十 ウオルターの正体を探れ
「ラスティ。すまない。もう一度、ダスティとモールを斥候に出してもらえないか」
俺はラスティの意向を確認した。
「確かにトラが懸念するように、ウオルターが本人か否か確認した方がいい。ディノスがウオルターに化けてるとも考えられるからな」
ラスティが俺の提案に同意した。
すぐさま俺は指示した。
「ダスティとモール。また斥候を頼みたい。いつも危険な事を頼んですまない」
「いいって事よ。俺たちゃあ、この納屋で衣食住をトラの世話になってる。トラ様命だ!
ウオルターがアライグマか、ディノスが壊滅してるか、確認してきまっせ!
ラスティのボス!モールとともに行って来ます!」
ダスティもモールも、ラスティをボスと呼んでいる。
「気をつけて行け。スカウターの映像交信をオンにしておけ!」
ラスティの指示に、
「了解!モールの兄貴。行きまっセッ!」
「あいよ!」
と答える二人の声とともに、地下通映像が我々のスカウターに現われた。
映像はしばらく通路を移動して停止した。それまで水平だった通路が垂直になって地上へと延びている。ダスティが言う。
「ラスティ。地上へ出るぞ」
「顔を出す前にミニスコープで周囲の安全を確認するんだ」
ミニスコープは細いチューブの先端に微細カメラが付いたスコープだ。細いパイプやすき間など狭く長い障害物の先を監視できる。
「了解。監視管にミニスコープを入れる。スカウターからミニスコープに映像を切り換える」
ダスティの声とともにスカウターに送られている映像が、地下通路から地上へ出るハッチに装備された監視用細管内の映像に変わり、地上の映像が現われた。
スコープはグルッと水平に回転して周囲を撮した。半径40レルグ(約40メートル)ほどの円内のトウモロコシ畑が焼けただれて地面は黒焦げになっていた。そして、その中心の大地に、宇宙艦の残骸と言うより黒く変質した酸化物の塊が転がっている。
映像が焼けていないトウモロコシ畑の一画を撮してアップになった。七体の黒焦げの塊の横にウオルターが立っていた。しかも防護耐火スーツのヘルメットの中で、ウオルターは口を動かしていた。
「ダスティ!危険だ!ハッチを開けるな!そのまま待機だ!
ウオルターはヘルメットを被ったままだ。危険だ!」
「了解!待機する!ミニスコープの空気汚染計測器は正常値を示してる。
ボス、空気サンプルを解析をしてくれ」
「了解!」
ラスティが、ミニスコープが採取した空気サンプルデータを解析した。
「空気汚染はない。全て正常値だ。
ウオルターがヘルメットを脱がないのは、ここの空気がウオルターに適さないからだ!」
俺はラスティの考えで確信した。
「ラスティの思うとおりだ。ウオルターにヘルメットを脱いで顔を見せろ、と伝えてくれ」
「了解した」
ラスティの了解を聞き、アンマンとペックたちに指示した。
「アンマンとペックたちは狙撃態勢をとれ!
ターゲットはウオルターと焼死したディノスたちだ!」
俺の指示に、アンマンが驚いて俺を見つめた。
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