4.雪かき

「ねぇ」


「………………」


「ねぇ、ねぇ」


「………………」


「ねぇ、ねぇ、ねぇ」


「あーもう、うるさいな!!何だよ!!」


「じゃあ、一回で返事すればいいじゃん」


「で?何?」


「それ、楽しいの?」


司がしていたのは家の周りの雪かきだった。思えば、昨日、お互いに自己紹介をした時も司は雪かきをしながらだった。


「別に…………ただ、この家をタダで使わせてもらうんじゃ、申し訳ないから、何かさせてくれって頼んだんだよ」


「へ〜」


「そうしたら、雪かきをしてくれって言われてな。俺はそれを喜んで引き受けたという訳……………第一目標はこの家の周辺だ。で、それが済んだら、他のところもやるぞ」


「ほ〜ん」


「そんでゆくゆくはこの町全ての雪かきを行い、この町の人達が住みやすい環境を……………」


「ふ〜ん」


「……………あ」


「へ〜」


「……………い」


「ほ〜ん」


「……………う」


「ふ〜ん」


「お前、絶対話聞いてないだろ!しかも返事のレパートリー、少ないし!!」


「ぎ、ギクッ!?」


「随分と古典的な反応だな!表情でバレバレなんだよ!!」


「お、落ち着いて?さぁ、深呼吸しませう〜!」


「随分と古典的な言い方だな!声帯、ブレブレなんだよ!!」


「……………ふぅ。で、何の話だっけ?」


「興味ないなら、何故質問した?」


「でも、偉いよね〜。この町全ての雪かきなんて、意識高すぎ!ヒュー!ヒュー!!」


「ちゃんと聞いてんじゃん!何この茶番!?」


「茶葉?何?茶葉が腐ってたの?」


「あ〜はいはい」


司は心底面倒臭そうにしながら、再び作業に戻った。一方、少女の雪は道端で跳んでいたカエルを手のひらに乗せて、何やら話しかけていた。


「……………この町のこととか、雪見病とかよりもこいつの方がよっぽど不可思議なんだが」


司の呟きは寒空の下で吹く風に乗って、どこか遠くへと運ばれていったのだった。

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