7.ようこそ
「ねぇ、ねぇ」
「ん?」
「司さんはさー、何でこの町に来たの?」
「随分と唐突な質問だな」
「そういえば、訊いてなかったな〜と思って」
「コノマチガ、スキダカラデス」
「何故、カタコト?」
「……………あんまり大した理由じゃないから、言うの恥ずかしいんですけど」
「え〜私は気にしないよ。どんなあなたでも受け入れてあげる!」
「わー凄い包容力〜奥さんに欲しいぐらいだ」
「いや、こっちにも選ぶ権利あるから」
「いや、そんなの分かってるから。真面目に受け取んないでよ」
「で?何でなの?」
「……………実は俺、東京で色んなもん失っちまったんだ。まぁ、中身については詳しく言えないんたけどさ…………で、無気力のまま街中を彷徨いてたら、そこで出会った占い師に言われた訳よ……………幻灯町に行ってみないかって」
「…………ぷっ!何その話!嘘をつくなら、もっとマシなものにしてよ」
「嘘じゃねぇって!!」
「そんな訳じゃん!!」
「あのな!」
「ぶっちゃけさ」
「……………ん?」
「司さんがここに来た理由なんて、どうでもいいんだよね。だって、重要なのはそんなことじゃないから」
「え?」
「どんな理由があるにせよ、あなたはここにやって来て、私と出会ってくれた……………重要なのはそこだから」
「……………」
「あ、そういえば、まだ言ってなかったね………………司さん、ようこそ幻灯町へ」
「っ!?ふんっ!い、一丁前にませたこと言ってんじゃねぇよ」
「あ、顔赤くなった!照れてるんでしょ〜?そうでしょ〜?」
「う、うるさい!いいから、今日はもう帰れ!!」
司は顔の火照りを誤魔化すように手で払うような動作をした。司は思った。いっそ、夕日で顔の火照りを隠せたらいいのにと。
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