七話
翌日、詰め所へ入ろうとした時、中からジュリオの声が聞こえて、私は思わず足を止めた。
「――信用なんかできないよ!」
「昨日のことは聞いてるが、もう済んだことだろ。いつまでも引きずるな」
相手はソウザ隊長だ。
「そうだけど、あいつ自作の変な武器持ってるんだよ? 行動が怪し過ぎるって」
「くだらないいちゃもんを言う暇があるなら、今日の予定を確認しておけよ」
「ちゃんと聞いてくれってば! 俺は信用できないやつと一緒に仕事なんかできない」
「はあ……ジュリオ、ねたみや嫉妬もいい加減にしておけ」
「なっ、何だよそれ。俺がいつあいつに嫉妬を――」
「オリアナがご主人様に褒められたのがそんなに気に食わないのか? 一緒に働く仲間なんだから喜んでやるぐらいの優しさを見せてみろ。じゃないと器の小さい男に思われるぞ」
やっぱりソウザ隊長はジュリオのことをよくわかってるようだ。
「そ、そんなことじゃなくて、俺はあいつが怪しいって言ってんの! 嫉妬がどうとかじゃない」
「違うなら何でオリアナを無視したりする。お前は疑う以前から彼女に気に食わない気持ちがあったんだろ?」
「う……と、とにかく、俺はあいつを信用できない! あいつと組む仕事は変えてくれよ」
ジュリオは本格的に私を避けようとしてる。これ以上波風が大きくならないうちに疑念の芽は摘んでおかないと。目的を果たすためにも――私は気持ちを整えてから詰め所へ入った。
「そんなこと言われたら、こっちだって信用できないわ」
私の姿を見たジュリオは、息を呑んで真ん丸な目を向けて驚く。
「……オリアナ、いたなら入って来い。盗み聞きなんてよくないぞ」
「ごめんなさい、ソウザ隊長。すぐには入りづらくて……」
「まあ、そうだな」
ソウザ隊長が困ったようにジュリオへ目をやる。
「お、俺は思ってること言っただけだ。……お前も俺が信用できないなら、ちょうどいいな」
「ええ。その点は気が合うみたいね」
言い返すとジュリオは鋭くこっちを睨んできた。
「二人とも、喧嘩はやめろよ」
「大丈夫です。そんなことしません。私はただジュリオに聞きたくて……どうしたら仲間として信じてくれるの? 私はあなたを仲間だと思いたいのに」
「知るか。そんなの自分で考えろよ」
腕を組み、ジュリオはそっぽを向いて素っ気なく言う。
「壁のある関係のままでいいと思ってるの? これじゃいい警護なんてできないわ。ご主人様にもご迷惑がかかって――」
「そもそも、オリアナが怪しい行動をしたからだろ。新人のくせにご主人様のお部屋をのぞくなんて出しゃばったことするから」
「そ、それは、その、よかれと思って……でもたった一度のことじゃない」
「一度だって信用できないものはできないんだよ!」
「じゃあどうすれば信用してくれるの?」
「だから、俺が知るかよ!」
「それならこういうのはどうだ」
横からソウザ隊長が割って入ると言った。
「今夜は二人で飲みに行って来い」
私とジュリオは唖然として見た。
「……はあ? 何言ってるの隊長」
「飲みに行くのが、何かおかしいことか?」
「何で信用できないやつと酒飲みに行かなきゃならないんだよ」
「お前達は互いをよく理解する必要がありそうだからな。それには酒の席がちょうどいいだろ」
突飛な提案かとも思ったけど、ソウザ隊長の考えにも一理あるかも。ジュリオとの壁は話し合わなきゃ壊せそうにない。酒の力を借りて心を開くことができれば――
「いい考えだわ。飲みに行こうジュリオ」
「どこがいい考えなんだよ。お前と飲みに行ったって酒がまずくなるだけだ」
「味なんてどうでもいいじゃない。大事なのはそこじゃないんだから」
私の言葉にソウザ隊長はうんうんと頷く。
