第2話


 現在の帝国には


 2公爵4侯爵4辺境伯16伯爵32子爵64男爵家がある。


 まぁ数年に1度男爵家は起こり潰れを繰り返す。

 子爵家と男爵家は常に争っている。


 いがみあってるのでは無く、ちゃんとしないと降爵又は取り潰し等、普通にあるからだ。


 領地を持っているのは

 2公爵2侯爵4辺境伯10伯爵25子爵42男爵となっている。


 他の貴族家は何か成果を成して爵位を貰った家か

 文官として帝城勤務となっている人達だからだ。


 つまり高位貴族の2侯爵、6伯爵は大臣職に着いて居る人達になる。

 基本的に低位貴族で大臣にはならないし就任の際に爵位を上げて貰える。


 今は宰相が皇族の人で、大臣を取りまとめる総理大臣を侯爵が務めている。

 皇族の人達は英才教育の賜物あってか優秀な人物が割かし多いらしい。


 まぁ、魑魅魍魎跋扈する帝都内で生き残った人々だ。

 裏の顔なんて俺達には絶対見せないし揉み消しているだろうけどね。


 今回参加している人数は138人で皇族ならび高位貴族は

 皇族が2人、公爵家1人、侯爵家1人、辺境伯家3人、伯爵家18人だ。


 低位貴族は113人参加した事になる。


 俺達が入場する少し前から洗礼式が始まった様だ。これが面倒臭いのだ。


 低位貴族達は5人1組や人数が多い年は10人1組とまとめて行われるのに

 高位貴族は1人ずつ行われるのだ。

 教会の司祭や司教って高齢のイメージあるけど大丈夫なんか?


 まぁ、今年は皇族が来ることが決まっているので

 枢機卿又は教皇が来る可能性もあるらしいのでこんなにも珍しく人が来てるのだ。


 領地持ちの低位貴族は本来、来ないのに……

 待合室にカインと2人で入ると気合いの入った子爵令嬢や男爵令嬢が数多く居た。


 ほほほ、可哀想です。

 無理して宝石を付けたプラス過度な化粧と香水のおめかしをさせられた子供達。


 案内の人に声をかけた。


「待合室の席は伯爵家の場所なら自由ですか?」


 案内のシスターは笑みを浮かべ頷き肯定したので

 後ろを見ると緊張と臭いと視線で気分を悪くしたカインが居たので

 窓際の席に行き窓を全開に開けた。


「大丈夫かカイン?」


「くちゃい……」


 涙目で鼻を摘みそう言うカインについつい笑ってしまった。


 俺達が入って来てから次第に臭いが薄くなっていることに

 疑問を感じた俺は周りを見渡すと案内役だったシスターがすごく自然に


「人が集まると空気が悪くなり体調を崩される方がいらっしゃいます。

 なので新しい空気を取り込んで深呼吸しましょう。

 緊張されると更に体調が悪くなりますからね」


 と言いながら窓を開けて換気していた。

 なんと言う気配り。すばらです!


 まぁ、俺達が言わなかっただけでこれから来る高位貴族の子息令嬢達が

 ボロカスに言わない様に配慮した可能性もあるけどな。


 まさか高位貴族の子供の控え室入場の最初が俺達だとは思いもしなかった。


 俺は魔力操作の訓練を暇潰しに行い1時間程すると

 待合室に居た貴族子息令嬢達は半分となり高位貴族の子息令嬢達も待合室に入って来た。


 これよこれ。

 流石に高位貴族達は分かってるな。

 令嬢達は過度な装飾では無くナチュラルメイクかつ

 ワンポイントのみ高価な装飾品をしていて気品があった。


 ほれ見ろ、カインなんて先程から釘付けだ。


「あら? 隣よろしいですか?」


 そう声を掛けてきたのは明らかに伯爵家以上の令嬢だった多分。

 カインよ、ぽっとなっとる場合か!

 仕方ないなぁ……


「えーっと、こちら伯爵家の席用となってますから

 案内役に指示を仰いだ方がよろしいかと?」


 ふふふと上品に笑う令嬢。

 本当にどこの令嬢なんだよ!?


「あら?こんなに席が空いているのに席を爵位で分けるなんてそんなの勿体無いですわ!」


「そ、そうですか。カイン自己紹介」


 そこでカインははっとなった様で立ち上がり礼式を執る。


「私はカイン・クロスでございます。以後お見知りおきを」


 うむ、綺麗な礼だ。完璧なマナーだな。


「あら? ご丁寧にありがとうございます。私はローズティア・カースドです」


 俺は名前の家名だけを確認して気配を消してトイレに向かった。




「ふう、まさか公爵家令嬢とはな。俺は絶対話したくない」


 俺はトイレを出るとばったり父上と出会した。


「ケビン待合室に居なくても大丈夫なのか?」


 少し心配そうに見てくる父上に


「まだ大丈夫ですよ。丁度カインのついでにカースド公爵家令嬢に話しかけられた時に

 逃げて来てここに居るのですから!」


 デーンと効果音がなりそうな位胸を張りポーズをとってドヤ顔をする。


 父上は頭が痛い様だ。


「どこの貴族の世界に公爵家令嬢に話し掛けられて

 面倒臭がって逃げ出す子息が居るんだろうなぁ……」


 遠い空を見つめる父上に言ってやりたい『ここにおりますぜへへへへー』と


 しかし怒られるのは目に見えた結果なのでここは口を紡ごうではないか!ハッハッハー!


