第5話お礼が出来たようでなによりです

今日は日曜日。




「よーしやるぞー!」




私は早速作業に取り掛かる。




先日撮った料理の写真のデータを私のパソコンに取り込む。


その写真のデータを画像編集ソフトで加工していく。


一枚一枚、写真の明度や彩度を調節してっと……。


うん、良い感じね。




あとはこれに興味をそそるような文章を添えてっと……。


中々良い感じの文章が書けたわ。




それで編集したものをプリントアウトしてっと。


さらにそのプリントアウトしたものを雑誌っぽく何組かに纏めてっと……。




よし、出来た!




じゃじゃーん、完成!


名付けて、お手製異世界グルメ雑誌の出来上がり!




ふふーん。


中々良い感じにできたんじゃないかしら。




雑誌編集員の経験が、まさかこんな形で活かされるとはね。


プレゼン資料だったりで画像編集ソフトを使ったりするのよね。




今にも香りが浮き出てくるじゃないかってくらいに美味しそうな料理の写真!


それにそれにこの料理の画像を引き立たせるような文章!


うんうん。


見てるだけでお腹が空いてくるようだわ。




あとはこれをあっちの世界に次行く時に持っていくだけだわ。




これを見たらみんなどんな反応するかな。


楽しみだなー。










――――


今日は金曜日。




いつもように残業中の私。




「ふぅー、少し疲れたしもう寝よう」




着替えを済ましリュックを背負う。


その状態で眠る体勢に入る。




おやすみー。










――――


……よいしょ。


到着っと。




……思ったのだけれど。




こっちの世界の言語で雑誌を書いてないのに、どうやってみんなに見て貰えば良いのかしら?


くっ、盲点だったわ。




とりあえずリュックから雑誌を取り出してみよう。


すると、そこに書かれていた文字が日本語ではなく、どことなくアルファベットに似た形をした文字になっていた。


いやいや、なんで?




でもまって……。


これ、なんとなくみたことあるような。




……ってこれ多分こっちの世界の文字だわ。


街中の看板とかで普通にみたことあるやつだもの。


何気なくみていたから気付かなかったけど。




そうか。


こっちの世界に来るときには、元の世界の言葉を自動で翻訳してくれるのね。


間違いないわ。




よく読むと、日本語からローマ字表記っぽくなっているようにもみえる。


なるほど、これなら簡単にわかる。




これであっけなく言語の壁はクリアできたみたい。


イエーイ!




よし。


それじゃ、まずは露店のアイズさんのところに行こうかしら。


借りたお金を返すのと、約束した商品を持って行くために。


商品については、予めいつものホームセンターで買っておいたものだ。




しばらく歩いて、件の露店に到着した。




「こんにちはー、アイズさん!」




「ああ、いらっしゃいませー、シズクさん!」




「お約束の商品をお持ちしました」




「ありがとうございます。では確認させてもらいますね」




彼女はそう言うと品々を手に取り確認をする。




彼女は一通り見終わると「はい、確かに。お持ちいただいてありがとうございます」と言った。




「いえいえ、約束ですからね」




「では今回の商品の買い取り金額は……5000バリスほどでどうでしょう?」




ああ、やっぱりそれくらいの値がつくものなのね……。




「その金額でお願いします」




「まいどありがとうござます」




その後、アイズさんからお金を受け取った。


だけど、受け取ったお金は4000バリスだった。


この間、私が借りたお金の分を差し引いてのことらしい。




私は「いけません、ちゃんと現金でお返しさせてください」と言ったのだけれど……。




「良いんです。これが私なりの商売の仕方なんです」と言って断られしまった。




ただ代わりに「今後ともシズクさんにはご贔屓にしていただけると嬉しいです」と言われた。




あはは、なるほど。


この人、中々やり手だわ。




そういうことなら、私としても是非にということでお願いした。




その後は軽くお話しをしてからアイズさんと別れた。




その足でベルンさんのお店へと向かった。










――――


お店に着いた私は、早速ベルンさんに、なんちゃってグルメ雑誌を手渡し見て貰った。




「おおー! すごいよ、こんなの初めてみたよ。ありがとう。でも一体どうやって作ったの?」




良かった。


ベルンさんに喜んで貰えて。




でもそうか。


こっちの世界だと印刷技術とか色々、まだまだ未発達だもんね。


紙とかも貴重だろうし。


そりゃこういうの初めてみるよね。




なんて言おうかしら……。




「えっと……。企業秘密みたいな……」




「そっか。シズクがそう言うならそうだね」




うう……。


なんか隠し事してるみたいで忍びない。




でも私は実は異世界人で、これはその世界の技術なんだよ。


とは言えないからね。


ごめんなさいベルンさん……。




とりあえず話題を変えよう。




「早速これを街中とかで配ってきますね。ベルンさんのお店を宣伝するために」




「ああ、そうか。そのためにこれをわざわざ作ってくれたんだ。なんだかすまないね」




「いえいえ。私が勝手に作ったものですからお気になさらず。これは私からのお礼だと思ってください」




「ありがとう、シズク」




その後私は街へと出て、例の雑誌を配り歩きにいった。




「ベルンさんの美味しい美味しいお料理を紹介してますよ。まだベルンさんのお料理を食べたことがない人は人生損してますよー。ご興味のあるかたはどうぞ受け取ってくださいー!」




私はなるべく大きな声で宣伝文句を言い歩いた。


久しぶりにこんな大声を出したわ。




でもその甲斐あってか、雑誌を手に取ってくれる人で列が出来たのでした。


「ほう。なんか面白そうだな。ってすげー、こんなもの初めて見るぜ」とか、


「わー、この料理の絵すごく美味しそう! 今にも飛び出してきそう!」と、興味を持ってくれた人で溢れかえった。




「ちょ、ちょっと……。これはますいかも。この人数をさばききるのは無理かも……。っていうかそんなに雑誌を用意してきてないんだけどー」




気付けばあっという間に雑誌は無くなったのだった。




それからというもの、ベルンさんのお店はまた一段と賑わいをみせていた。




どうやら私の作った雑誌を見た人が、お店に訪れようになったみたい。


そこからお店の料理の味が美味しいと、町中で評判になっていき、新規のお客さんが芋づる式に増えていったようね。




えへへ。


上手くいったわね。


ベルンさんからもすごく感謝されたし。


よかったよかった。


万々歳ね。

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