四 アライグマの連絡担当官

 陽射しが強ければ異星体の熱探知機の探査効力が薄れる。

 晴天の昼下り、俺はアライグマの連絡担当官アンマンとともに農場に戻った。


 農場の外れの樹木の陰から狙撃銃のスコープで我家を見た。家に野菜や家畜や食糧はなかったが、車や農機具は俺たちが家を出た状態のままだった。


「宇宙艦はどこに着陸したんですか?」

 アンマンも狙撃銃のスコープで我家を見ている。

「我家の先のトウモロコシ畑だ」

 俺とアンマンは狙撃銃のスコープをトウモロコシ畑に向けた。宇宙艦は昨夜着陸したまま動いていなかった。宇宙艦の周囲のトウモロコシは薙ぎ倒されてミステリーサークルができてトウモロコシに豆は付いていなかった。


「動物だけでなく穀物まで略奪したんですね。我々人民も略奪対象なんですね」

 悲嘆なアンマンの思いが伝わってきた。

「異星体は宇宙服を着てた。奴らにはここの大気圧が低くて有毒なんだろう。奴らを狙撃すれば我々が攻撃したと知られるが、宇宙服が破れれば我々の攻撃と思われないだろう。弾丸をメタルジャケットに換えよう」

 俺たちは狙撃銃に装填してあるエクスブローダー弾をメタルジャケット弾に換えた。

「アンマン。トリたちに、急降下して異星体の宇宙服に穴を開けろと伝えられるか?」

「やってみましょう」


 アンマンは狙撃銃を顔から離し、瞑想するように目を閉じてトリと交信した。しばらく何か呟いてトリの説明に納得して頷くと、アンマンは言葉丁寧に、憤慨したように言った。

「なんですか?エイプの統制官は誰もこっちに来てないんですか?

 私は統制官に、私がタイガーさんとこの現場に来るのを話して、統制官たちは現場を確認すると承諾しました。なのに誰も来ていないとは、やはりエイプの統制官は食わせ者ですね。統制官の任を解いて、何もしなかった責任を取ってもらいますか」

 アンマンが交信しているのはトリのペックだ。樹木に穴を開けるのが得意だ。


「ペックたちは急降下して異星体の宇宙服に穴を開けれるか?」

「可能です。まもなくここに飛んできます。

 私は、できだけ統制官たちに統制官の責務を果させたいのです」

「ここまで侵略された現状は元に戻せない。今さら統制官を現場に引き出しても責務なんか果たさないさ」


「それで現状に目をつぶって現場を見ないんですね。自分たちで招いた結果だから」

 そこまで話し、アンマンははたと気づいた。

「もしかして、エイプの統制官が異星体の浸入を手引きしたんですか?」


「現状を考えれば、統制官が異星体の侵入を手引きしたと考えるのが妥当だね。エイプの統制官は異星体と癒着してうまい汁を吸おうとしてるのだろう。

 トリが来たぞ!」

 俺とアンマンの横にトリの群が舞い降りた。

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