第3話 公爵令嬢、そして王子からの誕生日プレゼントー③
「ほーらほら見てみろもっと絶望するが良い!このメイドの手足を首にのっかけたのは良い構図だろう?さてさて、目を開いてみるか?」
ガビルはそう閉ざされているアデリアの目を開きだす。
「あらららまぁまぁ!白目でしたね!目を閉じたままがもっと綺麗な子だったか!これは失礼失礼。んじゃ口を開いてみるかな?」
ガビルがアデリアの口を開けると喉の穴を何かに防いでいたのかその口から大量の血が吐き出してきた。
「おうおう、ワインがお好みだったのかな?はしたない女子よのう」
アデリアの死骸を持ち遊ぶ人間の形をしている悪魔がそこにいた。エレニアはそう感じるほかなかった。彼女は目の前に広がる残酷であり得ない現実に感情が制御できず、涙がその綺麗な頬から流れ落ちた。
(アデリアと最後の会話があんな愚痴ばっかりだった、なんでアデリアがこんな目に合わないといけないの?あたしが弱いから?絶対許さないガビル貴方は必ずあたしの手で殺してやる)
この世界に生まれ変わってから一番心を預けることができた女性の死骸で遊ぶ婚約者に対して怒りを隠すことができず、エレニアは自分の人生を呪った。
「こんなことして許されると御思いですか!?聖人族でオルティア王国の王子であられる方がこんな…こんなことを!」
エレニアは怒りに溢れた激動する声で王子ガビルに向かい叫び出した。その叫び声にも誰一人王子の趣味の部屋がいる棟にくる人気配はしなかった。しかし、その叫び声は彼をもっと喜ばせるものとなる。
「許されない?誰が許すというのかなこの馬鹿な娘は。我こそが<王国最強の魔法使い>あり第1王子だぞ。父上だろうが我に逆らうことはできん」
その通りであった。<最強の魔法使い>エレニアも幼い頃から婚約者に選ばれ何の抵抗もしなかったの理由の一つでもある。
(なんであんな悪魔にあんな力があるの?6歳の頃からあの悪魔の才能に誰も相手にできず誰も敵わないとかありえないでしょう)
パラディンの修行を重ねていたエレニアさえ彼に敵わない。どう足掻いても逃げられない事実を理解している。しかし、この状況はあんまりにも酷いものである。だから昔であったある少年の前で彼女は人生を半分諦めていたように語ったのだろう。
「我に対抗しようと聖騎士の訓練を続けているようだが、それは無駄やぞ。無様に足掻いてみるがよい。パラディンの称号を得たときには我自ら直々に手合わせをしてやろうじゃないか」
王子ガビルはそうエレニアに挑発するのであった。むろん彼は彼女がパラディンになるだろうが絶対勝てる自身があったからそういうのであろう。彼女もまたその事実を知っていた。
「ヴォリチェード様が絶対許さないはずです…」
エレニアは歯を食いしばって悔しい感情で主神の名を借り自分では勝てない彼にそういうのであった。
「ヴォリチェード?神なんぞこの世には存在せん。我こそが神になれる男やぞ。君がそう聖職者の修行をしていて祈っても君の人生は何一つ変わらないままじゃないか。むしろ我によって君の人生は変わって行くつまり我が神のような存在だぞ。否定してみろエレニア、神がいるならこの我に存在証明してみろ」
ガビルの言う通りであった。エレニアは祈りを捧げ続けていたがこの人生は改善されることはなくやがてはアデリアまで失う現状まで至った。これが彼女が向かい合った現実だった。神がいるのならなぜ祈りが届かないんだろう、こんな絶望的な人生からなんで救ってくれないんだろう。破壊神は人族に着実と影響を与えこんな悪魔を作り出すのになぜ、なぜ主神は何の答えもくれないのか。彼女は不安、恐怖、怒り、悩み、悔しい気持ちなどが複雑に絡まりこの世界に生まれてきたのを呪うとしていた。
<違うよエレニア、あなたは祝福された人間なの。私が保障する!このお姉ちゃんが何があっても君を見守り傍にいてあげるから自分を否定しないで?>
ふとアデリアが幼い頃言ってくれた言葉が頭の中を貫いた。その約束は守れず王子に殺されてしまったが彼女が言ってくれたその日感じた感情で何とか考えを切り替えられる。
(リア姉ちゃん…あなたはもうここにいないけどあの日悲観的話しかできなかったあたしに優しく抱いてくれたその温もり、母上にも感じたことないその温かさ忘れない、だから…!)
「
精神強化の奇跡を自分にかけエレニアは震える両足で立ち上がった。彼女の目には強い意志が宿り、悍ましい王子を睨んでいた。
「この奇跡こそが神様の存在証明となるでしょー」
彼女の奇跡を目にしたガビルは
「それもまた魔法の一種、証拠としては不十分ではないか、ここに神とやらを降臨させない以上なんも証明にはならんぞ」
ガビルは普通すぎる返答をするのであった。
「貴方には使えない聖職者の奇跡、神の存在を否定すると使えないということが紛れない証拠でしょ」
ガビルは天才と崇拝される自身に対して否定するような口癖を叩くエレニアの言葉で不愉快になったが後々の楽しみのため我慢するのであった。
「そうか、そうか。なら、君が崇拝する神とやらがどうやって君を救うのか見守ってやる。13歳の誕生日を楽しみにしておけ」
と言い、王子ガビルはこれ以上エレニアと会話を続けるときっと可愛いお人形が壊れてしまうと我を失い彼女をこの場で殺してしまいそうで趣味の部屋の扉を締めてから青いマントを揺らしながら何処かへ歩いて消えて行った。
一人残されたエレニアは零れるそうな涙を我慢し、これからのことを考える。
(こんなんじゃ何があったと疑われた王子の秘密がバラされるかも知らない、これ以上犠牲者がでないよう顔を洗ってから会場に戻らないと。ガビル貴方はあたしが絶対許さない必ず神の裁きを受けさせてやる)
そう小さい女の子はもっと強くなると心に誓うのであった。
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