第44話

 商業ギルドへ行ってから1ヶ月が経った。


 女性用下着の販売は思った通りに盛況になった。

 各商業ギルドで魔物素材の加工・布の加工・ボタンの加工を振り分け庶民や冒険者を中心に大人気商品となったのだが……


『魔物を身に付けるとは神への冒涜』

『魔物は穢れた存在だ』


 との声も上がる様になって来ていた。


 あれから俺達の部活は『知識部』という部活を立ち上げた。

 教師の中の女性教師が下着の魅力に惹かれ顧問を受けてくれる事になった。


 そして学園の貴族子息令嬢の言動も少しずつ変わり始めた。

 上位貴族家が学園の腐敗していた部分の改革に本気で乗り出し表面上はそういった態度を取る事は無くなった。


 学園内での活動はしやすくなったが女性用下着を反対する声が教会側から出た事により

 俺達の部活動は戦闘職を目指す人が商人志望や文官志望の人を護衛するという活動になってしまった。


 来週に予定されている"ダンジョン演習"に問題が出ない事を祈るばかりだ。


 教会は治癒魔法の秘伝を数多く持つ組織で学園でも国でも治療という観点ではかなりの権力を持っている。


 ダンジョン保有数ではカーステッド帝国は近隣のワナイマ共和国に負けるけど質は悪くない。

 D~Sランクダンジョンまで各地に点在している。


 ワナイマ共和国はS~SSランクのダンジョンが合計10ヶ所ある為、武器に資源にそれはもう他国を遥かに突き放す程となっているが1番は共和国は複数の国の集まりなので文化と文化が重なり合う事による反応が良い事も魅力的だ。

 いつかは行きたい国だ。


 善神教会の総本山がある、メラス皇国は宗教国家なのに宗教の中で立場が上がれば貴族となんら変わらない扱いをされる特殊な国で

 信仰と治癒魔法の実力次第ではいきなり大出世も有り得る国だ。


 ローズティア嬢なんて実際トリプルスキルのおかげで何度も皇国から縁談が来てる。

 聖女に認定しますって勝手に認定されてるしな!

 カースド公爵閣下に直接会ったら睨まれる事間違い無しだろうな!!


 俺達、知識部の戦闘職は全員がダンジョン演習に向かうが正直人を呼ぶか迷っている。


 ダンジョン演習には生徒と教師の他に不安であれば助っ人を呼んでも良い事になっているのだが。

 ハンナを呼ぶと強過ぎるのと彼女は反射行動で魔物を倒してしまう位の達人なので正直悩み所だった。


 悩みながら戦闘職志望の今日の訓練でネロが絶好調の様子を見た俺はハンナは呼ばない事にした。


 ◇


 最近は俺の周りはホクホク顔の奴が多いぜ!!

 武器を片手に部員が笑顔で話しているのを横目に俺は今日のダンジョン演習で使う愛用の短剣と皮鎧を装備して学園の馬車に乗り込む。



 帝都には東西南北とダンジョン門の計5つがある。

 帝都のダンジョンは集中発生型で5つのダンジョンが同じ地域に点在している。


 通称ダンジョン門を抜けて馬車で1時間程でダンジョンは見えてくる。


 今日参加する人数生徒は50人って言ってたな。


 アモウ、モラ、ナサラ、ラルクの4人で1パーティーで俺とネロとカマリでもう1パーティー作って参加する。


 父上から再特訓の命令を受けたカインは参加していないとハンナから報告を受けていた。




 30分毎に1パーティーずつ入って行く。

 今日入るのはDランクダンジョンで尚且つ全20階層の内5階層までだ。


 5階層まではFランクでも入れる仕様でDランクダンジョンは5~10階層までEランクでも入れる。

 10~15階層になるとチラホラDランクの魔物が出る為一応禁止されている。


 皆、ワクワクというかウズウスしていて何かフワフワしてる感じだった。


「ネロ、カマリ?油断はダメだぞ?」


 俺がそう言うと2人共ハッとした顔になりスーハースーハーと深呼吸した後

 周りを見渡し苦笑いし始めた、自分達の状況を認識したのだろう。


「ごめんねケビン。完全に空気に飲まれてたわ」


 カマリがコクコク頷き同意していた。


「じゃあもう1回今日のダンジョン講習のおさらいしようか?」


 今回のダンジョン講習は先に教師が5階層まで行き5階層毎に居るフロアボスを倒していて生徒は1階層から無理の無い範囲で魔物を倒して5階層まで行き

 証拠の魔物の核を教師に見せて終わりだ。



 そう確認しあうと周りに誰も居なくなったので俺達の番だ。

 今回のダンジョン講習はSクラスからスタートしてEクラスになる。

 Dクラス以下の場合は戦闘教習を受けて許可を取らないと実力不足として扱われる。


 俺達は勿論戦闘教習を受けて許可を貰っている。


 Dクラス以上でダンジョン講習に来る戦闘職業志望は成績優秀者という認識だからだった。


 可もなく不可もないと言われるEクラスがギリギリのラインらしい。



 俺達3人はカマリを先頭にネロ、そして俺の順番に

 岩に出来た洞窟の穴に向かって歩き始めるのであった。


 一瞬の暗転の後、歩き続けると少しずつ周りが明るくなりThe洞窟型ダンジョンに入ったのであった。


 陣形は簡単!

 カマリは戦闘はあまり得意ではないが斥候の様な手先が器用で慎重だからだ。


 ネロはオールラウンダーの為だ。

 俺は魔法タイプの完全に後衛に徹する為だった。

 カマリが手信号でストップをかけた。


「3匹ね」


 俺はついつい呟いた。

 カマリの手信号は分かれ道の右から3匹か3人がこちらに向かって来てるという事。


 しばらく待つと俺やネロの耳にも音が聞こえて来た。

 俺はいつでも魔法が撃てる様に魔力循環を始める。

 ネロも少し剣を鞘から抜きすぐに戦える様に待機した。


「グギャグギグャ」


 どうやらゴブリンさん御一行が来てる様だ。

 カマリもゴブリンと判明して少し気が緩んでいるが気にせず

 姿が見えた瞬間にネロと一緒に瞬殺した。


 切られたゴブリンは粒子に変わりその場には魔物の核となる魔石が置いてあった。

 このダンジョンが講習に使われる理由はこれだ。


 解体やスプラッタが苦手な生徒でも倒してしまえば魔石とたまに出るドロップ品になるのであれば忌避感は薄れるだろうという配慮だった。


 順調に行っていたのだが……


「なぁ、ネロ、ケビン静か過ぎないか?」


 カマリが立ち止まり不安そうに俺達に話しかけて来た。


「うーん簡単だから皆先に行ったんじゃない?」


 俺は心配性だなぁと笑う


「だよね、ゴブリンとかスライムなら軽いケガはあっても死にはしないだろうさ!」


 ネロもケラケラ笑い俺達は5階層への階段を見つけ降りて行き突然突き飛ばされた。


「痛っ!?」


「ケビン!ネロ来んにゃギャピッ」


「は?」


 俺はそんなカマリの焦った声とその光景を見て軽い反応しか出来なかった……


 視界がゆっくり動く、苦痛に満ちた顔をしたカマリの頭が横に飛んで行くのを見ながら

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る