第11話山の中のカップラーメンってもしや竜じゃない!?

「うう、ちょっと寒い」




私とロン君に優斗さん、それにルイーダさんの四人で、


スロールタウン領地内の山林にきていた。


ルイーダさんに冒険者にならないかと誘われ、あれよこれよといつの間にか冒険者登録をすることになり、優斗さんもそこに後から加わった。


それで私たちは今、この四人パーティーで初めて冒険者っぽいことをしている。




ルイーダさんの提案がきっかけだった。


「もっとラーメンを美味しく食べる為に、より良い食材で作るべきよ!」


ということらしい。


そのより良い食材を求めて山林内のモンスターを狩り、その肉を調達する。


そのためにこうして寒い中、山を登っているのだ。




「優斗さんまですみません。こうして一緒に冒険者をすることになってしまって」




「いや、全然良いよ。僕昔からゲームとか好きで、冒険者とか、なんかそういうファンタジーゲームみたいな感じのノリってワクワクするんだよね。それに異世界の良い食材を使ったラーメンっていうのも気になるところだし」




「そうなんですね。でもその気持ち分かります。私もファンタジーな世界が好きなので。でもちょっと不安ですね。危険なモンスターとかもいるだろうし」




「まあ、その辺は大丈夫じゃないかな。ルイーダさんなんか凄く強そうに見えるし。それに僕も学生時代は剣道部員でね、剣を振るのは得意なほうだから任せてよ。いざとなった時には君を全力で守るから」優斗さん腰には剣が携えてある。


ルイーダさんから貰ったものらしい。


私も冒険者を始めるにあたって魔法の杖をルイーダさんから頂いたのだった。




「まあまあ、お二人さん、安心して頂戴な。この美食家大魔術師のルイーダちゃんに全部お任せあれ。私の魔法でみんなには結界魔法を施してるから、そうそう危険な目には合わないわよ。だから男のユウトには荷物持ちとかの力仕事を頼みたいのよ」




「師匠のそういうとこダメだなあ。ユウトさんは今、レディーを守るためにひと肌脱いでかっこいいとこ見せようってとこなんだから、そういう冷めるようなこと言うなよな」ロン君のその言い方もなんかアレだけどね……。




「あらあ、そうよね。男女のこういうお熱いシーンを邪魔するつもりはなかったのよ。気に障ったならごめんなさい」




「いやいや、ルイーダさんが思っているようなお熱い関係ではないですから。ねえ、優斗さん?」




「さて、どうなんだろうね」ニッと笑った優斗さん。


何その含みのある感じ。え、優斗さんももしかして私のこと……。




「あらやだあもう、二人とも初々しいわねー。ずっと見てたいわー!」




「師匠シッ! ここは空気を読んで二人を邪魔しないようにしないと。シズクさん優斗さん、ガンバだぜ!」




「もう二人して勝手に盛り上がらないでよ!」




二人がニヤニヤしている。


と、その時だった――




ガウウアッーという獣の声が山林の中で響いた。


その声とともに現れた猫の見た目に似た獣が数匹。


凶暴そうな見た目のモンスター。


優斗さんが剣を構えて私の側に守るようにぴったりくっついてくれた。




「サーベルタイガーね」ルイーダさんがよだれを垂らしながら「淡泊な味のお肉で美味しいのよね」と言った。




「師匠もっと緊張感持って!」




「ナイスツッコミよロンちゃん」




ルイーダさんが指をパッチンと鳴らすと同時、強い光の稲妻が発射され、数匹のサーベルタイガーに直撃していった。


黒焦げとなり倒れていく。




「いっちょお終いね」


冒険者としての初戦闘あっけなく終わった……。




「ルイーダさんって本当にお強いんですね」




「まあね、美食家大魔術師の名は伊達じゃないわよ」




なんかもう最初からこの人一人で良いんじゃないかしら……。




「それよりあたしお腹空いちゃったわ。この辺で休憩にしましょう」




「本当食いしん坊だよな」




「そういうロンちゃんだってよく食い意地張るじゃないの」




「まあ、そうだけどさ。さすがに師匠ほどじゃないよ。師匠みたいにこっそり太っちゃうほどは……」




「ロンちゃん何か言ったかしら?」




「……いえ、なんでもないです」




師弟関係の怖さを見てしまった。




「あはは……じゃ、昼食の準備をしますね」




「あ、僕も手伝うよ」




私と優斗さんの二人で準備をする。


持ってきた水を鍋に入れお湯を沸かす。


ルイーダさんの魔法で薪に火をつけて貰った。




お湯が沸いたら、こっちに予め持ってきていたカップラーメンに注いだ。


そしたら三分待ってと。




「はい出来上がり。どうぞみなさん召し上がれ!」




「イエーイ! いっただっきまーす!」ルイーダさんが一番乗りで食べた。




「いただきまーす!」ロン君が勢いよく食べる。




「いただきます」優斗さんがゆっくりと食べている。




「私も頂きまーす!」チュルっとね。




「うまーい!」みんなの声がハモッた。




思った通り、寒い山の中で食べるカップラーメンは美味しいわね。




「やっぱラーメン美味しいわー! 身体もあったまるし、本当何杯でもいけちゃう。あ、あたしお代わり貰えるかしら?」


もう食べたんだルイーダさん。




「俺も俺もー!」相変わらずの食いしん坊のロン君。




「僕も余ってたら食べたいな」優斗さんまで。




かくいう私ももう一杯くらい食べたくなってきていた。




「じゃ、お湯沸かしますね」




鍋の水を火にかける。


沸いたお湯をカップ麺に注ぐ。


三分待ってみんなで食べる。


チュルチュル。




みんなの「うまいー」の声。




「こうして美味しいラーメンも食べられることだし、やっぱりシズクを冒険者に誘って正解だったわー」




「私も、まだ見ぬ未知の食材を探すのとか楽しそうなので、冒険者になって良かったかもしれませんね。ルイーダさんのおかげです」




「いえ、良いのよ食べることが好きなもの同士、仲良くしておくのに越したことはないわ」




「ふふっ、そうですね」




「ねえ、話してるとこ悪いんだけどさ……」優斗さんが顔面蒼白となっていた。




「どうしました優斗さん?」




優斗さんの見つめる先。


そこには、人の大きさなど遥かに凌駕した巨大な竜の姿があった……。

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