第4話 第5城郭、そして金色のパラディン-①

 第4城郭の外側にいる開拓のための村にははある少年が住んでいたその少年の名は<ニテ>といい名前だけの少し黒めの茶髪で薄い茶色の目をしているただの平民である。その少年は10歳のはずが司書であった父の影響なのか色んな知識を身に着けていたのであった。世界のルールに従いだた普通の平民として生きていた。

 

 彼が学んだ世のルールは階級社会でありながらも魔法と奇跡という祝福の概念が存在し技術の発展に影響しているということであった。狩りなどにも身体のマナを基本的に活用しないと狩りができなかったり、刃物をちゃんと手に取ってないとマナを維持できず攻撃ができなかったり、生活的な場面でも水を汲む機械も魔法道具であったり…


 魔法は聖人族が主に使っていると普通に知らされているが彼みたくまれに魔法を使える堕落人種もいてその人たちは王族や貴族の家臣として雇われることが多い。しかし、彼の家族は王国図書館では不敬罪として第4城郭の外側の村まで左遷されたのであった。その不敬罪というのも貴族の横暴であって探している本は存在しないものだとありのまま知らせたはずなのにその日機嫌が悪かった王家に繋がりがある伯爵家の令嬢によるものでニテたちはどうしようもなく追放されたのであった。


 第4城郭それはオルティア王国の首都ヴォルシャを囲む4つの城郭の最外郭であり王城を囲む1城郭、貴族などが住んでいる街を囲む第2城郭、金持ちや中央に仕事を持っている平民たちが住む街を囲んでいる第3城郭そして農民や一般生産系平民たちが住む4城郭の内側…その外側と言ったら5城郭を作るための開拓地区でありモンスターなどにより危険に晒されている区域であった。


 (聖人族って俺たち堕落人種に対して上から目線なんだよな。まぁ平民の数の重要性は知っているぽいから土地に祝福を与えたり魔法の道具を配布したり色々してはいるけどここじゃあんま視察にもこないし)


 ここの生活ではどうせ5城郭を作るための労働力や畑仕事、または兵士の手伝いくらいしかできず、彼の知識欲を満たせるものは何一つなかった。


(ってか人間弱すぎじゃない?ラニーにもミスしたら殺されるし)


 ラニーそれはこの世におけるモンスターの類の中で一番弱いもので普段は丸くてもふもふしてそうな毛に囲まれていてあまり危険そうに見えないが芝生の中からいきなり突進してきて人々を殺し食う肉食系のモンスターである。その表皮は鋼鉄のように固くマナを込めた斬りじゃなければまともに戦えないという。


(資金さえためれば2城郭へ行って俺も父みたく王国図書館に司書になるしか選択肢はなさそうだな。そのためにはまず12歳になってから3城郭の探索者のギルドに入らないと)


「ニテ!起きたのなら降りて朝食の準備手伝ってくれない?」


 家の下から女性の声が広がってきた。おそらく彼の母が息子が起きる時間になって呼びかけたのであろう。


「はーい」


 その呼び声に彼は茶色い農業用の服に着替え部屋を出てから階段から下へ行く。階段を下りた右側に母がいる厨房がいてそこは朝食の準備で朝特有のいい匂いが広がり鼻を刺激するのであった。彼の母は彼と同じ茶色の目で薄いブロンドの髪を丁寧に結んで料理に髪が落ちないように整理していた。厨房での食事を用意するためか普通の平民の服に灰色のエプロンを着ていた。


「ニテ、今日は土地の祝福のために王城からパラディン様がいらっしゃるの知ってるでしょ?朝ごはん食べたら父さんのところに行って仕事を手伝いなさいきっとあの人また一人でやろうとしているはずよ」


(あーあまた朝一パラディン様が祝福を与えるはずの畑に向かって準備してんのかあの父は、司書だった頃の姿はもう全然ないし完全に農夫で村長だな。くだらない)


 そう思いながらも彼は母には嫌そうにもせずむしろ


「わかりました母さん、食事を済ませたら父のための弁当を用意してから出発します」


「あらあら、そうだね。あの人きっとお腹空かせているはずよ。ありがとうね、ニテ」


 彼の母であるニアウレはそう答えながら自分の息子の顔を優しく撫でるのであった。ニテはその母の行動に笑顔で答えるが、彼の心の中は出世したい欲を満たせなくなった現状を退屈と思っていた。


―――


 第4城郭の外側の村それも随分4城郭とは離れていてむしろ完成まであと一息の建設中の5城郭城門に近くに位置していた。あちらこちらに5城郭完成するための石や石材が集められていて開拓地の人々は毎日のよう農業とこの建設業に労働力を要求されていた。父はそれでも王国図書館司書だった地位のせいか村の村長として任命され、建設ではなく5城郭外側の畑の総括をしていた。


 ニテは片手には農業用のつるはしを持ちもう片手には父のための弁当を持ってゆっくりと5城門を通っていく。


「ニテ、カステトに弁当もっていくのかい?」


 騎士ではないが立派な鎧でヘルムを被っている兵士の一人が声をかけてきた。


「あ、ルードさんおはようございます。はい、そうですね。パラディン様がいらっしゃるとかでまた一人で朝早く出かけた模様っす」


「なるほど、カステトさんならまあ理解できなくもないな。村では貴族の相手をしてみたのは彼しかいないし」


「そう…ですね」


「ニテも頑張れよ。お前の人生はまだまだだからな。司書になれないとか考えちゃだめだぞ。君は賢いからね」


 ニテの少し凹む様子に兵士ルードは彼の夢に対して応援するのであった。


「はい、わかってます。12歳になったら探索者の仕事をして金を稼ぎ試験を受けようと思ってますから頑張らないと」


「そうそう頑張れよ少年」


「はは、もうすぐ成人ですけど」


「まだ子供じゃい」


「へいへい、じゃ行きますね」


「おう、気をつけろよ。5城郭の外はたまにモンスターがくるからな」


「はい」


 と答えながら腰にいる短剣を見せつけると兵士ルードはガントレットの親指を立てよろしいと褒めるのであった。


(まあ、今の実力だとラニーとかは簡単に倒せるからそう危険ではないけどね。王都の近所は知能あるモンスターはあまり来ないし。ラニー程度も倒せないと探索者にはなれないから)


 それでも彼は気を緩めずしっかりと城門を出てから長い芝生を十分注意しながらクララ平原へと向かい歩いて行った。

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