第5話


 父上の執務室に連れてこられた俺は目の前に砂糖菓子とクッキーを出されて

 さぁ吐け全てをと促されている様だった。



 ふっ、しかし甘い。

 激甘だよこの砂糖菓子、ただの砂糖丸めただけだもんね!

 つらっ、クッキーも甘すぎる。


 しれっと、俺はポケットから魔法の粉を出しクッキーにかける。


「む? ケビンよ何をかけた?」


 いや、そこは書類と報告書に目を通しててくれよ!!


「はぁ、塩です。父上も食べてみます?

 甘いのがキツ過ぎるこのクッキーに塩を少しかけることで甘味が抑えられ

 しかも塩味が際立ち美味しいのですよ?」


 父上は半信半疑といった感じで食べると美味しかった様だ。


「これは!!パーティーで出せれば人気が!」


「いや、塩かけないと美味しくならないクッキー作るより

 甘味を抑えたクッキー作れば良いじゃないですか?

 だって甘すぎるから苦手という人の方が多いのですから。

 紅茶と一緒に飲んでやっと食べれるお菓子とか食への冒涜ですよ」


「うむ、しかし……」


「父上は武官ですよね? なら美味しいクッキーがあれば

 行軍中の非常食代わりにもなるはずですよ?

 甘さを控えて塩を振れば塩味とエネルギーどっちも取れて

 歩き続けの状況での食事としては硬い干し肉に顎を疲弊させながら歩くよりマシですよ」


「ケビン……お前、話をそらそうとしてるな?」


 え? ここで?


「何でそうなるんですか? 俺、今すごく良い意見言った気がするんですけど!」


 そこで父上は両手を合わせてパチンと音を鳴らした。


「そう、そこだ。自分の戦闘力向上と自分の生活環境の向上。

 知識の仕入れにしか興味が無いお前が軍や戦闘戦術の意見を言う。

 これがそもそも違和感があり過ぎる」


「チッ流石、父上だ……」


「さぁ!その道具をサブを殺そうとしてまで守ったのだ。気になるだろう?

 本は頭の中に入っているのだ、本気を出す程に守りたかったのは

 その道具の形かアイディアどっちかと思っている」


 俺はガックリと肩を落とした。


「父上、まず1つ聞きたい事があります!それが聞けないと話せません。

 はっきり言いましょう自分の指針を啓司した神に誓ってください」


 おぉ!父上の顔が引き攣ったぜ!


 この世界で自分に指針を教えてくれた神に誓う行為は最大限の秘密を今から明かしますよ?

 本当に話さないと誓えますか? って意味だからな。


「うむ、良いだろう」


 その返事が聞けた時点で俺はそろばんもどきを机の上に乗せる。


「これ真似しようと思えばすぐ真似出来ると思いません?」


 父上はそろばんもどきを手に取ると裏返したり立ててみたりした後頷いた。


「使い方を知られるとこれ滅茶苦茶人気商品になるんですよ……どうにかなりませんかね?」


 目を見開き驚く父上。


「そんなにか?」



「そんなにです。ちなみに情報を黙っていたのは洗礼式で神からオリジナル商品兼

 今の所世界でただ1つだけだと知識の神から教えて貰ったので必死だったのです」


 父上は少し悩んだ後ハビスを呼んだ。


「ご当主様どうなされましたか?」


「うむ、商業ギルドに向かいたい」


 ハビスは少し面を食らった様だが


「かしこまりました。準備が出来次第お呼び致します」


 すぐに立ち去った。


「真似出来ない方法があるのですか?」


 俺は未だに何故商業ギルドに行くのか分かってない為に質問をしてみる。



「商品の説明は商業ギルドに行ってからで良い。

 商業ギルドには商品に魔法術式刻印という通称魔術刻印という技術があってな?


 それが無い商品を通報すると賞金が出る程の厳しい規律があるのだ。

 それを入れることが出来るかどうかの審査を受けて受かれば保証契約という制度と魔術刻印で商品の価値を守って貰えるのだ」


 へぇ。この世界にも特許みたいな仕組みがあり

 しかも魔法術式刻印なんて言う特殊な技術で商品を守るなんてすげえな……


「素晴らしい仕組みがあるのですね? しかし結構審査基準が難しいのですか?」


「ん? 知識の神が今の所、この世界に唯一の商品と言ったのだそれなりに価値はあるのだろう」


 あ、全ては俺のプレゼン力次第の様だ。


 頑張ろう。

 俺と父上は呼びに来たハビスを伴って馬車に乗り商業ギルドへと向かうのであった。




 クロス伯爵領主館があるこの街は中々賑わっているがやはり衛生観念が低く汚い。


 俺は平民になる時までにここを改善出来たら隆盛を極めるのでは無いかと思っている。


 貴族にも衛生観念等ないが見栄や見栄えの為の綺麗さが

 たまたま病対策に繋がってるに過ぎない。


「父上!街は汚いですね? 書庫室の5番目の本棚の上から4段目の右から37番目の本。『街の汚さと健康の関係性』は読みましたか?」


 勿論読んだこと無いのは知っている。


 クロス伯爵家は数代おきに知略の武官が生まれることもあり書庫室に本が多いが


 政治に関しては興味が薄く、軍内部で行軍中に起きる病調査の為に入手したであろう本なのだから。


「ん? 読んでないな。それが何か関係あるのか?」


「父上。その本には街が汚いと虫や小動物が蔓延り病を振りまくと書いてありました。


 街はなるべく綺麗にした方が病にかかる確率が減るのですよ?


 病が減ると、働く人が増えて結果税収が上がるかもしれませんし


 父上も俺も綺麗な部屋で勉強や仕事、生活するのは気持ちが良いですよね?」


「あ、あぁそうだな」


「気持ちが良ければ仕事の効率も上がります。

 クサイ臭い嗅ぎながら仕事するのと周りのお店や料理店からの匂いで仕事をするのはどちらが良いですか?」


「そういうことか……何か案があれば教えてくれ。ケビンは我々とは違う視点を持っている。

 私では気付けないことをお前が出してくれるなら実践してみて効果を確かめてみよう」


「あ!父上あくまでも俺の発案では無く俺が読んでいた本が気になって父上が出した案でよろしくお願いいたします。

 俺の株が上がれば更に母上と義母上のギクシャクが増えますよ?」


「はぁぁぁ。剣バカの私が出せる案なのか?心配だ……」


 はい!そこ!ハビスよ、可哀想にという顔をして甘やかさないの!

 ハビスの横で父上は頭を抱え呟いていた。


「父上!カインにはこういう本を読みなさいと渡せば良いでしょ?

 #知り合いに勧められた本__・__#だって言えば良いんですから

 なので俺が政治に関係するであろう役立つ様な本を集めておきますから」


 そんな話をしていると馬車が止まった。


 扉が開き目の前には領主館より少し小さい位の建物があったと言うよりこの建物知ってるわー……


 俺は背後をチラッと見るとそこには剣と杖が盾の前でクロスしている看板が掲げられている。

 あれは冒険者ギルドだ。


 俺は冒険者ギルドへ何回もお忍びしてるので見つからない様に

 顔見知りにバレない様にさっさと商業ギルドへ入るのであった。

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