5.年齢

「こんちは〜」


「…………また来たのか」


「そりゃ、来るよ。だって、暇なんだもん」


「まぁ、こんな時間だし最低限、学校には行ってくれているようだから、安心ではあるけど」


「学校、楽しいよ!!」


「はぁ。十代のうら若き乙女がこんなおっさんと放課後を過ごす……………こんなんでいいのかね」


「それは私が決めることだから、いいんです〜」


「いや、だから、これを周囲の人が見たら、どう思うかってことなん……………ん?そういえば、雪は高校生なのか?」


「そうだよ。え?もしかして、中学生に見えた?やだな〜私、そんな子供じゃないよ」


「俺からしたら、どっちも変わらん」


「どっちも?」


「ああ。等しく子供だ」


シャベルで雪かきをしながら、司はそう言う。一方の雪はその言葉に大層、不満げだった。


「あのね〜中学生と高校生じゃ全然違うんだよ!中学生よりも高校生の方がよっぽど青春してるんだから!!」


「それ、お前の偏見な。それにお前の言うことが真実なら、こんなとこでこんなおっさんと放課後を過ごすのが青春なのか?」


「こんなとか言わないでよ!もっと自分に自信を持って!それに言うほど、司さんはおっさんじゃないでしょ」


「あ、そう。俺、三十八歳なんだけど」


「……………」


「……………」


「え〜全然見えな〜い」


「今の間は何だ!大体、言葉に心がこもってないぞ」


「それに言うほど、司さんはおっさんじゃないでしょ」


「その台詞、もう聞いたから」


「あ、ちなみに私は十七歳。高校二年生ね」


「はぁ。だったら、こんなところで油売ってないで他にすることがあるんじゃないですかね?高校二年生といえば、入学してから一年経つだろ?だから、少しは落ち着いた学校生活を送れると思うしな」


「親や先生みたいなこと言わないでよ。全く……………で?例えば、どんなことすれば、いいの?」


「いや、聞くんかい」


「一応ね」


「ん〜…………例えば、部活とか?」


「……………」


「学校行事とか?」


「……………」


「でも、やっぱり勉強かな?」


「……………」


「案の定、聞いてないよこいつ!!」


司の言う通り、その後の雪は地面にしゃがんだまま、耳を両手で塞ぐ、いわゆる"聞か猿"状態となってしまったのだった。

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