 遠くて微かに『伯爵家の皆様ー』という声が聞こえた。


「父上、呼ばれたようですので行ってきますね」


 そう言って、俺は待合室に戻ると丁度伯爵家の子息令嬢達が並び始めた所だった。


 俺はカインが居る前に行き何事も無かった様に並ぶ。


「ケビン酷いよ置いてくなんて!」


 俺はニヤリと笑い


「ローズティア嬢に見惚れるお前が悪いっ!

 そして俺にはまともに話せる自信はない!」


 少し疲れた様子を見せるカインだったが俺が居なくなった言い訳を考えるのに

必死だったんだろうと勝手に予想したので無視だ!


 俺達は1列に並び案内役のシスターに先導されて大きな扉の前で待機する。

 この扉が開かれた後に1人又は家ごとに入って行ったりするのだ。


 20分程経った時、俺の番がやって来た。


 中から『ケビン・クロス入場』と声がかかったので俺は自然体でそのまま入場した。


 ピリッとした視線が俺に刺さるが複数の人がすぐに興味を失くした様で視線が途切れた。


 1番前のステージに居る#多分、枢機卿__おじいちゃん__#の所までそれなりにゆっくり行って礼を執る。


「ケビン・クロスよ。神に5歳の報告を致しなさい神への祈りを始めよ」


 俺は目の前にある水晶を触り目を瞑り心の中で祈る。


『努力が実を結ぶ様な、そして色々な事に手を出せる

 成長戦略を組みたいのでそんな指針をください』


 何秒たっただろうか? 周りの声や気配が感じ取れないので俺は目を開けると


 そこには1人の青年がたっていた。


「ふむ、"今は"ケビンなる者よ。お主の願い聞き届けた。

 お主が心配してた使命など無いから好きなだけ努力と研鑽を忘れぬ様にな」


 青年は一瞬で俺の目の前に立つと掌を額に置いた瞬間俺の体が光だした。


『ふむ、成功だな。だがしかし、俺のことを忘れてるとはいい度胸だな!』


 ちょっと態度の変わり身の早さに俺はギョッとしていたが……

 青年の横にいる、女性の秘書がコソコソ話をしてると


『あ!やっべ俺かな? 俺の説明不足? マジで? はぁ~面倒臭っ

 まぁ彼に説明した所で予想した通りだったって言われるからええやんもう。

 んん"ぅ!あーあーよし、マイクテストOK!


 ケビンよ今、お主に渡した力はお主の努力で天才鬼才変人奇人何にでもなれるが……

 努力をしなければただの穀潰しに終わる。


 存分にこの世界を楽しむが良いそれが我から与える使命とする』


 俺は変わり身の早さであったり、面倒臭がりな1面を見て

 この神と仲良く出来るわーって直感で感じた。


『最後に何か質問は?』


「あ、神様の名前を教えてください。大聖堂では女神のウェスタリア様を奉っているので貴方の様な男神は知らないのです」


 パァっと明るくなった青年は口調をいきなり崩し始めた。


『あ!そっか!転生者は基本的に気に入った人が担当者になるからね、俺の名前は知識の探求と魔法の神エストだよ!

 君は前世でも飽きるまで興味を持ったことはとことん突き詰めていく姿に感銘を受けて俺が担当になったんだ』


 俺はそこで笑顔になり


「神エスト様、既にご存知とは思いますがケビン・クロスでございます。

 私を指名した事については大変光栄でございます。

 選ばれた神の名前いや、なんの神であるかに恥じぬ様に研鑽を積んでいこうと思います。


 ふぅ、ってことで真面目パターンはここまで。


 何か最初の雰囲気だと手違いがあったっぽいけどそこは気にしない。

 エスト様に1つ聞きたい、俺が作ったそろばんもどきはこの世界に存在しますか?」


 エストはニカッと歯をみせ笑みを浮かべると


『まだないぞーそもそもこの世界の人間はスキルに頼ってばっかりなのさ!

 だからバンバン作ってねー!

 あ!そろそろ時間だね!また15歳の時に会おう!目を瞑って』



 俺は言われた通り、目を瞑っていると周りの気配や少しの声が

 聴こえたので目を開けると枢機卿が微笑んでいた。


「無事指針は掴めましたかな?」


 この確認も事前通りだな。


「はい。確かに示していただきました。これから精進していきたいと思います」


 そう言って再びお辞儀をして来た時とは逆側の袖の方へと

 歩いて行き再び待合室へと向かったのであった。

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