第6話魔法があるの!?

それはいつものように、ベルンさんのお店でお料理を食べた帰りに、町をぶらぶら歩いて散策していた時のこと。




道端に人だかりが出来ていて、その中の大道芸人らしき人たちが、何もないところにボンっと火の玉を出したかと思うと、それを手のひらの上でジャグリングするように自在に操っていたのでした。




私は思わず「えっ!?」と大きな声を出してしまった。




そんな私に他の見物客の老人から「ん? 嬢ちゃん魔法を見るのは初めてかい?」と。




「今のって魔法なんですか?」




「ああそうともよ。ごく稀に、今みたような、人智を超えた特別な力を扱える者がおるんじゃよ」




「へえ」




すごいわ!


この世界って魔法の概念があるのね。 


これはファンタジー好きな私としては燃えるわ。


例の、世界的に有名なファンタジー小説を何度も読破したことあるくらい、ファンタジーの世界が私は好きなのである。




私も魔法を使ってみたい!




「どうやったら魔法を使えるようになるのですか?」とおじいさんに聞いてみた。




「そうじゃな……。魔法の才能は生まれつき備わっている者と、後天的に会得するものとがいるが、後天的に会得するためには厳しい修行がいるという話しじゃよ」




「そうですか……」




「まあ、そうがっかりせんでも。中には突然魔法の才が開花する者もおるらしいからの。お前さんも、ひょっとしたらそのうち、魔法が使えるようになるかもしれんぞい」




「はい、ありがとうござます」




「うむ」




――その後、私はしばらく魔法を使った大道芸を眺めていたのだった。










――――


それは大道芸が終幕したのでチップを払い、もう帰ろうとした時のことだった。




「お姉さん、魔法が使えるようになりたいの?」と十歳くらいの男の子が話しかけてきたのだ。


まだどことなくあどけなさの残った顔をしていた。




「え? ああ、さっきの話し聞いてたんだね。そうなのよ。いつか魔法を使って空を跳んでみたり、なんかこうビカビカって感じの雷を出してみたりするのが夢なのよ」




「うーん、空を跳んだりするのはちょっと難しいんだけど……。さっきの大道芸人の人たちがやってたみたいなのなら、俺教えられるよ!」




「え!? ウソ? 君魔法が使えるの?」




「まあね。一応こうみえて俺、五級魔術師の魔法使いなんだぜ」




五級魔術師……の魔法使い?


なんだかよく分からなけど、魔法が使えるならなんでもいっか。




「じゃあ、その五級魔術師の魔法使い様に、ぜひ私の魔法の先生になって貰おうかな」




「ああ、いいぜ。俺、ロンって言うんだ。よろしく」




あはは。


ロンって……まさしくあの小説に出てくるあの子の名前じゃない。




「私はシズク。よろしくねロン君」






――その後、私たちは場所を変えて人や建物のない、辺り一面草だけのところに来ていた。




「まず俺が試しに魔法を放ってみるからよくみてて」




「はい先生!」




――ロン君が呪文を唱えた同時、彼の手から、バスケットボールくらいの大きさの火の玉が発射された。




私は思わず「おおー! すごいわ」と驚きの声を上げた。




「ま、こんなもんかな」




「先生先生! はやくやり方を教えてください!」柄にもなくはしゃいでしまう。




「うん。じゃあまず、魔力が身体全体を流れているようなイメージをしてみて」




ロン先生が少しかしこまったような感じでそう言った。




「わかったわ」




私は言われた通りにイメージをしてみる。


すると、身体中をなにか温かいものが流れているような感覚になった。




「なにか温かいものを感じるわ」




「シズクさんは呑み込みが速いね。じゃあ、その状態で何か呪文を唱えてみて。そうだな……試しにファイアーボールって言ってみてよ」




「分かったわ」




一呼吸おいてから「ファイアーボール!」と唱えてみた。




すると、指先からライターの炎くらいの大きさの火が放出され、数メートル先に落ちていった。




「できた!」




私はつい声を上げた。




「うん。こんなあっさり魔法が撃てるようになるなんて、すごいよ」




「えへへ、そんなに褒めないでくださいよ先生。照れるじゃないですかー」そう言いながら、嬉しさのあまり変な動きをしてしまった。




「う、うん、そうだね……。これなら、もっと修行を積めば、そのうち今より大きなファイアーボールも撃てるようになれると思うよ」




「本当!」




「うん。ただ最初のうちは魔力切れが起きやすいから、今日のところはこの辺にしておこうか」




「そういうことなら分かったわ」




「ところでさ……。俺、お腹が空いきたんだけどさ、その……だから」




ははーん。


つまりは、授業料代わりになにかごはんを奢ってと。


なるほど。


多分だけど最初からこれが狙いだったのでしょうね。


奢るのは一行に構わないしいいか。


私も丁度お腹が空いてきたことだし。




「なら、一緒にごはん食べに行きましょうか。お姉さんが良いお店知ってるから連れていってあげる」




「シズクさん……ありがとう」




「ふふっ、良いのよ」






――その後、私たちはベルンさんのお店に行き、美味しいお料理を一緒に食べた。


ロン君は見かけによらず大食いで、一人で四人前くらいの料理をペロッと食べてしまった。




食べながらロン君と色々な話しを交わす。




聞いたところ、魔法使いには七級から一級までのランクがあり、その実力や功績によってランク付けがされるということらしい。


ロン君は下から三番目の実力ということになる。




それと、本当は魔法は誰でも使えるようなものなんだということ。


ただ、その扱い方を体系的に教えられる人が少ないから、生まれつき恵まれた才能がある人か、独自に編みだしたやり方で、魔法を使えるようになるしかないのだということらしい。


魔法はかなり感覚的に使用するようなものということかな。


実際に魔法を使うのは実は難しいということなんだろうな。




でも、これは良いことを聞いてしまったかもしれない。


魔法の使い方を教えられる教科書のようなものがあれば、誰でもみんな、魔法が使えるようになるじゃないかと思い付いたのだ。




つまりは私がその教科書を作れば良いのよ!

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