「その通りだ。酒はついでであって、重要なのはお前達が話す時間を作ることだ。オリアナは行く気があるんだから、お前も心を決めて行け」
「嫌だよ! 楽しくもない酒なんて飲みに行くか」
嫌がるジュリオにソウザ隊長は厳しい目を向けた。
「隊長命令だと言っても、行かない気か?」
「これは仕事と関係ないことだろ? 命令なんて――」
「いや、関係はある。お前は信用できないからとオリアナと組むことを拒んでる。その問題を解決するために二人で飲みに行かせるんだ。つまりこれは警護の仕事のためでもある」
「そんなのこじつけだ! 仕事の時間外なんだから、命令を聞く理由は――」
「黙れ黙れ。何と言おうとこれは隊長命令だ」
「横暴だぞ! 俺は聞かない」
強く拒否する態度のジュリオに、ソウザ隊長はにやりと笑った。
「そうか。じゃあ命令拒否をした罰に、お前の秘密の悩み事をここで話す」
「ちょっ、や、やめろ!」
「オリアナ、こいつの悩みっていうのは――」
「やめろってば隊長!」
話そうとするソウザ隊長にジュリオは慌てて飛び付き、声をさえぎった。
「……ジュリオ、罰を受けるか命令を聞くか、どっちか選べ」
にやけながら聞くソウザ隊長を見て、ジュリオは歯噛みしながら悔しげに答えた。
「ぐ、うう……行けばいいんだろ。ちくしょう!」
「初めからそう言えばいいんだよ。まったく、時間のかかるやつだ」
そう言ってソウザ隊長はジュリオとすれ違い様に、その肩をポンと叩く。
「すっぽかしたりするなよ? その時は罰を受けてもらうからな。……それじゃあ見回りに行って来る」
満足そうに笑ってソウザ隊長は詰め所を出て行った。その後ろ姿をジュリオは恨みがましい目で見送る。
「くそっ……また同じことしてきたら脅迫されたって訴えてやる」
前にも似た光景を見たけど、ジュリオは悩み事を明かしたことでソウザ隊長には逆らえなくなったようだ。強情な彼を動かすのにいい方法を考えたものだ。ちょっと気の毒ではあるけど、二人のやり取りは傍から見てると微笑ましくもある。何はともあれ、行くことを決めてくれてよかった。
そして警護を終えた夜――夜勤じゃない日は真っすぐ家へ帰るけど、今日は館の門の前で彼を待つ。さっき詰め所で着替えてたからすぐに出て来るはずだ。
「……あ、来た」
薄暗い中、庭を通ってジュリオがこっちへやって来る。その足取りはいかにも重い。
「そんなに私のことが嫌い?」
隣に来たジュリオは面倒くさそうな目で見てくる。
「……さっさと行くぞ」
そう言って一人で歩き出す。この後、ちゃんと話してくれるか心配だ。
黙ったまま歩き続けた先にあった大衆酒場にジュリオはやはり黙って入った。酒場は数軒あったが、その中でも安価で飲み食いできる店を選んだようだ。私もソウザ隊長とカミロに誘われて何度か来たことのあるところだ。まったく知らない店よりはいいか。
明るい店内にはすでに酔客がいて、あちこちの席から大声で騒いだり笑ったりする声が響いてる。まあ、いつもの光景だ。その間を縫ってジュリオは壁際の空いた席に座る。私もその向かいに座った。
「いらっしゃい。何にする?」
女性の給仕が来て注文を聞いてきた。
「私は葡萄酒を。ジュリオは?」
「同じでいい」
投げやりな答えを聞いて私は葡萄酒を頼んだ。給仕は料理を勧めてきたけど、こんな空気で何か食べる気にはなれない。それを断ると給仕は残念そうにしながら下がって行く。そして一分もしないうちに再び来ると、机に葡萄酒がなみなみと入ったコップを二つ置き、ごゆっくりと言ってまた下がって行った。
「さあ、飲みましょう」
コップを手に取り、私は葡萄酒を一口飲む。まずくはないけど美味しくもない。安価な酒だからこんなものだろう。ジュリオも仕方なさそうにコップを取ると、一口、二口と飲む。
「ここの酒はいつまで経っても美味くならないな」
