第14話私が一体なんなのよ

「ベルンさん、ここのお店って何かスイーツとかも出していたりしますか?」




「ごめんね。うちのお店では甘いものは出していないんだ。それにこの辺りのお店では、甘いものを出しているところがないんだよね。この辺だと砂糖は貴重だから」




「そうなんですか……」ガッカリ……。




「ああ、でもシズクにならきっと何とか出来るんじゃないかしら?」




「え? どういう意味ですかルイーダさん?」




「だってシズクってそうなんでしょ? ねえアンドラちゃん」




「む? ああ、そうじゃな。シズクはそうであるのう」




いや、そうとは一体何です……。




「どういうことです?」




「まあ、そのうち分かることよ。多分向こうから会いにくると思うし」




「? ますます分からないのですが……」




「それより、甘いものじゃ。我も久方ぶりに食べたいのう」アンドラさん見かけによらず甘いもの好きなのかしら?




そうだなあ。


この辺だと砂糖は貴重ということらしいけど、違う町ならあるのかな?


でも違う町に行く手段もどうするかだし。


なら砂糖の入手をどうするかよね。




「向こうからこっちに持ってくるのが早いんじゃないかな?」優斗さんの声だった。




「ああ、そうですね。そのほうが早いか」




「こっちに持ってくるってどういうこと?」ロン君の不思議そうな顔。




「うーんまあ、遠いところから運んでくるってことかなあ……」




「ああ、そういえばシズクさんは旅商人なんだもんね




「あはは、そうなのよ……」




異世界からこっちに砂糖を持ってくるんだよ。とは言わない。


私が異世界の人だとは秘密にしておきたいから。




「じゃあ、そういうことでお願いして良いかしら」




「頼んだぞい」




「はーい、頼まれました」




「僕もこっちに来るときに運ぶの手伝うよ」優斗さん優しい。




「ありがとうございます」




「ねえ、シズク。もし良かったらでいいんだけど、何かこっちにはない珍しい食べ物とかを持ってきてくれないかしら?」ルイーダさんが「お願いします」と言いたげなポーズをとっている。




「我も頼みたいのう、出来れば何か辛いものが良い。それと美味い酒が欲しいのう」アンドラさんって辛いものもお好きなんですね。お酒も好きそう。




「急になんですか二人とも」




「単に美味しいものを食べたいだけよ。それにシズクならなんとかしてくれるでしょ?」




「そうじゃ。お主ならなんとかなるであろう」




「いやいや、だから私にそんな期待されても……」




「まあ、良いんじゃないかな。僕もこっちにくるときに運ぶのを手伝えば良いだけだし」




「優斗さんがそう言ってくれるなら……まあ。その代わりお代金はちゃんと頂きますからね」




ルイーダさんとアンドラさんの二人がギクッといった顔をした。


さてはこの二人……。




「もしや二人ともお金持ってないんですか?」




……二人がどこか遠い目をしている。




「いや、あの、ほらつけとかで……」




「ダメです」




「そこを何とか……」




「ダメです」




「……」




「我からもどうか頼む。こう見えて我、文無しなのじゃ」アンドラさんが胸を張ってそう言い切った。


文無しのドラゴン……。




「じゃあまず、私たちで冒険者の仕事とかしてお金を稼ぎましょう」私も実戦形式で魔法の特訓とかしたいし。




「そうねえ、それが良いわね」




「うむ。我も異論はない」




「じゃあ決まり」




「それは良いんだけどさ、多分だけどこの二人がいれば、大抵のモンスターとかはすぐに片付いちゃうよ」その通りだわロン君。




「確かにそうよね。ルイーダさんはめちゃ強いし、アンドラさんも戦っているところはみてないけど、ドラゴンだから勿論強いんだろうし。そうなると私とロン君と優斗さんの三人は何もすることがないわね」




「じゃあそういうことなら、あたしがみんなに実戦での戦い方を教えつつ冒険者業をするっていうのはどう? そしたらみんなの実力も上がることだろうし」




「うむ。それが良いじゃろう」




「俺も二人が戦い方を教えてくれるなら心強いな」結構武闘派ねロン君。




「僕も冒険者として実力をつけたいので、お願いしたいです」優斗さんゲームが好きっていってたから、こういうファンタジーな世界で戦うのとか興味あるわよね。




「じゃあ、お二人ともそういうことでお願いできますか」




「ええ、よろしくね」




「うむ。良かろうぞい」




――その後は、ベルンさんのお店でみんと別れ解散となった。


優斗さんと私はお店に残って眠りについたのだった。






――――


「しずくさん起きて、しずくさん……」




オフィスにいた。




「……あ、優斗さん。おはようございます……」




「おはよう、しずくさん」




「……ふあー」深く深呼吸。




「とりあえす帰ろうか」




「そうですね」




帰り支度をする。


二人でエレベーターに乗り込む。


その時に優斗さんから「ルイーダさんとアンドラさんが言っていた、『しずくはそうだから』ってどういう意味だろうね」と聞かれた。




確かに、二人は私が異世界人であることとか知らないはずだし。


一体何のことを言っているのだろう?




「ああ、そういえばそんなこと言ってましたよね。確かにどういうことだろう……。それに『向こうから会いにくるだろう』とも言っていましたよね」




「ふーん、案外、何か凄い意味が隠されているのかもね」




「まさか」




「……。でももし僕らが異世界に行けるようになったのが、たまたま起きた奇跡じゃなかったらどうする?」




「え? 考えたこともなかったですね……。でもそうですよね。私たちが異世界にいけるようになったことを、偶然で片づけられる話でもないですよね……」




「まあ、あまり深く考えすぎずに、今は異世界ライフを満喫しよっか」




「そうですね。それが良いかもですね」




エレベーターを降りて、そのまま優斗さんと別れた。




よーし、また金曜日まで頑張るぞー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る