは人間の魔法刻印ほど複雑な特殊能力を得ることはできないが、それでも劣化魔法刻印のようなものがあるので成長させるときに新しい能力を得ることができる、とある。

 育成するならこちらでその能力取得を調整することもできるのか?

 では次元鎌鼬を殺せるモンスターを作るべきだろうか? 次元鎌鼬が使う次元魔法に干渉できるモンスターを作るなら次元魔法の取得は必須だろうが……スキルの取得のしやすさはまた別の難易度があるのだろうか。

「それでセイメイ、これからどうするの?」

「うーむ、どうしようか」

 考えてないのね、とクーが呆れた顔をする。

 なお現在俺たちはモンスターが大量にいる場所にいるため、クーの背中の黒羽の先から影魔法による矢が射出され、俺たちに近づこうとするモンスターが次々と殺されている。

 ダンジョン苔なんか食べるのは低レベルモンスターだけだからか。ここにるモンスターは低レベルばかりで、つまりはクーはここでは無双状態だった。

「テイムなぁ。連れ歩くのに便利そうなのがいればいいんだけどな」

 わらしべ作戦が終了したら即座に格上に突撃させて殺せばモンスターを処理できるものの、隷属のネックとしては、連れ歩くにはモンスターは不便だというのがある。

 強すぎるモンスターを連れてると危険人物に見られて警戒されるから都市に入るとき邪魔というのもあるが、テイムモンスターには世話の必要があるために餌の確保とかいろいろあるからだ。

 特に高レベルになると巨大なモンスターも多いし、特殊な世話をする必要のあるやつもいる。

 特にサイズが問題だ。次元鎌鼬に瞬殺されていたダブルブルとか3メートルぐらいはあったしな。

 一番次元鎌鼬を殺せる可能性が高いのがわらしべ作戦とはいえ、そんなものを隷属枠いっぱいに連れ歩くのは少し以上に問題でもある。

 もちろんそれしかないならやるしかないので、テイムさせるモンスターは慎重に考える必要はあるのだが。

 わらしべ作戦が終わったあとに生かしておくとして、次元魔法があれば遠方で飼育して、必要なときに呼び出すこともできる、か?

 ただなぁ、こういう生存競争の激しい場所に放し飼いしていれば勝手に死んでいるみたいなこともありそうだし。

(放し飼いするならアビステラーより強くないとダメなんだよな)

 あと荒野に探索に来た冒険者と殺し合いとかする可能性もあるしで悩ましい。

「なんか、いねーかな」

 強くて賢くて場所を取らなくて可能なら称号取れそうなモンスターの幼体。

 今の俺でもテイムできそうな低レベルモンスターのリストを見ながら俺は、お、とそれをダンジョン苔の山の中に見た。


 ――『無色精霊』レベル1。


 ふよふよと、そんなモンスターがダンジョン苔に齧りついているように見えた。

「精霊ってことは非実体型モンスターか。いいんじゃねーか?」


                ◇◆◇◆◇


 TIPS:人間へのテイム行為2

 人間をテイムする者は基本的にいない。

 知能の高い生物相手へのテイム成功率が困難を極めるからというのもあるが、人間を従わせるだけなら、懇願、雇用、拷問や人質などテイム以外にも様々な手段があるためである。

 なおセイメイがアレクサンドラ相手のテイムを成功させられたのは、アレクサンドラが自主的に・・・・セイメイのテイムを受け入れたためである。

 自らテイムへの抵抗を0にすれば稚拙なテイム魔法でも成功率は100%に近くなるのだ。

 そう、テイムする前から相手に対して無条件の信頼を持っているなら、それはすでにテイムしているのと同じであり、抵抗感というものは0に近くなる。

 とはいえセイメイが生まれてから一度でも嘘をついていれば、サーシャは絶対に彼を信頼しなかっただろう。

 その程度には、困難極まる前提条件があのテイムには存在していた。


 ちなみに、なぜ人間へのテイムが違法行為にあたるかと言えば、当たり前の倫理観から作られた常識的な規則だからである。


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