と文句を言いながらも三口目を飲み、コップを置く。お互いに一息つき、黙る。他の客のやかましい声だけが通り過ぎて行く。……どう話を切り出そうか。待ってても向こうから話すことはないだろうし――
「えっと、ジュリオは確かこの街に引っ越して来たのよね。その前に住んでたところはどこなの?」
これに怪訝な顔が向いた。
「そんなこと聞いてどうするの? 興味なんかないくせに」
「興味はあるわよ。ジュリオがどんなふうに暮らしてたかとか……仲を深めるにはお互いのことをよく知っておかなきゃ。そのために飲みに来たんだから。ね? 話してよ」
眉をひそめて拒絶でもしそうな表情を浮かべてたが、脳裏にソウザ隊長でもよぎったのか、溜息を吐くと諦めたように口を開いた。
「……ずっと東のど田舎だよ。地名を聞いたって誰も知らないようなところ」
「いいところだった?」
「自然はな。でもそれだけだ。他には何もない」
「何もなくても、幸せに暮らしてたんでしょ?」
「まあ、そうだな……」
「その田舎と、この街、どっちが暮らしやすい?」
「そんなの、中身がまったく違うんだから比べられないだろ」
「強いて言うならよ。どっち?」
ジュリオは険しい顔を伏せてしばらく考え込む。
「……昔のほうが、もっと素の自分で暮らせたかな」
「今は素の自分じゃないの?」
「ここにいると、毎日気を張ってる気がする……警護の仕事は当たり前だけど、それ以外の時でだ」
「何で? まだ街に馴染めてないとか?」
「どうだろな……」
そう言うとジュリオは、ハッとしたようにこっちを見た。
「俺ばっか話させてずるいぞ。オリアナも自分のこと話せよ」
「え、うん、いいけど……」
詳しく聞かれたら嘘でごまかさないと。
「お前はこの街出身だったな。金持ちの出……じゃなさそうか」
「ええ。どちらかって言うと貧しいほうよ。母さんは物心ついた時にはいなかったし、ずっと父さんと二人きりで暮らしてきたわ」
「そ、そうだったのか。意外に苦労してそうだな……」
「生活での苦労はそんなに感じなかったけど、父さんとの剣術の稽古は苦労したわ。厳し過ぎて何度も逃げたい気持ちにさせられた。でも大事なものを守るために教えてくれてるって知って、それからは真剣に取り組めたの。警護人になれたのは全部父さんのおかげね」
「厳しいって、どれぐらい厳しかったんだ?」
「素振りは毎日千回。熱があろうと手の豆が潰れようと休めなかった」
「もし休んだら?」
「三日間食事抜きで野宿させられる。その間も素振り千回を怠けたら、木に吊るされて水をかけられて棒でお尻を叩かれるの。あの時は地獄にいるのかと思えた」
「お前、そんなことされて剣術を覚えたのか? もうそれ虐待だろ」
「子供は虐待なんて知らないもの。だから耐えて言うことを聞くしかなかったのよ。でもそのおかげで剣術も体術も覚えられたわ」
ふとジュリオを見ると、口を開けて唖然とこっちを見てた。
「……父親のおかげって言うけど、そんなことされてよく感謝できるな。父親のこと、今も好きなのか?」
「ええ、もちろん……父さんのことは大事だし、好きよ」
その言葉が滑らかに言えなかった自分に私は気付いた。大事だと思ってることは間違いないけど、それは好きかどうかとは関係ないのかもしれない。あれだけの厳しさを受けて、私は知らないうちに傷を負わされ、父さんを無意識に拒否してるのだろうか。
「そっか……オリアナがそんなふうに剣術を覚えてたなんてな。もっと英才教育的なのかと思ってた」
「ジュリオは? 剣術をどこで覚えたの?」
「田舎に住んでた、引退した剣士に教わった。五十過ぎのじいさんで、暇つぶし感覚で近所の子供達集めて教室を開いてたんだ。そんなの珍しいから、俺と兄貴で興味本位で通ってたんだけど、そのうちのめり込んでさ。めきめき腕が上がったよ」
