第2話クリスマスの飲食店は予約が必要
ホワイト・クリスマスの夜に異国の女性から食事に誘われている。
現在の状況を考えて僕は少しの動揺を覚えていた。
何故、目の前の彼女は僕を食事に誘っているのか。
それが理解できずに困っている。
だが考えても意味のないことだと思われて了承するように頷いて応えた。
「じゃあ…本当に何かの縁ですし。行きましょうか」
「ホントですか!?嬉しいです。クリスマスの夜に一人きりは寂しかったんですよ」
「僕もです。一緒に過ごせる人が出来て…安心しているところですよ」
「ふふっ。可笑しいですね。今さっき出会ったばかりなのに…そんな気がしないなんて」
「そうですか?そんなに僕は親しみやすいですかね…」
「はい。優しく誠実な男性だって…好印象です」
「ありがとうございます。何処に行きましょうか?何処も予約でいっぱいじゃないですかね…」
「そうですね…とりあえずカフェか何処かで空いているお店を探してみましょう」
それに了承するように頷くと僕らは最寄りのカフェに入っていくのであった。
クリスマスの夜に空いている飲食店など存在しないだろう。
そんなことは分かっている。
このまま探すふりを続けて一時間もした所で家に誘ってみよう。
最初から誘ってしまうと怪しまれてしまう。
徐々に相手の心の隙間を突いていこう。
大丈夫。
必ず彼は私の家に来るはずだから…。
大丈夫。
きっと上手くやれるわ…。
暖かいカフェで僕とシルビアは食事のできる場所を探していた。
だが何処も混雑しているようで公式サイトを覗いても殆どの店が予約が無いと入れない状況だった。
ファストフード店でさえも予約が必要の状況で僕らはただ困り果てていた。
しかし今は目の前に異国の女性であるシルビアがいる。
異国の地で一人で過ごすはずだった彼女を喜ばそうという気持ちになると、もっと深くまで検索をして空いているお店を探そうとするのだが…。
探し出して一時間が経過した辺りで僕らは完全にお手上げ状態になっていた。
「ダメですね。今日は流石に何処も空いてないみたいです」
「本当ですね。僕もお手上げです」
二人して困ったようにスマホの画面をロックするとどうしたものかと考えていた。
「そうですね…うちに来ますか?スーパーで食材を買って…これだけ寒いですし鍋とかどうです?」
シルビアは大胆な提案をしてきて僕は面食らってしまう。
「えっと…初対面の男性を家に上げるのって…抵抗ないですか?」
「どうしてですか?真田さんは誠実だと思うので…何も心配してないですよ」
「そっか…。じゃあ何処も空いていないですし…お邪魔しても良いですか?」
「もちろんです」
「場所を提供してもらえるから…食事代等は僕が出します」
「良いんですか?」
「もちろんです」
場所が決定すると僕とシルビアは揃ってカフェを出る。
最寄りのスーパーで食材やお酒を買い込むと彼女の案内に従って後をついていく。
そしてシルビアが住んでいる高級タワーマンションの前までたどり着くと僕は今一度深呼吸をして落ち着きを取り戻すのであった。
彼は何の疑いもなく私の後を付いてくる。
ちゃんとこのまま私の家でクリスマスの夜を過ごせるだろう。
それに幸運が味方しているのは明らかだった。
本日はホワイト・クリスマス。
必ず良い雰囲気になるだろう。
そのまま彼を私のものにするのだ。
大丈夫。
絶対に上手くいく。
次話予告。
シルビアの家で二人きりのホワイト・クリスマス…。
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