「へえ。お兄さんと一緒に覚えたのね。楽しかった?」
「まあな。先生は褒め上手だったから、褒められたい一心で通ってたところもある。でも先生は俺より兄貴のほうばっかり褒めてさ……そこだけはつまんなかった」
「お兄さんは優秀だったの?」
「ああ。動きも剣の振り方も、俺より何倍もよかった」
「じゃあ仕方ないじゃない」
そう言うとジュリオは拗ねたように口を少し尖らせた。
「そりゃそうなんだけど……俺だって頑張ってたんだ。だけど周りは兄弟だからって兄貴と比べて、弟の俺は出来損ないみたいな目で見てきて……歳の差があるんだから、上手くできないことがあって当たり前なのにさ」
「お兄さんは今も剣を?」
「いいや、親父の仕事を手伝って、剣とは無縁になった」
「ジュリオだけが続けて、こうして警護人になったのね。よかったじゃない。比べられることがなくなって」
「そうでもない。兄貴と話すと、何かにつけて剣は俺のが上手かったって未だに言ってくるんだ。俺が弟である限り、兄貴の腕は追い抜けないんだよ」
「そんなことない。ご主人様の警護人に選ばれて、立派に仕事をしてるじゃない」
「どうだかな。ご主人様が襲われたあの時、俺は男に気付かなかったけど、お前はいち速く気付いて攻撃を防いだ」
「あれは、ジュリオは馬車の扉が視界をさえぎってたから――」
「そんなの理由にならない。警護人ならどんな状況でも周りを確認しとくべきなんだ。でも俺は馬車に乗るご主人様にだけ気を取られてた。その後、お前に言われて初めて男の存在に気付いて、内心呆然としたんだ。俺はやっぱり出来損ないだって。ずっと兄貴に言われ続けるんだ……」
葡萄酒をぐいっと飲むと、ジュリオはうなだれた。
「もう過ぎたことじゃない。ご主人様もご無事だったんだし、悔やむようなことじゃ――」
私の言葉にジュリオは顔を上げてこっちを睨んできた。
「俺は悔やんでるんじゃない。俺は……俺は……」
「……何?」
私が見つめると、睨んでくる青い目は泳ぎ始める。
「教えて。悔やんでるんじゃないなら何?」
迷う素振りをみせながらも、その口は開いた。
「……もう、嫌なんだよ。誰かと比べられるのは。俺は頑張ってるのに、すごいやつが側にいると、周りはそいつと比べ始める。で結局、俺ができないやつにされるんだ」
「もしかして、私と比べられたくないから、あんな態度を……?」
聞くとジュリオは葡萄酒を一気に飲み干し、コップを叩き付けるように置くと、勢いに任せた口調で言った。
「そうだよ。後から来た新人が、見事ご主人様をお守りして、俺の立場がなくなるって思ったんだよ。そしてその通り、感謝されたのはお前だけだった。警護の新人にも追い抜かれるのかと思ったら、ものすごい焦ったし、正直、嫉妬も感じたよ」
「警護はご主人様をお守りした人がすごいわけじゃないわ。仲間と協力して、結果私が攻撃を防いだだけで、何かが違えばジュリオが私の立場になってたかもしれないし、だから誰か一人がすごいんじゃない」
「でもオリアナだけがご主人様に褒められたんだ。隊長も評価してた。俺よりもな。そういうことなんだよ」
ジュリオはコップに手を伸ばすが、すでに空にしたことを思い出して不機嫌そうに鼻を鳴らした。「……私の、飲む?」
自分のコップを差し出してみると、ジュリオはすぐにつかみ、口へ持って行く。ゴクゴクと飲んでプハーと豪快に息を吐く。
「実戦形式で勝負を挑んだのは、俺がお前より強いんだって示したかったからだ。あれはちょっとやり過ぎたと思ってるよ。あの時の俺は頭に血が上ってたんだ。悪かったな」
まさか謝ってくれるとは思わず、私は驚いてジュリオを見つめた。……もしかして少し酔ってる? 酒にあまり強くないのだろうか。
「それと、ご主人様のお部屋へ侵入した疑い……本当に疑ってたわけじゃないんだ。お前を怪しいと言って疑いの目を向けて、周りからの評価が下がればいいと思って……それを理由に俺から遠ざけて、比べられないようになればって……最低だろ、俺。嫉妬して、陥れようとして、自分のことしか考えてないんだから」
自嘲してジュリオは葡萄酒を飲む。
「正直に言ってくれたんだから、最低じゃないわ」
むしろ皆を裏切ってる私のほうが最低なんだろう……。
「だけど、ジュリオは私と初対面の時から冷たかったわ。あれはどうしてなの?」
「それは……なめられたくなかったからだよ」
「新人に大きな顔をされたくなかったってこと? 私ってそんなふうに見えた?」
「いや、でも人は見た目なんかじゃわからない。この街に来たばっかりの頃、働き先で田舎者って馬鹿にされたことがあったんだ。それから仕事を辞めるまで、陰でずっと笑われ続けた。だから、最初が肝心だと思って、馬鹿にされないように、日常的に虚勢を張るのが癖になってたんだ……」
尻すぼみに言うと、ジュリオは上目遣いにこっちを見た。
「笑いたきゃ笑えよ。子供っぽいやつだって」
「自覚してるのね」
「隊長に言われたんだよ。それさえなくなれば、もっといい警護人になれるのにってさ。でも性格なんてそう簡単に変えられるもんじゃない」
「性格は変えられなくても、相手への意識は変えられるでしょ?」
ジュリオはじっと私を見る。
「……オリアナは、こんな最低なやつを仲間だと思いたいか?」
「あなたは最低じゃない。周りを気にし過ぎて自信がないだけよ。そんな声に惑わされないで。大丈夫。私との勝負に勝ったんだから、自分を信じて」
「あれはまともな勝負って言えないだろ」
「確かに、ただの喧嘩みたいなやり方だったけど、でも私がジュリオの腕から抜け出せなかったのは事実よ。私より力が勝ってたってことじゃない?」
これにジュリオはしばらく黙ってたが、ふと微笑むと言った。
「……ふっ、何か、お前に必死に励まされるのは恥ずかしいよ」
「わ、私は思ったことを言ってるだけだから。別に無理に励ましてるつもりは……」
「ありがたく聞いておく。それで、父親の厳しい鍛練を乗り越えたお前に勝ったってことを自信にするよ。……やっぱ隊長の言うことは正しいな。酒を飲みながら話すだけで、こんなに胸のモヤモヤが消えるんだから」
「じゃあ、私のことを仲間だと思ってくれるの?」
「オリアナは初めから仲間だった。だけど俺が認めないふりをしてただけなんだ。馬鹿な虚勢と嫉妬でさ。はあ……気持ちを全部ぶちまけたらすっきりした」
笑顔になったジュリオは葡萄酒をグビグビと飲む。
「……ふう、さっきより酒が美味い気がする」
「もう一杯注文する?」
「そうだな。あと何かつまみも頼もう。小腹が減ってきた」
「わかった。……すみませーん、注文を――」
それから私達は一時間ほど飲み食いしながら他愛のないことを話し続けた。酒が入ってるせいかジュリオはますます饒舌になり、おかげで仲を深めるいい時間を過ごせた。
翌日も館で顔を合わせたジュリオは笑顔を見せてくれた。私達の間の壁は完全に取り払われた。たった一晩での変化にソウザ隊長は驚いてたけど、同時に一安心して喜んでた。ジュリオと二人での警護も、声を掛け合って上手く協力することができた。もう余計な問題は消え、静かな環境に戻った。これで本当の仕事に集中できそうだ。でも執務室を調べるのは控えておこう。かけられた疑いは消えたけど、また万が一目撃でもされたら本格的に疑われかねない。ほとぼりがさめたら、あるいは別の方法で捜査情報を得ることも考えておこう。
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